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イーリスの休日4


◆イーリスの休日

  エンジンシティはずれ 林道 クスケとデッドラッド巡回中


……あ。

ん?

なんかいる。

どこに。

あそこのちょい大きめの木の影。
多分お前じゃ見えない。

……行くか?

うん。(歩)
……あ、飛んでった。

飛んでった?

こっちが近づいてるのに気づいて飛んでった感じ。

……妙だな……、もう周りにも何も無い?

……おう、ばっと見た感じ、無いな。

……まあ、警戒はしておこう。
お前だけが見えるなら、きっと生きた人間だろうが、今のところ何をする手立てもない。

了解。





  ガラル軍 ロビー


おっ、2人ともお疲れ〜

お疲れ様。

イーリス!
なになに、キーとデートか〜?

今までキーウェンの部屋でお茶会してた。

お茶会wwwあーお前たまに中庭でやってるやつ?

う、うん……見られてたんだ……

お茶会終わってどちらへ?

食堂。晩飯一緒に食べるか?

あー、ついでに食べとくか。

おう、一緒に行く〜





  ガラル軍 食堂


そういや朝、トウヤに口止めされてたのは何だったんだ?

おっ、早速聞いちゃう?

よく覚えてたな。

奇跡的に思い出したよな。
どうせあいつからは聞けないだろうから……どんな話なんだ?あいつが不利益を被る話なのか?

あいつにとっては小恥ずかしいのかもしれないな。
俺は別に気にしなきゃ気にならん程度だと思うが……

恥ずかしいかー?
むしろ俺もやりたい。

やりたい?

2ヶ月前くらいの話な、トウヤがアローラへ個人輸送に行った時、銀行強盗に鉢合わせしたみたいでな。
届け先が規制線の中にあったらしくて……配達先の人間がどこかに避難して行方が分からなくなってたんだってさ。
だからその事件が終わって人が帰ってこないと配達が終わらなかった。
時間内に届けるってことができないかもしれなかった。

んで、なんかアローラの軍の対応が慎重だったみたいでさ、このままじゃ間に合わないからって、トウヤが自分で解決することにしたんだって。

へ?

銀行強盗3人を1人で捕まえたってさ!
いいなぁ俺もやりたかった!

マジかよ!

アローラの軍人1人協力してもらったらしいけどな、少しだけ。

ト、トウヤ……お前は一人で銀行強盗も解決できるのか……

まあ程度が低かったんだろ。
リスクが高いかとか人質に命の危険があるかだとか、加味した上で1人で十分だと判断して動いたはずだ。

流石だ……

お、俺は、不慣れなアローラの土地でなかなか1人で動こうって気になれないよ……

いやほんとに……
私もトウヤくらい早くて的確な判断力と、制圧できる力と、度胸を持ち合わせないといけないのか……、道のりは長いな……

いいなぁトウヤだけ〜俺も運び屋やれば巻き込まれるかなぁ〜

お前は配達するのを忘れそうだからやめとけ。

わ、忘れ、忘れねえ!よ、たぶん……!!

自信ねぇのかよ。
トウヤみたいに総隊長へ報告されるぞ?
トウヤは総隊長のお気に入りだからいい子いい子って褒められるけどな、お前はどうかな?

トウヤは総隊長から褒められるのが苦手みたいなんだ。

どうして?

うーん、たぶん褒め方……?
こう、髪の毛をわしゃわしゃして、いい子だねぇ〜って……

ペットか!(笑)

そうそう、なんかそれが嫌だからって、総隊長への報告はされたくないらしい。

あと俺らがいじり倒すからかな。

お前らwwwwww

そんなことがあったっていうのは総隊長から聞いたんだが、たぶん俺らがトウヤをいじるって知っててわざと言いふらしてんだと思う。
面白がってんだよ、総隊長。

相当トウヤのこと気に入ってるんだな。

なんでも、総隊長とトウヤの父親が親友だったとか……?
父親は、確か「エイジン」とか言ったか。
父親はトウヤを軍に預けたあと、仕事中に死んだらしいけど……。

あぁ……キーウェンから少し聞いたよ。

まあ俺もキーウェンも、総隊長から聞いた話だけどな(笑)

