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魔女の警告


◆イーリスの勤務日

  ガラル軍 総隊長室への道中


えっ、第三部隊長さんと出くわしたの?
それは、災難だったね……

はははっ、災難というか、確かに厄介なやつではあったが、救いが無いわけじゃない。
根気よく正せば、まともになれるような気もするし……

す、すごいね、関わりたいと思う人、あんまりいないと思うんだけど……。
気を付けてね、異性関係もいい話聞かないから……

噂が回り回ってる(笑)
心配してくれてありがとうな。

そばにいられる間は俺が気をつけておくが……俺がいない時はお前にも頼むと思う。

お、俺役に立つかな……!?

もしあいつが手を出そうとしたら仲裁してくれ。
お前の力を使う必要は無いからな。

う、うん……

いや〜絶対お前がそばにいてくれるだけで心強いよ〜
体が大きいだけでも安心感が違うな!(ぺしぺし)

え、えへ、そうかな……///

うんうん!

えへへ……体の大きさ褒められることほとんど無いから、褒められると照れる……///

自信持ってこうぜ!
お前の魅力のひとつだ!

えへへ///ありがとう。
イーリスに乱暴するのは許さない……!
第三部隊長だって、ちゃんと注意するから……!

ふふっ、頼もしいよ。

んー?
なんかすごく楽しそうだな。
もう結構仲良しじゃないか?

総隊長、お疲れ様です。

お疲れ様。
悪かったな、仕事終わりに仕事の話で呼び出して。

いえ、急な仕事なんですね。

ああ。
とりあえず、中入ってくれ、少し説明させてもらう。

はい。

にしても、キーウェンがこんなに早くイーリスと仲良くなれるとはな〜

イ、イーリスが積極的に俺のことを知ろうとしてくれるから……

トウヤの存在が大きいと思うけどな。

俺もお前も、やってることは変わらないさ。

ふーん、トウヤとイーリスは似た者同士ってことかな?

そうかも……

私たちも仲良しだよな!

……まあ、悪くはないかな。

うん、良かった良かった。






  ガラル軍 総隊長室


よし、それじゃ、仲良し3人組に行ってきてもらうのは……ルミナスメイズの森だ。


ルミナスメイズの森……それで俺が……

お前の出身だったか。

そう。
土地勘はあるけど……何かあったんですか?
あの辺はダイマックス現象も起きないし、比較的平和な地域だと……

まあ森の浅い部分はそうだな。
ただ奥は違うだろう?

……魔女の森ですか?

魔女の森?

森の一角に魔女が住むと言われる場所があって……
実際はルミナスメイズの女性が集まって暮らしてるみたいなんだけど……

あそこは昔から排他的で、よそ者は足を踏み入れることもできないし、ルミナスメイズ出身の男ですら限られた者しか入れない。

お前入れるのか?

入れるわけないよ……俺の事なんてみんな知らない。
ルミナスメイズの森も結構広いし、俺は外の森にいてもあんまり出歩かなかったし……

その地域の性格ゆえに、魔女の森の事情は外に漏れにくいんだ。
だからうちとしても、中がどんな地形になってるのか、どれほどの人が住んでいるのか、見当がつけられなくてね。
有事の際に備えてせめて、建物の外観や配置、いや、人が住んでる範囲くらいは知っておきたい。

そうですね。
今回はそれらの調査というわけですね。

調査自体に緊急性があるわけではないだろ。
何かトラブルがあって、今まで後回しにしてきた調査をやらざるを得なくなったんだろう。

手厳しいねぇ。
まあ、お前の言う通りだ。
先般、魔女の森内で人攫いが起きたようなんだ。

人攫い……?
よそ者が入った?

犯人は分かっていない。
そもそも人攫いの事実があるのかどうかも、軍では確証が持てていない。

……どういうことですか?

魔女の森に近づいて森の人間と接触すること自体難しく、接触できたとしてもこちらの質問に答えてはくれない。
向こうはこちらの手を借りる気は無いだろうからな。
事実を確認する手立てが無いんだ。

なぜ人攫いがあったと見当付けたんですか?

彼女らは非常に強力なサイコパワーで警告を発したんだ。


「我が身を割かれた報いを受けるがいい。
愛しきその身が舞い戻れば、己が身の綿を撒き散らし歩き、死に堕ちれば五体を徐々に潰し、耐え難い苦しみを味わうこととなろう。
半身は必ず我が身の元へ戻ってくる。
己が隠そうとも、我が身のことなれば、間もなく迎えにゆく」


……だったか。

よく覚えてますね。

記憶力は良い方でね。
今から3時間ほど前、これがルミナスメイズの森を中心に約30kmの範囲で発せられた。
うちの子らも数人聞いたらしい。
そのうちに運び屋のエクシズもいてね、話を聞いたんだけど……、


「その警告は女の声。
とても鮮明で耳元で囁かれるような感覚だった。
言葉には表さないが、その声は明らかに怒りを含んでいた。
それ以降、警告等が発せられることは無かった。」


