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ガシャーンッ!

朝からけたたましい音が船内に響き渡った

音を立てた主は確かめずとも分かる

エリカが剣術の稽古を武市先輩から受けるようになってからというものこういった音がよく聞こえて来るようになった

どうも向いていないようで
船内をあちこち壊している

いつかは朝練だとか抜かして早朝六時から稽古を開始しまだ寝ていた仲間たちをみんな起床に追いやった

『エリカ!なにやってるッスかァァァッ!剣術の稽古は昼からと言ってたはずッスよ!』

音がした部屋に入るとそこには真っ白い粉にまみれたエリカが居た

『…なに、やってんスか』
また子は稽古をしてて粉まみれになる意味がわからなくて疑問をそのままエリカにぶつけていた

それにここは炊事場
稽古をしていたにしてはあまりにも場違いだ

『ま、また子ちゃ〜ん…』
真っ白な顔に涙を浮かべてエリカがまた子にすがり付いてきた

『ちょっ…離れるッスよ!粉が!粉がつくッ!』

『ひどい!あたしへこんでるのに!もっと優しくしてよ』

『ギャーッ!服が粉まみれッスよ!』

『道連れだよ〜ッ!』

一層騒がしくなった炊事場にひょっこり顔を覗かせた万斉が控えめに口を挟んだ

『…二人とも、ここをまず片付けて、そして身を清めてくると良いでござるよ』

その言葉に目を見合わせた二人
お互い全身真っ白になっていた


『なんであたしがこんなこと…』

エリカがあたりに撒き散らした粉を拭き取りながらまた子はため息をついた

『また子ちゃん、手伝ってくれてありがと』
粉まみれの真っ白な顔でニッコリ微笑んだ

『…で、エリカは朝っぱらからここで何してたッスか』

『それが…朝ごはん作ろうと思ってたんだけど』

『朝ごはん?何でまた』

『昨日晋助サン帰り遅かったでしょ?あたし待てずに寝ちゃったから朝のご挨拶にと思って部屋に行ったの』

『なっ!何ィッ!エリカは晋助様の部屋に行ったッスか?寝起きの晋助様を見たんスかァッ!』

『うん、てゆうか…布団から出てきてくれなかったから寝起きとは言えなかったけど』

エリカはいつもちゃっかり晋助様のお側に居る
私たち鬼兵隊の仲間たちの誰よりも晋助様に近づけるヤツ

何も考えていないからできる業…ともいえるけど

(…ズルい、そして羨ましい)

『それで二日酔いで頭痛いから近寄るなって言われちゃって…』
地面に付くんじゃないかと思われるくらいエリカが肩を落とした

『…で、それと朝ごはんがどう関係してるッスか』

『だから晋助サンが元気になる朝ごはん作ってあげようと思って厨房に入りました』
エリカは誇らしげに胸を張った

『…それは無駄な努力になるッスね』

『どうして!?あたしがどんくさいからなの?そう言いたいのね!?』

…まぁ、それも大いにあるのだけど

『二日酔いなったこと無いんスか?二日酔いん時に朝ごはん食べれる元気があるヤツは居ないッスよ』

『ガーンッ!』
この世の終わりかって位ショックを受けた様子のエリカ
それにしても[ガーン]とか口に出していうか、フツー?

しかし目の前で項垂れるエリカを見ていたらだんだんと哀れに思えてきてつい慰めてしまう

『元気になるかはわからないッスけど…軽めの朝食なら食べれるかも…知れないッスよ』

そう言うとエリカは目を輝かせ途端に元気になった
『そうだよね!あたし頑張る!』

エリカは意気込んでガッツポーズを見せた

一喜一憂

ライバルでも憎めない
彼女の素直な気持ち

 


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