うん、トウヤは自分や自分の家族のこと話したがらないから……
特に家族のことは、トウヤの口からは聞いたことないね。

そうなのか……どんだけ総隊長の口は軽いんだ。

んで、父親から託されたトウヤを、総隊長はベタベタに可愛がりながら育てたんだってさ。
総隊長がベタベタしてるだけで、トウヤ本人はすげぇ冷めてるから、何か欲しいかとかどこか遊びに行くかとか聞いても、全部いらないって言われたらしくてなんか悔しがってた。

1番尊敬してたのがお父さんだったから、亡くなったのが相当ショックだったんだと思う……亡くなってしばらくは口も聞いてくれなかったって……

そうか……、トウヤ、ほんとに頑張ってるな……
今も配達に出てるし、明日も普通に勤務するって……

トウヤがここで働いてる間、ほとんどそうだったはずだ。
10年以上はそんな仕事の仕方だろう、実際のところは知らないが。

10年以上も……?

本人はもうそれで慣れちゃってると思うけどね……

そうか……どうしよう、今からでも労ってやるべきか……

隊長優しいねえ。
労うこと自体はいいと思うけど……

あんまりイーリスが気を遣うと、トウヤも気を遣いそうだね。

そうだよなぁ……

べっつに普通にしてりゃいいだろ〜。
こないだまで同室が他の隊のやつだったけど、別に疲れてる風でもなかったし。
俺は楽しいのが好きだから、話し相手になってくれるなら誰でもいいけど〜

はっはー、俺じゃなくてもいいって?

誰でもいいから別にお前でもいい〜

てめぇトウヤに同室断られたくせに〜

最初は一緒だったし〜!

ウザがられて部屋替えられたくせに〜!

うるせぇー!

ま、まあ2人とも……お、落ち着いて……

2人で何でも言い合えるのは良い事だな。

ああ、そういやどんな感じ?トウヤと同室、手ぇ出されてない?大丈夫?

あはは、全然そんなことないよ。

ふふっ、冗談冗談、アイツは俺みたいに節操無しじゃないから安心しろよ。
寧ろ女は作らないって意地張ってるくらいだからな。

そうなのか。

あはは……意地張ってるわけではないと思うけど……でも、一生恋人作る気は無いって、いつか言ってた気がする。
理由までは教えてくれなかったかなぁ。

うんうん、あと俺が節操無しってのは突っ込んでくれ?

節操無しで良くないか?

どこが?

だってお前、一時期何股かしてたんじゃね?

えっマジかよお前……(引)

おい引くな。
それは俺のせいじゃないんだよなぁ。
女の子が何股でもいいって言うから……そう言われたら断る理由が無いだろ?

無くはねえだろ。

流されてんなー。

それを節操無しって言うんだよ、俺を見習え〜

デッドラッド、恋人いるのか?

今はいないけど……

お前のおしゃべりに付いてこれるやつは中々の曲者だろうな。

普通の女の子だったよ!

普通の女の子はそもそもお前と出逢うような人生を送らないさ。
その子を卑下してるわけじゃないぞ?
お前と一緒にいたいと思うやつは本当に珍しいってことだ。

なんかよく分かんねぇけど、ほんとに普通の女の子だったんだよ、毎回さ。
なんでかな……なんで先に死ぬんだよ〜

お前が長生きなんだ、仕方ないだろ。お前もいつか死ぬ。

……死ぬかな……。
相手が長命だったら長く一緒にいられるかな……でも今まで長命を好きになったことがないんだよな……。

今まで何人か付き合ったことあるのか?

5人……みんないい子だった……歳とっても、若いまま死んだ子も、みんな好きだった……。
俺のせいで死んだ子もいるし……物理的に大怪我負うことよりも女の子ひとりひとりとの別れの方がずっと苦しいわ……

そうかそうか……、どの子もいつか別れが来ると分かっていたのに、その人が好きだから一緒にいたんだな。
これからも好きな人と一緒にいて、たくさん幸せになればいい。
それがお前の喜びなら、私も応援する。

イーリスほんと良いやつ……好きになりそう……

軽率か(笑)
あとイーリスもこいつを甘やかしすぎるなよ、調子乗るから。

あん?

ふふっ、甘やかしてはないかな〜
自分のことは棚に上げてさ、応援してやりたくなるんだ。

お人好しだねぇ。

……まあでも、今はここで仕事してんのが楽しいからしばらくは恋人はいいかな……。
遺跡にいるより色んなことが起こるから飽きないし、色んなやつがいるし……

デッドラッドは第一部隊のやつらが大好きだもんな〜、やっと出来た友達だもんな〜

うっせぇ!前だって友達くらいいたわ!