……と言っていた。
さて、まず、警告の内容。
我が身を割かれた報い、これは自分自身のことか否か。
愛しきその身、半身は必ず我が身の元へ戻ってくる、という所から、自身ではなく第三者、それも半身、自分の体ほど大切な愛おしい存在、同胞が、目の届かない場所にいるということも読み取れる。
それもその警告を向けた相手、犯人の手によって。
舞い戻れば、死に堕ちればの部分は、彼女らが半身の生死を把握できておらず、どちらかによってそれぞれの罰を与えること。
警告自体、広範囲の不特定多数に届いているから、犯人を特定するに達していないのでは。
間もなく迎えにゆく、その身が戻ってくるというのは彼女ら側に戻ってくるという意味で、それが半身の自力で戻ってくるのではなく、彼女ら自身が半身を取り戻しに行くということ。
……とまあ、こんな所が辻褄が合いそうな解釈かな。

生きて帰ってくれば、お前の腹を引き裂き、生きたまま自身の臓物を眺めることとなる。
最終的には死ぬ。
死んで帰ってくれば、身体を少しずつ潰して殺す……か。
どっちにしろ殺す、物騒な話だ。

ひぇっ……

まあ簡単に言うと、うちの子連れ去ったのは誰だ!許さん!返せ!
いやこっちから出向いてやるから覚悟しろ!
お前は既に私たちに殺されることが確定している!
すぐそっちに行くからな!って感じ。

めちゃめちゃキレてるな。

魔女の森の人間からの表明なんて今まで無かった。
非常事態であることは確実だ。
素性のしれない相手に警告するくらいだから、暗喩や暗号なんかは使ってないだろうし、この解釈はさほど間違ってないと思う。
とすると、うちとしては犯罪を見過ごせない。
連れ去りも、それを彼女らが罰するのも。
周辺でそれを受け取った一般の人も怖がっているし、軍が動いた方がいい。
3人には魔女の森の者と情報共有、実際に何か事件が起きているとしたら、解決に向けて協力してほしい。

協力……相手は協力を望まないんじゃないか?

恐らく。
だがそこは協力してほしい。
とてもデリケートなところではある。
こちらとしても森の者とは友好的な関係を築いておきたい。
イーリス、相手と友好関係を築く、事件を解決させる、隊長として部隊を指揮する、これだけできれば上々だ、あとは何をやってもやらなくてもいい。
お前の好きに動いてくれ。

……なるほど。
……向こうと接触しなければ何とも言えませんが……、私の役目を果たします。

よし、お前なら大丈夫だ、期待してるぞ。
2人はイーリスを支え、従うこと。

了解。

あと、森周辺の地形や特徴を記録してほしい。
もし、魔女の森の中に招き入れられた時は、できる範囲で目で見て記憶などしてほしい。
とりあえず、少しでも情報が欲しい。
魔女の森の人間に接触できるだけでも大きな成果だ。

……。(情報量の乏しさ……ほんとに、長い間触れてこなかった部分なんだな……)

もし応援が必要であれば伝令を飛ばしてくれ。
すぐに人員を寄越す。
くれぐれも、力及ばない場合は無理をしないこと。
まず事情を聞けない限りこちらは打つ手がないんだ、協力関係が築けなければ事件解決は難しい。

相手方と真摯に向き合い、ガラル軍として正しい選択をします。

頼んだぞ。
当然、事前に向こうとやり取りなんてしてないからな。
向こうからすればお前たちは突然近寄ってきた知らん奴だ。
立場をよく弁えること。

了解。





よし、各自明日の朝8時ここを経つ、それに向けて準備をしてくれ。

俺がルミナスメイズ周辺まで運ぶ。

私とキーウェンを?
運べる?

2人なら大丈夫。
ただ箱は軽量化したいから少し狭くなる。

ああ、それは問題ないよな!
キーウェンに抱き抱えてもらっててもいいかもしれない!

え、えっ?

そこまで狭める必要も無いが……
重量があると飛び立つ時に少し揺れるから、その時はキーウェンに掴まってるといい。

ちょっと勢いつけるからね。

ああ。

んじゃ引っ付いとこ。
トウヤはルミナスメイズの森には行ったことあるのか?

ある。
魔女の森までは辿り着けなかったが。

辿り着けなかった?

迷わされた。
辿り着けないように術が掛けられていて、上空からもそれらしき土地は見えない。

……え、私たち、辿り着けるのか?

……分からない。
だから相手と接触できるだけでも大きな成果になるだろう。
お前が「持ってる」か、「持ってない」かだな。

えぇぇ……マジか、魔女の森に辿り着けるほどのスター性は無いと思うぞ……!?

冗談だ。
スター性よりも、素直な心の方が大事だ。
キーウェン、ルミナスメイズの森にはエスパータイプやフェアリータイプが多いだろう。

そうだね。

大方、敵意なんかの感情を読み取れる者が多いんだ。
こないだの俺のは、犯人探しでルミナスメイズの森の奥に近づいたからな。
結局犯人は別の場所に潜伏してたが。
気配を読み取られたかで、ほかの部隊員共みんな同じ道をぐるぐる回らされた。

うわぁ……

なるほど……
下手に取り入ろうなんて邪な考えはすぐ伝わってしまうというわけか……

頼りにしてるぞ、隊長。

プレッシャーかかるでしょ……

いや、まあ、総隊長の話からも察していたよ。
私を選任した理由があるのは明白だ。
魔女の森の者達と接触したその先で何をすべきか……総隊長は見据えているんだな。

……よしっ、俺も頑張る!
イーリス、必要なことは何でも言ってくれ。
全力でサポートするから!
ね、トウヤも。

ああ。

ありがとう、頼もしいよ。




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