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イーリスの休日5
◆イーリスの休日
ガラル軍 トウヤとイーリスの部屋
(ガチャッ)
……。
んっ?
あっ、おかえりトウヤ!
……ただいま。
お疲れ、無事運べたか?
怪我とかしてないよな?
あ、あぁ……(なんか焦ってる……?)
そうか!なら良かった……!
晩ご飯あっためとくから着替えとけ。
大丈夫、自分でやるから……
いいよ、私に任せとけ!
明日も仕事だし、お前に元気でいてもらわないと私も不安だからな、しっかり休んでほしいんだ。
飯食ってる間に湯も張っておくからちゃんと入るんだぞ?
……。
ありがたい……けど……、いいって。
そんなに気を遣われると、申し訳ない。
召使いさせるためにお前を寄越したわけじゃない。
……そう言われるかなとも思ったんだけど、でもやっぱりそんなに頑張る姿見たら……、支えてやらないとと思ってしまうんだよ。
私にとってお前と同室になったことは偶然に過ぎない。
トウヤでなくとも、トウヤみたいに頑張ってる人が隣にいれば、こうやって世話を焼いてしまうと思う。
本当に、私の心配はいらないから……私のしたいと思うことなんだ。
……。
…………。
……はぁ。
……弁当ありがとう。美味かったよ。
!
そうかそうか!良かった!(嬉)
……。
……俺にとって、弁当作ってもらっただけでも十分なんだよ。
お前の労ってくれようとする気持ちは凄く嬉しい。
ただ、俺にとって行動隊と運び屋の仕事の両立は苦じゃないんだ。
行動隊は13年目、運び屋の仕事はその前からずっと継続してる。
行動隊に所属してからもずっと運び屋として個人で輸送してるし、運び屋の仕事も行動隊の仕事も、どちらも俺にとって大切な仕事だから、どちらも欠かすことができない。
日常の一部だ。
俺が言いたいのは、つまり、運び屋の仕事が特別なものだと考える必要は無い。
特別気を使う必要は無いってことだ。
……なるほど!
……運び屋だった父の背を見て育った。
俺の本業は運び屋だとさえ思っている。
だからと言って行動隊の仕事が二の次だとは思ってない。
人の命を守ることが何より大切だ。
いつも言っていた、「お前が全てを守る盾となれ」という父の言葉は……、ガラル軍人として最前線で働くことができなくなった悔しさと……自らが成せなかったこと、意志を俺に託したかったんだろう。
俺はそれに応えたい。
だから誰になんと言われようと、どちらもやり遂げる。
……父親のことが大好きだったんだな。
……そうかもしれない。
ただ、幼いながらも、意志を継ぐのが当然のことだと、漠然とだが考えていたと思う。
父は優しいが、寡黙で志の高い人だった。
尊敬していたんだ。
……お前は尊敬する父の意志を継いで……それらを実現している途中ということか。
……そうだ。
半分はただ人のため、もう半分は父のために戦っている。
運び屋については俺個人の問題だ、そっちにお前の手を煩わせるわけには
いやいや、ますます応援したくなったんだが?
えぇ……
お前の志の高さは父親譲りなんだな。
お前の父もとても素晴らしい人だと思うが、それを受け継ごうという意志を持つお前も素晴らしいよ。
なかなかそこまで専心できる者もいないだろう。
私はお前を見届けたい。
大きなお世話かもしれないが、できる限りお前の障壁を無くしたい。
……どうだ?お互いに遠慮せずに過ごしてみようじゃないか。
私は全力でお前をサポートするし、お前は全力で自分の成すべきことだけを考えるといい。
……お前のやりたいことは何だ。
なぜ軍に入ったんだ。
……お前ほど大したものを持っている者はいないと言ったろう。
私がそうだ。
……。
軍に入ったのも何となく。
お前のような目的があってそれに向かって進んでいる者は心からすごいと思う、尊敬する。
反面申し訳ない。
私に何ができるか……今は、その尊敬する人の力になりたい、それしかないんだ。
……あ、当然、隊長の役目は全うさせてもらうがな。
……。(俺だって、父親の意志を継ぐというだけで、俺自身何がしたいというのも無いんだがな……)
頼りないかな?
でもお前たちに負けないくらい頑張ろうと思ってるから、どうか協力してほしい。
……もちろんだ。
お前なら大丈夫だ。
!
……へへ、期待に添えるようにするよ。
……あっ、ごめんごめん!
疲れてるとこ悪かったな!
あ、いや……俺がごねただけだ、すまん。
……ありがたくお前に労ってもらおう。
うんうんっ、それでよろしい!
