朝帰り



真選組の屯所で一夜を明かしたエリカが桂一派の隠れ家に戻ってきたのは午前九時を回った頃だった

『ただいまぁ』
『あっ!!エリカちゃんッ!』
暢気に足取り軽く戸を開くと目の下に隈を作ったグロッキーな仲間たちに出迎えられた
なかなかアルバイトから帰らないエリカを心配して皆一睡もしていないという

『桂さぁぁ…んッ!エリカちゃん帰って来ましたよォォォッ!』
仲間の一人がそう叫んで中へ駆け込むとそれと同時に飛び出してきた小太郎さん
サラサラヘアーをこれでもかっていう程なびかせて

『エリカッ!!心配したぞォォォッ!』
まるで生き別れた娘にでも再開したお父さんかのように小太郎はエリカを抱き締めた
小太郎の肩越しからエリザベスも【無事で何より】と書かれたプラカードを掲げていた

過保護過ぎとも思えたがみんなにこんなにも心配をかけていたことをしりエリカは反省した
『…ごめんなさい、心配かけて』
珍しくしおらしいエリカにみんなが顔を見合わせた

『いいのだ、エリカ。お前が無事なら』
小太郎はまるで叱られた子供みたいにしゅんとしたエリカをあやすように撫でた
『そうだよ、エリカちゃん!』
『おかえりエリカちゃん!』

口々にエリカに温かい言葉をかける仲間たち

『うぅ…お父さぁぁん』
『お父さんじゃない、桂だ!』

温かいみんなに囲まれてエリカはこっそり涙をぬぐった
小太郎の着物で


『そう言えば昨日はどこに泊まったのだ?まさか野宿したとは言わぬだろうな?』
朝食を取っていたエリカに小太郎が思い出したように聞いた
それには他の仲間たちも耳を傾けた

『さすがにあたしも女の子だからね、野宿なんてしないよ〜』
『では一体どこで…』
味噌汁を一口飲んでエリカは笑顔で言った

『鬼の副長さんのとこ』

急に静まりかえる部屋

『ど…どうゆうことだ、エリカ!まさか真選組に捕まっていたのか?』
『あー違うよ違うよ』
エリカは大まかに昨日のことを順をおって説明した
バイト先で鬼の副長さんと飲んだこと、酔いつぶれた彼を屯所に送り届けたこと

『すぐに帰ろうと思ったんだけどね、副長さんなかなか離してくれなくて…結局朝までって訳なの』
そしてエリカは手を合わせごちそうさまと告げた

『じゃああたしお風呂入ってくる〜』
エリカは皆を残して部屋を出ていった


残された小太郎と仲間たちはわなわなと震えていた

『…土方の野郎、エリカちゃんに手を出しやがったなんて』
仲間の一人が苦虫を噛み潰したような顔で呟くように言った
それを気に部屋中から真選組副長への非難や悪口が飛び交った

そんな中、小太郎はテーブルを叩くようにして立ち上がった
『皆…真選組副長土方十四郎を許すわけにはいかないぞォォォッ!!』
そのひとことに仲間たちは同意するように立ち上がったのだった

勘違いとは知らず、桂一派は真選組打倒に決意を新たに闘志を燃やしたのだった



…へっくし!

『副長?風邪ですか?』
『いや、なんか悪寒が…』



 


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