酒は呑んでも呑まれるな



『副長さんもキャバクラとかに来るんだね、ちょっと意外だなぁ。あ、おかわり同じのでいいですか?』

女と他愛もない話をしながら酒を飲み交わす

キャバクラじゃあなんのへんてつもない普通の光景

でも横にいる女は…

指名手配中の桂と行動を共にする立派な攘夷志士だ

『いやいやいやッ、おかしいだろッ!なんでお前、ここに居んだよッ!?何してんだよッ!』

『何って、バイト』

『はぁぁぁッ!?』

いきり立つ俺と対照的な隣に座る赤根エリカ
なんでそんなに興奮してるの?とでも言いたげだ

『バイトくらいするでしょ、攘夷活動にも色々お金がかかるみたいだし』

こいつ、自分が攘夷活動に加担してると堂々と宣言しやがった

『お前、俺が警察だってこと忘れてねぇか』

『アハハ。そういやそうだったね』
エリカは軽快に笑ってグラスに半分くらい残るカクテルを飲み干した


そしてぐいっと身を乗り出して顔を近付けた

もう少しで口づけしそうなくらい、近い

そんなことに柄にもなく驚き緊張で体を強張らせた

視界には赤根エリカの顔しか見えなくて

『…こんなとこで仕事の話なんて不粋ってもんじゃない?』

少し酔いが回ってうっすら赤くなっている頬、潤んだ瞳、緩やかに弧を描く濡れた唇

それから目が離せなくなった

そして気づかない振りなんてできないくらい激しくなる動悸

俺はどうかしちまったんだろうか…


『飲もう、鬼の副長さん。今夜は無礼講で』
さっきまで強烈なまでに色香を漂わせていたエリカだったが、次の瞬間には餓鬼みたいに無邪気に笑っていた

目の前にいるのは指名手配中の桂の仲間
捕まえちまえば大手柄だっていうのに…

今日の俺はどうかしていた

『じゃあ副長さん、改めて…かんぱーい』

彼女の差し出したグラスに自分のグラスを傾ける

それはごく自然の成り行きみたいに



公私混同、上等だ





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