ごめんな、お前にも気を遣わすことになるって分かってたけど、私にはこれくらいのことしかできないから……
……いや違う……、俺のは、気を遣うというか……、動揺してるだけだと思う。
俺からすれば日常的な業務を行っているだけなのに、今までに無い待遇をしてもらってるから……
びっくりした?
そう、びっくりした……
あはははっ、びっくりしたのは私もだよ!
休みの日に一日仕事で他地方まで荷物運び!?
しかも翌日も普通に仕事するのか!ってな。
お前が人一倍働いてるってこと、これで自覚してくれ?
なるほど……
……ふふ、とにかく、遅くまでご苦労様。
すぐ飯出るから待っててくれ〜
……ありがとう。
ああ、そういや今日は、午前中にテオ博士のところに行って、午後はキーウェンの部屋でお茶してた。
そう。
テオ博士、またお前と話したがってたぞ。たまには来てほしいって。
……。
うん……。
……行ってやれよ、何となく寂しそうだったぞ?
……うん。
……行きたくないのか?
……。
……なんで行きたくないか分かる?
ん?
うーん、分からんな。
……教えないけどな。
はー?なんだよそれ〜!
俺の口からは、まだ……。
いずれ分かる。
……ん、テオ博士もいずれって言ってたけど、何のことかさっぱり分からないんだが……?
ふーん。
なんだろうな。
お前絶対知ってるだろ。
……まあいいけどさ、博士、お前が来てくれることが癒しだったんだって。
お前からしたら愚痴を吐くばかりだったかもしれないが、それでもお前の他に、わざわざ来てくれる人もいなかったから、唯一の楽しみみたいな……
っていう、この気持ちがお前に伝わるだけでもいいって言ってたんだ。
な、行ってあげよう?
……。
……何を話せばいいか分からない。
……いつも通り……、テオ博士は、いつも通りを望んでるんじゃないか?
……。
愚痴や、世間話……じゃダメ?
何か特別な話をする必要があるのか?
……。
……いつも通り……で、いいかもな……。
いいだろ〜
……。
……また今度、近いうちに必ず行く。
うん。
その時は私も連れてってくれ。
ああ、よろしく。
……あ、そういやお前甘いもの苦手だったのか?
え……?
あぁ……あまり食べないな。
嫌いとまでは言わないが……好んで食べようとはしないかな。
そうか〜
いや、キーウェンが、お前が甘いもの好きじゃないんだろうなって。
へぇ……
だからトウヤがキーウェンのとこにコーヒー飲みに来てくれたのが嬉しかったらしいぞ。
話もたくさんして……
……あぁ、あれ。
あれはキーウェンと交流するために行って……
その必要が無くなったから、最近は行ってないな。
ふふっ、私もキーウェンのこともっと知るために話をしに行ったんだ。
今度は普通に遊びに行かないか?
きっとキーウェンも歓迎してくれる。
そうだな。
……あいつずっと1人で過ごしてるからな。
ほんとあの部屋すごいよな、キーウェンサイズの部屋……
あれも総隊長の一声で特注させたらしい。
へぇ〜!
まあ普通の部屋使えってのも不便で可哀想だもんなぁ。
うん。
ああそうだ、みんなと話をするのもいいんだが、他の部隊の隊長にも顔合わせとかないといけないな。
……そうだな……。
俺も第二部隊には行っておこうかと思う……
第二部隊も隊長替わってたりするのか?
ああ、新しい隊長は元々第二部隊員だが……
新しい隊長はそこも女性だから、お前も話しやすいかもな。
おおっ、そうなのか!
確か、アデルハイトと言ったか……
アデルハイト……。
あと、ナンバー?
第三部隊隊長にも……
……そいつは、あまり好ましくないが……。(いや、嫌いだが……)
明日行っておくか。
1人付いてれば手は出しにくいだろ。
手?
手を出しにくいって……?
……ナンバーは女を口説くのが趣味みたいな男だから……
ぶっwwwwww
あははははっ、マジかよそんなヤツがここにいるのかwwwwww
さらには口も悪い。
ははは、まあ、私を口説くほど目が腐ってるなら大したやつじゃないだろうな。
……。
えっ?
なんで黙るんだ?
見境なしなのか?
……見境なしとまでは言わないが……そもそもあいつの好みは知らん。
そりゃそうだ。
とにかく、1人で行かせるつもりはない。
明日一緒に行く。
了解!
お前も疲れてるだろうし、ゆっくり回れば丁度いいな〜
そんな疲れてないって、心配するな。
はははっ、お前こそ気にしなくていいって〜、特別なことしようとしてるわけじゃないからさ。
……了解。
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