◆イーリスの勤務日

　　ガラル軍　第二部隊廊下

さっきの、ヴィンセンさんにいつものをって、何だったんだ？

ああ、｢確かに荷物運びました｣通知をしておくんだ。
俺の個人依頼には毎回やってる。

なるほどな〜
仕事が丁寧だからみんなお前に頼むんだろうな〜

通知は運び屋に任せてる。
俺は荷物を運ぶだけだ。
……さあ、ここから第二部隊に入る。

……ま、第一部隊も第二部隊も建物の構造は変わらないよな。

まあな。
……マシュー。

ああ、ご無沙汰しております、トウヤ様。
こちらまで、どうされたのですか？

挨拶回りだ。
今回の再編成で配属になった、隊長のイーリスだ。

突然すまない。
初めまして、ストリンダーのイーリスだ、よろしく。

……なるほど。
隊長殿、お初にお目にかかります、わたくしはネギガナイトのマシューと申します。

……。(なぜあんたが隊長なのか、というのを飲み込んだな……)

そういうことでしたら、第二部隊長ですね、本日はデスクワークしておりますので、ご案内させていただきます。

話が早くて助かる。

すまない、どちらかへ向かう途中じゃなかったか？

とんでもない、お客人を見過ごせはしません。
わたくしは急ぎではありませんので、お気になさらず。
お気遣い感謝致します。

そうか、なら良かった。(ずいぶん畏まった人だ……)

　　ガラル軍　第二部隊長の執務室

アデルハイト様、第一部隊隊長殿とトウヤ様をお連れしました。
各部隊を回りご挨拶をとのことです。

分かりました、中へどうぞ。

ご連絡もせず、突然すみません。

いえ、こちらもご挨拶が遅れて申し訳ありません。
こちらから伺ってもよかったところです。
マシューは戻っていいですよ。

お茶でもお淹れしましょうか。

仕事中断させてそんなことさせるわけにはいきませんよ。
こちらも勤務中なので簡単に済ませてしまおうかと思っています。
ありがとうございます。

分かりました。
それでは、失礼致します。

……彼は元々貴族に仕えていた騎士で、諸々の事情でガラル軍に来たものの、そちらでの癖が抜け切らないようです。

なるほど、道理で振る舞いが丁寧だと……

申し遅れました、私はインテレオンのアデルハイトと申します。

どうも、私はストリンダーのイーリスです。
行動隊での活動経験は無いに等しいですが、隊長を務めることになりました。
隊員みなに教えられながらではありますが、しっかり努めたいと思っています。

私は、第二部隊は3年目になります。
隊長を務めるのは私も初めてです、共に励みましょう。(握手)

ええ、心強いです。(握手)

第一部隊は精鋭揃いですが、人数も少ないですし、女性はあなた一人ですから、何かと不便や問題もあろうかと思います。
相談に乗れることであればお応えしますので、何でも仰ってください。

お気遣いありがとう。
また第二部隊に遊びに来させてもらうよ。

ええ、いつでもどうぞ。
またゆっくりうちの隊員も紹介させていただこうかと思います。

それはありがたいです。
現場で一緒になった際は、どうぞよろしくお願いします。

はい、みなに伝えておきます。
……で、あなたは付き添いですか、トウヤ？

……。
いえいえ、俺もご挨拶に伺ったんですよー。(棒)
第一部隊隊員のトウヤと言います、どうぞ宜しくお願いします。(棒)

気色が悪い。
普段通りにしてほしい。

……ふん。
まあ俺は今後も第一部隊で気楽にやってくから……イーリス隊長をどうぞよろしく。

はははっ、お前の挨拶だろうが(笑)

挨拶が照れくさいのか、2人の仲が良いのか……

何でもいい。
イーリス、さっさと次に行くぞ。

なるほど照れくさい方か。

うるさい。

よしよし、次に行こうじゃないか。
すまない、アデルハイト、慌ただしくして悪かった。

とんでもない。
ちょうどいい息抜きになりましたよ。

仕事中に邪魔して申し訳ない。
それでは、また。

　　ガラル軍　第三部隊廊下

……初対面だから様子をうかがってたな。

そうなのか。

あいつは慎重なやつでな、あいつの信用するやつしかそばに置かないし、現場でも他の部隊のよく知らない隊員のことは頭数に入れないことも多い。

なるほど。
どうかな、私は御眼鏡に適っただろうか。

どうだろうな。
あれだけで実力が判断できるかどうか。
……まあ、お前みたいなやつを信用できないなら見る目が無いのかもな。

おおっ、お前からの信用はあるな、やった〜

俺だって信用できないやつと一緒に暮らしたくはないな。

確かにな。

さてと、問題の……ナンバーだが……

いるかな。

ナンバー様に御用でしょうか。

おっ

……隊長側近の1人だ。(小声)

へぇ〜側近とかいるのか。(小声)

勝手にやってるだけだ。(小声)

すみません、予定を取っているわけではないですが、ご挨拶に伺おうかと……
先日の再編成より第一部隊の隊長を務めます、イーリスと申します。

……挨拶ですか。
珍しいですね、奇特な方だ。

奇特(笑)
隊長同士、ちゃんと顔を合わせておかなければと思いまして。

……そうですか。
隊長のお噂は聞いておられますか？

ええ、まぁ、なんとなく……

お聞かせ願えますか？

え、あー。
うーん、オブラートに包んでも、ろくでなし？

包んでないぞ。

いや溢れ出てる……

分かりました。
確かにお噂は聞かれているようです。
どうぞ此方へ……と、ご案内させていただきたいところではございますが、本日隊長は諸用で外に出ております。
申し訳ありませんが、また後日お越しいただければと思います。

ああ、今いないのか。それは残念だ。

……。(良かった)

それでは、また日を改めて来ようと思います。

そうなさってください。
本日ご訪問があったことは、念の為隊長にはお伝えしません。

ん？
あ、はい……？

(対応に手馴れてるな……)

わたくし、バイウールーのシンゲツと申します。
隊長への言伝などあれば、わたくしにお申し付けいただいて構いません。

おお、お気遣いどうもありがとう。
それじゃあまた近いうちに伺います。
失礼します。

ええ、よろしくお願い致します。

……あの女、ご主人様に会いに来たの？

はい。
隊長殿、肝が座っておられますね。
お噂は耳に入っていらっしゃるようでしたが……

……。
ご主人様を手玉に取ろうものならわたしが……

それは無いと思いますがねぇ。
このことはナンバー様には報告しません。
もしもナンバー様にお会いしたいと言われれば、会っていただいた方がいいと思います。
隊長殿は、ナンバー様にとっても貴重な理解者になり得るかもしれません。

……。






別に報告してくれても良かったけどな。

ん？

いや、シンゲツってさっきの……今日私たちが訪ねたことは報告しませんって……

ああ、そりゃ、報告してトラブルが起きたとか……何かあったんだろ。

報告しただけで……？

何が気に食わないか分からないからな。
俺には想像もつかん。

ふーん。
ま、今日はいないから仕方なかったが、明日にでもまた来ようか。

……了解。

よーし、それじゃあ今日の巡回に行こうか！

ああ。




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