「おう爆豪、めずらしーな!お前から連絡してくれっなんて」
「わりーかよ」
「悪くない悪くない、だいたい要件わかってるしな!」


切島が爆豪の背中をバシバシ叩くが、珍しく爆豪は無反応だった。思うところがあったのだろう。ビールを流し込みながら無言をきめていた。


「で?」
「…ったんだよ、」
「え?聞こえねぇなぁ?」
「っクソ。みょうじと付き合うことになったっつってんだ!」


おお、そうか!と切島はまたバシバシと爆豪の背中を叩いた。爆豪から話がある、と言われた時点でなまえとうまくいったか、まったく逆かの2択だと察しがついた。そして爆豪に会った瞬間に後者ではないと切島は素早く考察していた。爆豪は分かりやすい男だ。親友の切島には手に取るようにわかるのだ。



「…それだけだ。」


切島がそうか、と言ってにやにやしながら爆豪の顔を覗き込めば爆豪は舌打ちをした。

「だらしねぇ顔、」
「こんな時に引き締まってられっかよ!ダチに彼女が出来て、しかもそれがすげーいい人なんだからさ!お似合いだと思うぜ!」
「そうかよ。んなこと自分じゃわかんねえ。」
「そうなんだよ、とりあえずおめでとうな爆豪。」


切島が太陽の如く眩しい笑顔を向ければ、爆豪にしては珍しく素直に「てめぇには世話かけたな。」と感謝を口にしたので切島がおちょくれば意外にも耳まで赤くしていた。

それからは酒を酌み交わしながら昔の話をして、2人は大いに盛り上がった。爆豪は普段酒の席でも気を緩めないし、それは友人の切島の前であってもあまり変わらない。しかしその日は相当気分も上がっていたらしく、爆豪自ら飲み足りねぇと三軒目まで切島を連れ回した。


「付き合いはじめて、1ヶ月くらい経つんだろ。」
「おう。」
「爆豪さ、おめーの堅いとこはかっけぇと思うぜ、だけどよ、限度ってモンがある。つまりよ、そろそろいっていいんじゃん爆発三太郎」
「は?ネチネチうっせーな、俺にいけねぇとこなんてねえ!」
「おう、カッコイイぜ!男らしくキメんのもまた一興、てな!」


二人とも出来上がってて完全に呂律も回っておらず、ここまでくると会話も噛み合っていない。きっと爆豪は話の意図を理解していない。切島がテーブルの上に残っていた液体を勢いよく自身に注ぎ込めば、店員を呼び止めて「すんませんお会計!」と勢いよく手を挙げた。


「てめぇ今日帰んのか?」
「時計みろ、もーすぐ終電なんだから」
「終電なんかとっくにねーだろ。」
「俺のじゃねぇよ爆豪の。ほら、大事な人を外で待たせていーのか?」


その後は手元が覚束無いながらも手際よく会計を済ませて、お店を後にした。切島が爆豪の腕を引いて足早に駅前に向かえば、俯き気味にスマホをいじるそのシルエットが爆豪の視界を独り占めした。

「みょうじ、」
「あ、ふたりともお疲れ様です!」

大きい荷物を抱えたみょうじがこちらに気がついて駆け寄ってくる。髪の毛は下ろしていたけれどさっきまでくくっていたのか、クセがついている。

「すんませんね、お仕事終わりに!」
「全然!沿線だし大丈夫ですよ、」
「どーいうこったクソカミ」

状況の処理が追いついていない様子で、切島の襟首を引っ張りながら爆豪が声を潜める。

「ま、こういうことだ!ここまでくると俺の手に負えないから!なまえさんあとは任せたっす!!じゃあお疲れ!」


そう言って切島は独り足早に改札を通り抜けた。ある程度いって振り返れば、爆豪がなまえの肩に顔を渦めている。それを見届ければ、切島は1人寂しく終電をなくしたことを思い出して、スマホで近くのビジホを検索する。この男はとんでもなく友達思いで、男らしくて、お節介なのだ。



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