かぜ薬

熱で意識が朦朧とする
まぶたを開けるのも億劫だ
けれどベッドのそばに気配を感じて重いまぶたを上げた
『…神楽ちゃん?』
『チャイナじゃねぇ、俺でさァ』
エリカの視界に現れたのは赤いチャイナ服の神楽ではなく真っ黒い制服に身を包んだ総悟だった

『あれ…なんで?』
神楽が居たはずだったのに総悟に摺り変わっている
熱で浮かされた思考では何も考えられずエリカは首をかしげるばかりだった

『エリカがダウンしたって聞いたから仕事投げ出して来てやったぜ、そんでチャイナとバトンタッチでさァ』
『…嘘。どうせ最初からサボってたんでしょ』
『ちげーよ。見廻り中に旦那に会ったんでィ』
図星なんだろうがそれでも口を尖らせ総悟は不満を露にする
その様子が可笑しくて笑みが溢れた
『ダメだよ、あんまり仕事サボっちゃ…。でもありがとう』

総悟は嬉しいとも恥ずかしいともとれそうな微妙な表情を浮かべ顔を逸らした

『具合、だいぶ悪いのかィ』
『うん…でも今日休みだし寝てれば良くなるよ』
エリカは笑顔を浮かべて見せたがどう見ても辛そうだ
総悟の表情も辛そうに歪んだ
いつも無表情に近い彼だからこそほんの僅かな変化にも気が付いてしまう

『…どうかした?』
掠れた声でそう訪ねると総悟は小さく呟くみたいに言った

『なんで俺に言わねぇんだよ、辛いって』
悔しそうなその顔にエリカは言葉を無くした
彼のこんな顔は初めて見る

『頼るなら俺だろ?なんで旦那なんでィ』
朝送ったメールで具合悪いことを総悟に伝えなかったのに銀時達には頼ったこと
総悟はそれが不満だった

『心配かけたくないとか、水くさいでさァ』
エリカが特別に銀時たちを選んで頼った訳ではない
約束があってそれを断ったことで心配になって神楽が見舞いに来た、それは承知の上だ

それでも自分を頼ってくれなかったことが悔しい。むしろ寂しいのだ

そんな様子の総悟をみてエリカは力無く微笑んだ
『ごめんね、ほんと一人で大丈夫と思ってたんだけど…風邪引いてる時ってやっぱりなんか心細くなっちゃって、神楽ちゃんにいてもらったんだ…』
そう言うとエリカは布団の中からそっと手を出した
総悟は反射的にその手を握った

『…しばらく、居てくれる?』
上気した頬で瞳を潤ませ見上げてくるエリカの様子によこしまな思いが生まれた
けれどその思いに気づかないフリをして
『仕事中だが仕方ねぇから居てやりまさァ』

側に居てやりたくて来たと言うのに、そんな言い方しか出来ない総悟
それでもエリカは微笑んで
『ありがとう』
そう言って目を閉じた

総悟はエリカが静かな寝息をたてるまでずっとその手を握ったまま見守るみたいに見つめていた熱で意識が朦朧とする
まぶたを開けるのも億劫だ
けれどベッドのそばに気配を感じて重いまぶたを上げた
『…神楽ちゃん?』
『チャイナじゃねぇ、俺でさァ』
エリカの視界に現れたのは赤いチャイナ服の神楽ではなく真っ黒い制服に身を包んだ総悟だった

『あれ…なんで?』
神楽が居たはずだったのに総悟に摺り変わっている
熱で浮かされた思考では何も考えられずエリカは首をかしげるばかりだった

『エリカがダウンしたって聞いたから仕事投げ出して来てやったぜ、そんでチャイナとバトンタッチでさァ』
『…嘘。どうせ最初からサボってたんでしょ』
『ちげーよ。見廻り中に旦那に会ったんでィ』
図星なんだろうがそれでも口を尖らせ総悟は不満を露にする
その様子が可笑しくて笑みが溢れた
『ダメだよ、あんまり仕事サボっちゃ…。でもありがとう』

総悟は嬉しいとも恥ずかしいともとれそうな微妙な表情を浮かべ顔を逸らした

『具合、だいぶ悪いのかィ』
『うん…でも今日休みだし寝てれば良くなるよ』
エリカは笑顔を浮かべて見せたがどう見ても辛そうだ
総悟の表情も辛そうに歪んだ
いつも無表情に近い彼だからこそほんの僅かな変化にも気が付いてしまう

『…どうかした?』
掠れた声でそう訪ねると総悟は小さく呟くみたいに言った

『なんで俺に言わねぇんだよ、辛いって』
悔しそうなその顔にエリカは言葉を無くした
彼のこんな顔は初めて見る

『頼るなら俺だろ?なんで旦那なんでィ』
朝送ったメールで具合悪いことを総悟に伝えなかったのに銀時達には頼ったこと
総悟はそれが不満だった

『心配かけたくないとか、水くさいでさァ』
エリカが特別に銀時たちを選んで頼った訳ではない
約束があってそれを断ったことで心配になって神楽が見舞いに来た、それは承知の上だ

それでも自分を頼ってくれなかったことが悔しい。むしろ寂しいのだ

そんな様子の総悟をみてエリカは力無く微笑んだ
『ごめんね、ほんと一人で大丈夫と思ってたんだけど…風邪引いてる時ってやっぱりなんか心細くなっちゃって、神楽ちゃんにいてもらったんだ…』
そう言うとエリカは布団の中からそっと手を出した
総悟は反射的にその手を握った

『…しばらく、居てくれる?』
上気した頬で瞳を潤ませ見上げてくるエリカの様子によこしまな思いが生まれた
けれどその思いに気づかないフリをして
『仕事中だが仕方ねぇから居てやりまさァ』

側に居てやりたくて来たと言うのに、そんな言い方しか出来ない総悟
それでもエリカは微笑んで
『ありがとう』
そう言って目を閉じた

総悟はエリカが静かな寝息をたてるまでずっとその手を握ったまま見守るみたいに見つめていた
 


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