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魔女の森任務3


◆任務初日

  ルミナスメイズの森の中


(えっ!?
あ、危ない、驚きが漏れそうだった……)

恐ろしいと口では言っても、魔女の森に対し敵意が全く感じられなかった。
客観的な意見に混じって、魔女の森の者を擁護しているように捉えられた。
まあ、たまたま出会ったブリムオンがこの辺出身でもなければルミナスメイズの森で迷子になっているという時点で疑う余地しかない。
ルミナスメイズの森出身でも、この土地からしばらく離れてしまっているキーウェンが迷うのは分かるがな。

や、役立たずでごめんね……

あははっ、責めてるわけじゃないぞ〜?
冒険気分で楽しかったしな。

……。
まあ、それはそうね。
今度からはもう少しまともな嘘をついてみるわ。

え〜
とりあえず、今の私の意見に対する、率直な意見を聞かせてもらっていいか?

そこは変わらないわ。
綺麗事よ。

あははっ、マジか!

……でも、あんたには好感が持てたわ。

あ、ほんと?
嬉しいよ。

私と違って偽りが無いようだったから。

必要な嘘だったんだろう?
君が魔女の森の者だとすれば、この場で私の意見を……いや、これはガラル軍の意志でもある。
それをダイレクトに伝えられるチャンスだと思ったからな。
私の気持ちは君に届いたかな。

……。
あんた一々言い回しがキザなのよ。
もっと可愛くしてればいいのに。

あはははっ、この顔だと可愛いよりキザな方がよく効くみたいでな。
もうこっちで慣れてしまった。

あっそ。
……あたしに言ったって仕方ないわよ。
あたしいち個人の考えが通るような規則は無いの。
外界との接触が許されるのはこんな時くらい。
基本的には外界と接触しちゃいけないの。
いくら自分に非が無かったとしても、もしそれが原因で森の秩序が乱れることになれば、取り返しがつかないから、未然に防ぐための決まりがたくさんあるの。
……今こうやって話してること自体、マリアに知られたらキツく叱られちゃうわ。

……マリア……

……ああ、森の代表の名前よ。
あの人は本当の魔女。
ああ、私たくさん喋っちゃってる、悪い子だから仕方ないわね。

……。
あはははっ、君おもしろいなぁ!
じゃあ君の名前を聞かせてもらえるかな?
マリアは君の名前じゃないんだろう?

ああ、そうだったわね。
あなたたちに何の信用性も無しに名前を教えたくなかったから、ごめんなさいね。
私の名前は、フレデリシアよ。

フレデリシア。
よろしく。

ええ。

君はどうして外に?

……警告、あなたたちの考えてる通りよ、うちの子が誘拐されたの。
小さい子よ。
連れ去った犯人の痕跡を追っていたの。

……!
やっぱり、人攫いか。
総隊長の考え通り……ならぜひ、私たちも捜索に協力させてほしい。
その為に、魔女の森に話をしに来たんだ。
攫われた子や犯人について、分かっていることを教えてほしい。

……それは……、個人的にはありがたいけれど、代表が許すかどうか分からないわ。
外の人間に力を借りたことは無いの。
少なくとも二つ返事で協力を依頼することは無いと思うわ。

……話をさせてほしい。
そこは私の技量の問題になってくる。

……代表と話をつける自信があるの?
思考は読まれてしまうし、外界が関わる話になると頑固よ?

……話がつくかどうかは……分からない。
だが交渉してみなければ、できるものもできないからな。
私は話し合いのために来たんだ。
捜索に当たるならば、軍に待機している者にも応援要請する。
私たちは君たちに、全面的に協力させてもらうつもりだ。

……。
軍の意向は、あなたの真摯な態度を以て信用するわ。
私はね。


うん、ありがとう。
まず君が信じてくれて嬉しいよ。

……。
(この人は、目の前の人間から確実に丸め込むのね。自分の魅力を最大限利用して……)
……そっちのオーロンゲはこの森の出身なのよね。

……あ、ああ、そうです……っ

私たちのことをどう思ってるかは知らないけど……
私を魔女の森の人間だと知っても敵意が感じられないから、あなたたちに対しては警戒を解くことにするわ。

……あ、あり、がとう……(緊張)

……。
そんなに怯えなくても捕って食ったりしないわよ?

あっ、あ、いや、その……

キーウェンは人と会話するのがすこーし苦手でな。
慣れたら全然大丈夫。
……ああでも、どうかな、君みたいな大人の色気のある女性とは一緒に仕事をしてないから……慣れるかな?

なっ、何を……っ

あらあら、大人の女性に不慣れなの?
可愛いわね〜?(棒読み)

アッ、あの、う、うぅぅ……(思考停止)

って、私に色気が無いってことか!?

