よい一日を



久しぶりに飲みすぎた
目を醒まし、体を起こし部屋を見回して頭を抱えた

頭が重くてガンガンする

こんなになるまで呑んだのはいつ振りだろうか

隣にいた女…
赤根エリカに勧められるまま呑んでいたらこの様だ、情けねぇ…

正直此処までどうやって戻ってきたのか全く記憶にない

アイツは…
赤根エリカはどんな顔で見送ったんだ
へべれけに酔い潰れた俺を

…最悪だ
アイツの前で俺は情けない姿ばかり見せつけてねぇか?

…構うこたぁねぇか
次に会うときは絶対にしょっぴいてやるんだから

そうして重たい頭を抱え込む十四郎
目を閉じて真っ先に浮かんでくる女の顔
それを振り払うかのように頭を振って後悔した
頭が、痛ェ…


熱くてしょっぱい味噌汁が飲みたくて食堂に向かったらそこがなにやら騒がしい
一角に人だかりができている

ちょうど入り口の近くに座っていた山崎に尋ねた
『おい、山崎。なんだアレは』
『あ、副長。おはようございます、なんか食堂に新入りの女の子が入ったみたいで、その子がかわいくてみんなああなんですよ』

新入りだ?
そんな話聞いてねぇぞ

十四郎は怪訝そうに眉を潜めながら人が群がる配膳用のカウンターへ向かう

『邪魔だ退け、てめーら』

己の一声で割ける人だかり
その先にいたのは…

『あ、副長さ〜ん。ようやくお目覚めですか〜?』

紛れもない、艶やかな声を弾ませて笑顔で迎えた赤根エリカだった

『なっ…なっ…何してんだお前はァァァッ!』

『何って…朝ごはん準備してましたけど?』

そりゃまあそうだよな
おばちゃんたちとお揃いの割烹着来て頭に三角巾付けてお玉片手に持ってる辺りそうとしか思えない…

『ってそうじゃねぇッ!なんでお前こんなとこに居んだよッ!!何してんだよッ!』
物凄い剣幕の俺に周りの隊士が怯えるなか、赤根の表情が変化を見せた
隊士どものように怯えを見せた訳じゃない
色気を出した艶かしい女の顔だ

『やだ、副長さん。忘れちゃったの?昨日のこと。…副長さんの寝顔、可愛かったわよ』

な…な…
なぁにィィィィッ!?

驚いたのは俺だけじゃない
食堂全体がざわめきたつ

『あらら〜?土方さんは屯所に女連れ込んでよろしくヤってたってんですかィ?』
そこに今まさにお呼びでない腹黒ドS王子が降臨した

『ちッちげーよ、なんもしてねーよ』
『女と一晩過ごしてなんもしてねーってそれは男としてどうなんだよ土方コノヤロー』
『うるせーッ!今のは全部忘れろっ!全部こいつの冗談だッ!』
そうとだけ言い残し炊事場の赤根を連れて食堂を飛び出した


『お前、どうゆうつもりだ』
自室に戻るなり赤根を問い詰めた
取り調べ用の鬼の副長の顔で

それなのにこの女怯えるどころかニコリと笑みを浮かべた
『どうもしないよ、ぐでんぐでんに酔っぱらった副長さんをここまでつれてきてあげたんだよ。帰ろうと思ったんだけど手を掴まれて離してくれないからいっしょに寝かせてもらっただけ』

調子が狂う

こいつが桂の仲間で捕まえなければならないっていうのに…

『…もう、いい。帰れ』

『捕まえないの?チャンスだよ?』

手が出せないのは何故か
手を伸ばせばすぐ手が届く
掴めばこいつは多分逃げはしない
そんな気さえするのに…

何故だ

『……捕まりてぇのか?』
『ん〜…まだ楽しみたいかな、鬼ごっこ』

子供みたいに笑いながら部屋をあとにしたアイツ

俺もそうなのかもしれない

まだ見ていたいと思ってしまった
狭いかごに閉じ込めてしまう前に、広い世界を飛び回る彼女を


どうやら俺は
重症です




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