(うちのやつらが大好きは否定しないんだ〜)

でも俺の噂って地元じゃ結構回ってるみたいで、俺の正体が分かるとみんな離れていくっていうか……
俺が友達ってだけで地元の人間から迫害されてたみたいだから……

友達って言えるかそれ。

……お前よくそこにずっといたもんだな。

……どこに行くあてもないし……いつからか俺に対する言われは気にならなくなったから……
あん時トウヤがうちに来いって言ってくんなきゃずっとあそこにいたと思う。

そりゃトウヤのこと好きになるよなぁ〜!

お前は俺をホモに仕立て上げたいんか……?

好きんなっちゃったらしょうがないよなあ〜トウヤ性格イケメンだもんなあ〜(笑)

お〜い話きいてっか〜?

トウヤはどっちかって言うと父性が……第一部隊への愛情が溢れ出してる感じ……。
さすが長く勤めてるだけあって、何事にも余裕を感じる。

うんうん。

これにはキーウェンもニッコリ。

えっ、え?バレてる?
なんでパレたの?

花が飛んでる気がする、顔見えんけど。

そ、そんなに分かりやすい……?

お前は割とリアクションが表に出やすいぞ。

そっ、そうなの、かな……(恥)

ちゃんとコミュニケーション取れていいと思うぞ。

そ……そっか……!
良かった……!(嬉)

そういや、イーリス明日仕事だよな。

ああ、そうだ。

なんかさっき、変なのいたから気を付けといて〜、つっても普通じゃ見えんからどうしたらって感じだけど……

ん、見えない?

俺には視認できないけど、こいつの目には見えたってことだ。

見えたのは魂な。
ステルス性能か透明人間かよく分かんねぇけど……正体が生きた人間ってことには違わないと思う。
俺が近づこうとした瞬間逃げていったから、向こうはこっちを見てたんだと思う。

……なるほど……。
その時に限らず、こちらを監視しているのかもしれないということか。

そういうこと。

目的が分からないし、こちらに手を出して来ない以上、今のところ対処のしようがないから報告書に書く程度にしておこうと思ってる。
今後接触があるかどうか分からんが、一応気に留めておいてくれ。

了解。
うちや住民に危害を加えるつもりじゃなければいいがな……

そうだな。

トウヤにも言っておくよ。
……よし、ご馳走様でした。
それじゃ私はトウヤの晩飯貰ってくるから、先に帰ってくれ。

あららお優しいことで。

帰る頃にはここも閉まってるだろうからな。
明日も仕事だし、帰ってきてから作らせるわけにもいかないからな。

お前が作ってやればいいんじゃねぇ〜?なんて(笑)

朝作ったから、晩もってなると逆に気を遣わせるだろうし、断られると思ってな。

えっ、朝作ったのか!?

ああ、あいつ朝は自分で作ってたらしいから……
私も同じだからちょうどいいと思って、交互に朝飯作ってるよ。

へぇーいいなぁトウヤ〜

イーリスって料理上手いのか?

どうだろうなぁ、トウヤは美味いって食べてくれたけど……

明日も作んの?食べに行っていい?

明日はトウヤが作ってくれるかな。

えーなんだ。んじゃ明後日突撃するわ。

まあいいけど……大したもの作らないぞ?

全然なんでもいいよ〜。
俺いっつも食堂行くんだけど、モーニングも飽きてきたなぁって……

食堂代わりにされるのか(笑)
そんな頻繁にうちに来るならこっちはすぐに飽きるだろうな。

飽きない飽きない〜

あはははっ、じゃあ明後日は少し多めに作るぞ?
7:30くらいにはできてると思うよ。

あんがとイーリスママ〜っ

お前が1番年上なんだよなぁ〜

じゃ、俺ちょっと用事あるから、お前先帰ってろ。

おー。
なに、彼女に呼び出されてんの?

ん、まあそんなとこ。
じゃあお疲れ。(頭ポンポン)

やーい朝帰り。

今日中には戻るって、たぶん。

お疲れ様〜

へいへい。
んじゃキーウェン、帰るか〜

うん。
イーリス、今日は来てくれてありがとう。
すごく楽しかった……また来てほしい。

おう、こちらこそありがとう。
お茶でも飲みながらまた話をしよう〜

うん!
じゃあ、おやすみ。



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