なまえはフリーズした、思考がショートした。うんともすんとも言わないなまえ、爆豪はそれまで何も言わずに黙っていたが、それを見かねたのか気だるそうに口を開く。

「……言っとっけどよ、俺は謝らねえからな。謝るくらいなら最初からしてねぇ。お前があのクソ男と付き合ってたとしても…関係ねえ。」
「っ、付き合ってなんか!…付き合ってなんかない、私が、私が好きなのはっ…、」

なまえは振り絞るように言葉を紡ごうと試みるが、まるで尻切れトンボだった。それでも爆豪は何も言わずになまえの言葉を待つ。


「………つ、付き合おう、とは言われた、けど。母親にお見合いも勧められた。そろそろ結婚しなさいって。でも、どっちも断った。」

なまえは田舎に帰った時、母親に結婚の心配をされていた。お見合いを勧められ、なまえも気がつけばもういい歳だ。初めは母の提案をのんで1度くらいならしてみてもいいかもしれないと思った。だが結局なまえはそれを断ったのだ。今までなんでも母親の言う通りに生きてきたなまえのはじめての抵抗。

会えない間に目の前の人のことをどれほど考えただろう。何かあった時に真っ先に助けに来てくれる人、現に今だってこうして話を聞いてくれた、彼のこと。



「だって、わたしがすきなのは、爆豪くん、だから、」

雨音が静かに響く。そして2人は己の心音をその雨音に隠した。雨が降っていなかったら、きっとそれは相手に伝わってしまうだろう。
爆豪は座席の上に膝を立てて蹲った。それでも左手はなまえの手と繋がれたままだ。隠したはずの心音が伝わるようで、2人の間に妙な緊張が流れる。


「あー…まじ意味わかんねえ、」
「私も分からない、」
「普通嫌いになんだろ。顔も見たくもないんじゃねぇのかよ、とっとと他のやつ捕まえてろよ…」
「うん、でもね、無理だった、」

「…あぁ、クソ!!アンタは知らねぇと思うけどよ、俺の方がな!!!アンタの何万倍も好きだわクソが!!!!!!」





静寂。
爆豪が一息に叫び倒すのをなまえはただただまっすぐ見つめていた。一瞬の静けさの後、爆豪はため息をついた。









「みょうじ、俺と付き合え。」



爆豪は決して冗談だったり、茶化したり、お世辞だったりを言わない。それが分かっていたからなまえの目からは涙が一筋流れた。彼女にはこれが心からの言葉だ、というのがしっかりと伝わった。悩んで、悩んで出した結論だということを疑う余地がなかった。だから、涙を零した。

そして静かにうなずいて、爆豪の目を見た。




「よろしくお願いします、」


そこから二人の間に言葉はなかった。代わりに爆豪がなまえの身体を引き寄せて、なまえも爆豪の逞しい背中に手を回した。雨音が心地よく響く、そこはやっと辿り着いた2人の終着点。



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