「お水、飲める?」
なまえが尋ねれば爆豪はコクン、と頷いて起き上がりコップを受け取り、あっという間にそれを飲み干した。

実は、エントランスで自分の肩を支えるなまえを認識した瞬間に既に爆豪の酔いの気はどこかへ吹っ飛んでいた。爆豪はそれなりにタフでプライドエベレストだ。早速彼女に介抱されている情けない自分に対する不甲斐なさがじわじわと湧き上がり、酔いどころではない。
爆豪は考えた。このまま彼女を帰してやるのが筋なのだが、付き合っている2人がひとつ屋根の下にいて何も起こらずそのまま突き返すのは逆にどうなのだろう、だが酔った勢いだと思われるのも癪だ。色々考えた結果、今日は違う、という結論を弾き出した。

「…みょうじ、」
「ん?」

彼女が振り向く。その瞬間に弾き出した結論はぐらりと揺れた。自分の家になまえがいるのなんて見慣れた光景のはずだけど何故か違う。
彼女の手を引けばその身体はバランスを崩し、ベッドは二人分の重さがのしかかり少しだけ軋んだような音をあげる。
なまえは慌てて離れようと試みるが爆豪は背中にがっしりと腕を回した。
うっすい身体、そう感じた。爆豪がちょっと個性を使えばきっとすぐに壊れてしまう脆い身体、爆豪は背筋に冷や汗が流れるのを感じた。

「爆豪…く、ん?酔ってるでしょ、」
「とっくに冷めたわ」

これは本当だった。こんな状況で、ある意味正気ではないのだが、酔ってる場合でもない。終電を気にするなまえを一かバチかで説き伏せれば彼女は抵抗しつつも素直に従う。その弱々しい声にたまらなく身体が熱くなる。
ふと目線が合えばその潤んだ瞳にたまらなく引かれ思わず後頭部を掴んだ。
なまえの上にのしかかるような構図になり、そのまま思うままにやりたいことをやった。ずっと触れたいと思っていて、でも決して叶わないと思っていた、それが目の前で手をこまねいて待っている。手を出さずにいられる男なんているわけが無い。
なまえが苦しそうに漏らした吐息で理性を取り戻した爆豪はゆっくりと唇を離す。なまえはさっきより潤みを増した瞳で爆豪のことを見つめた。息が上がっていて、それがまた無意識のうちに爆豪を駆り立てる。

「わたし、あってる…?」
「なにがだよ」
「こういうの、はじめてだから、その、」


はじめて、ハジメテ。
それは正に爆豪を殺すに十分すぎる単語だった。アタマがくらくらして、全身の血が沸騰したような錯覚さえしてくる。

「はじめてなんか、」
「…う、ん」
「アンタやめろそれ。」
「え、ごめっ」
「煽んな、バカかよ。」

1度起こった熱はなかなか冷めない。爆豪はため息をついたのち、抑えられない欲望を晴らすべく再びなまえに齧り付く。角度を変えながら、何度も何度もなまえを求める。感情のない女にするのとはまるで訳が違う、
「ば、くご」
「んだよ。今、余裕ねぇ」
爆豪は火傷に触れることで自分を抑えつけようと試みた。
自分はなまえを傷つけた、欲望に飲まれるな、怖がらせるな、と。

「……ヤなら殴るなりして止めろ、」
「違う!そうじゃなくて、…あんま見ないで欲しい、その、汚いから、」

そういってなまえは爆豪の手を振り払い、右の頬を腕で隠す。が、爆豪はそれを掴んで再びなまえの手をベッドの上に縫い付ける。
「はァ?ンなわけねぇだろバカか?!」
そして確かめるように火傷跡をなぞる。
「気持ち悪ぃわけねーだろ!!」
爆豪はなまえのことを確かめるように強く抱き寄せた。
2人は身体を寄せあって、ただじっと抱きしめ合う。

「…アンタが言ったんじゃねぇか、そーゆーの、含めて全部アンタだって」
「それでも、やっぱり怖い」
「オレが怖いんか、」
「ち、ちがう!爆豪くんが怖いんじゃなくて、爆豪くんに嫌われるのが怖い、」
こんなに幸せでいいのかなって、と弱々しく呟くなまえはまるで子供みたいだった。

爆豪はもう一度なまえに深く口付ける。


「そんなの俺だって一緒だわクソが。」
逞しい腕に引き寄せられたなまえの身体は爆豪の身体にぴったりと密着する。なまえの背中をさすれば彼女の呼吸はだんだんと落ち着き、打ち付ける心音がよく響いた。自身のものだかなまえのものだか分からないが、それはたまらなく心地よい。紛れもなく"幸せ"だ。



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