えっあっご、ごめんなさ

冗談だよ!
冗談だ、からかってごめんな〜!

ひぇ……っ////

からかい甲斐のある子ね……

……ご、ごめんね、すぐフォローできなくて……
イーリスにも色気はあるよ……!

(そこか〜、天然タラシなの???)

あはははっ、そう?ありがとう〜!

……あと、その……、フレデリシア……

ん、なあに?

……俺は、魔女の森の人たちのことは、よく知らないから、怖い……
でも、だから、あなたたちを知らないままじゃダメだって思うんだ。
さっきのイーリスの言葉を聞いてて、俺も自分の気持ちに確信が持てた。
攫われた子も助けたい。
魔女の森の子も外の子も、同じだ、怖い思いをしてるなら、早く救い出してあげたい。



……力になりたいんだ。
魔女の森の人たちに、全部背負ってほしくない。
困ったときは、ガラル軍を頼ってくれたら、その……嬉しいというか……全力で助けになるから……っ
直ぐに俺たちを信用してっていうのは難しいかもしれないけど、……お互いのことを、少しずつ知っていけたらいいなって……

ありがとう。

……!

2人は、良い人よ。

……。

……2人が良い人なのはよく分かったわ。
けれど、外界の人間に良い人もいることぐらい、私たちは分かってる。

……うん。

壁を作ってるのは、悪い人間が良い人に見えるからよ。
悪い人間は私たちに対して悪い人間ですよと寄っては来ないの。
伝えられている話だけれど、昔、魔法を使う女がいて、魔法はその女の住む村のために使ってたけど、その魔法をどうにか自分の手に入れたいと画策した者たちが、女を騙し研究対象として体をバラバラにしたそうなの。
私にとってはどうでもいい昔話だからすごく適当に説明したけれど。
魔法が使える子がみんな強いわけじゃない。
弱い子、まだ幼い子も騙されて犠牲になった。
だから弱い子強い子が固まって1つの集合体として暮らすことにしたの。
それが代々受け継がれて、今でもルミナスメイズの森の一角が私たちのテリトリーになってる。
……2人が良い人だとして、それが森のみんなに正しく伝わったとしても、外界の他の信用できない者と共存することは、決して受け入れないわ。

……そうか。
……うん、なんとなく、君たちが外界とを隔てている理由が分かったと思う。

昔話を大切に大切にしすぎてるのよ。
私たちの住む土地がどんな風になってるか、あなたたちも知らないでしょう。

ええ。

確かに、それはとても、外界の悪に対して抑止力になってると思う。
ただ、外の文化や情報もほとんど閉ざしてしまっているのは問題よ。
外との接触を最小限にする為にはそれが正解かもしれないけれど、私にとっては住民の成長を妨げたり、時代遅れの原因だと考えてる。

……君は外に出たいのか。

……少数派の意見よ。
それもごく僅か。
森の者には打ち明けてはいない。

森を出ていくことも禁じられていたりするのか?

……森を出て行った者はいるわよ。
その子は、規則に従って必要な外界との接触をしたときに、外に男を作った。
それと添い遂げたい、男を入れることができないなら森を出たいと申し出たの。
森を出た者は二度と森に足を踏み入れることを許さない……知った上で、それでも出て行った。
その二人が今頃幸せになってるかどうかは知らないけどね。
森を出ることは、もう森の住人でなくなるということと同じなの。

……厳しいんだな。

今の私たちは、狭い世界で怯えている子犬。
世間を知らない子がほとんど。
代表はその現状を変えようなんて思ってないの。
キーウェンが言ったように、私たちも同じ、怖いのは正体が分からないからよ。
でも、キーウェンは知りたいと、変えなければならないと決意した。
それに対して、うちの子たちは魔女の庇護の元で不安を見て見ぬ振りしているだけ。
それじゃ私たちが良い方向に向かうはずがないのよ。

……現状を変えるために、何をする?
君は外の世界に何を望む?

私は……
森に住む者たちが知見を得て、森をより住みよく豊かにすること、広い世界を渡り、悪を恐れない、強い心を持てるようになってほしい。
外の世界を知りたい。
良いことも、悪いことも、役に立つことも、無駄なものも、何だって良い。
何も知らないんだから、とにかくたくさんの知識を得て、帰って来たいの。
もしみんなが、外に出られるようになっても、それを拒んだときは、私が学んだことをみんなに教えたい。

……うん、素晴らしいと思う。
仲間のためにそこまで考えているなんて、すごく素敵だ。
な、キーウェン。

うん……!

……。
……望んだって叶うとは限らないわ。

でも諦めた訳では無いんだろう?

……。
私に代表の意向を変えられる力は無い。

……うーん、そうかぁ。
……フレデリシア、私が力になっても構わないだろうか。

……?
どういうこと?




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