gleam



『私もなにか武器が欲しい』

甲板で三味線を奏でている拙者にエリカ殿は言った。

『突然どうしたでござるか』

エリカ殿のリズムがいつもの長閑な童歌から切な気なバラードに変わっていた

『万斉さんはその三味線があるし』

不満げで、けれどどこか寂しそうな表情で拙者の三味線を見つめて

『また子ちゃんには銃があるし、武市さんにも刀があるのに』

その声は風鈴のように美しく、儚げで

『あたしには何もない』

エリカ殿は何か思い詰めているようだった

鬼兵隊にやって来てからの彼女はいつも笑顔で回りすら巻き込んで明るくする、そんな太陽みたいな存在だった

晋助の後を子犬のようについて回る
船に戻れば尻尾を千切れんばかりに出迎える

晋助は鬱陶しそうにしていたが拙者は見ていて飽きなかった

それが今は萎れた向日葵のようだ

『何を思い詰めているでござるか』

三味線を置いてエリカ殿と正面から向かい合い、そこでようやく気づいた

彼女の目は涙でいっぱいで今にも零れそうではないか


『…エリカ殿?』

震えた声がエリカの口から紡いだ言葉

『あたしも晋助サンの役に立ちたいよ』
言葉と共に泣き崩れたエリカ殿

『あたしだって、みんなみたいに一緒に戦いたいよ』

『エリカ殿…』

『おいてけぼりは嫌なの』

涙が美しいと思ったのは初めてでござる
夜の灯火で微かに光るそれは小さな宝石の様で

思わずエリカ殿の頬に手を伸ばした

その時…


『エリカ!こんなところにいたッスか』
血相変えて駆け寄るまた子殿
事情を尋ねれば
『二人でちょっと呑んでたッス、そしたらエリカが酔っ払って急に泣き出して部屋を飛び出したんで…』

泣き上戸

そうゆうことなら納得でござるよ

また子殿に手ぬぐいで涙で濡れた顔をゴシゴシと拭われるエリカ殿
その姿は幼子の様で

『みんなと一緒にいたい』

そればかり口にしていた


『エリカ殿』
しゃがみこんでいる彼女の目線に合わせ跪けば自然と視線がぶつかった

『慣れない武器を持つのは危険でござる』
拒まれたと思いエリカ殿は再び涙を溢れさせる

『不慣れならこれから慣れていけばいいでござる、時間が許す限り拙者やまた子殿、武市殿が手ほどきするでござるよ』

太陽を覆っていた雲が晴れたみたいに
エリカ殿はいつもの笑顔に戻っていた

『なんか、優しすぎるッスよ万斉さん』

仕方ないでござる

彼女の魂は人を惹き付けて離さない、そんな魅力的な唄を奏でている


恥ずかしいくらいベタなラブソング


晋助に届く日はくるだろうか





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