ugly customer

[真撰組屯所]

エリカは今、その前に居た。

不本意だけど

私が運んでしまった爆弾で吹っ飛んだ…
真撰組の地味な人

自分のせいではないと思ってはいても心にある小さな罪悪感

今日はお休みで暇だった事もあってそればっかが頭を過る

『一応、お詫びしに行った方が…いいよね?』


と言うわけでエリカは真撰組の屯所の前に居た。

…が、

そういえば…地味な人の名前知らないんだった…

どうしよう…

頭を抱えて彷徨く様は見るからに不審者だ

真撰組の隊士の目に留まらない筈もなく…

『アンタ、さっきからなにしてやがる』
スキンヘッドの怖い顔に捕まった

『あ、怪しい者ではありません!先日爆破に捲き込まれた地味な人に用があったんですけど名前がわからなくて!』

『山崎に?』

あ、地味な人で通じた…

『…此処で待ってろ』

言われた通り待つこと数分、スキンヘッドの人と一緒に地味な人…山崎さんがやって来た


『なに?なんなの?俺、今日は非番なのに忙しいんですよコレでも〜』
ズルズルと引きずられるように連れてこられた上に乱暴に私の前に投げ出された

手には何故かミントンのラケット

『…コンニチワ、結構お元気そうですね』

結構大きな爆発だったと思うのにあちこち絆創膏を貼っているくらい

ひどい箇所と言えば…

アフロになってしまった頭


『アレ、君は…たしか…』

『先日は…その…、ご迷惑お掛けしました』

エリカは深々と頭を下げた

『いや、あれは君が悪い訳ではないから!俺なんて全然平気だし!アレくらいの爆撃なら慣れてるから…って、それより場所変えませんか?』

皆の視線が痛すぎる…

そう呟いた山崎さんの背中を睨む数人の隊士がいた


女ッ気がない真撰組
女の子がこうして屯所にやって来たのが物珍しいのと、なりゆきとはいえ目当ての男が俺っていうのが…

あの鋭い視線の訳らしい。

手入れを施された庭を一望できる縁側に案内された。

『立派なお庭ですね〜、広いし』

『そうなんだ。ミントンするにも十分な広さだし、君がくる前もミントンしてたんだ』

『……相手の方は?』
見渡しても庭に誰か居る様子はない

『………』
返事はない

『もしかして…ひとりで?』

気まずそうに頷いた山崎さん


……かわいそうな人。

『ちょっとォッ!なにその痛々しいものを見るような目は!』

『すいません、なんか酷いこと聞いちゃって』

『なんかその言葉、凹むよ…』

そんな可哀想な山崎さんに同情して一緒にミントンをしてあげることにした

生き生きとラケットを振るう山崎さんは地味なりに輝いていた
(だからね、地味は余計だよ)


『ギャッ!また負けたぁ〜!ちょっとは手加減してくださいよ』

落ちた羽根を拾うのはもう何度目だろう

『ハハハッ、これでも手加減してるんだけどなぁ』

コレには少々カチンときた

付き合ってあげてる筈がエリカは次第に本気モード突入

全力でサーブを打ち込んだ


『薄ピンクの水玉…、何でェ色気がないねィ』

抑揚の無い声が背後から聞こえた。

振り返ればいつから居たのかアイマスクを額に装着したままの…

『沖田…サン』

パンツの柄を当てられた
短い丈の着物来てはしゃいでたのが悪かった…

『エリカ、俺とアンタの仲じゃねェか、総悟でいいんだぜィ』

『え!?隊長の彼女だったの!?』

『違います、私たちなんの関係もないよね、総悟くん?』

『まだ、ね。そのうち苛められて悦ぶメス豚に調教してやりまさァ』

『お断りよ!!』

『そんなことより…』
総悟くんはおもむろに立ち上がり大きく伸びをした。
そして私たちの間をすり抜け縁側に向かった。

そして私のバックの前で立ち止まり…

『ここからイイ匂いがする』
そう言って中身を漁り出した。

『ちょっと何してんよ!乙女のバック漁るなッ!!』
勢いよく取り返したバック

しかし彼の手にはかわいい感じの紙袋が

忘れてたけど、山崎さんへのお詫びの印に焼いたパウンドケーキが入った紙袋だ

てゆうか…
嗅覚、犬並み?
それ、そんな匂いました?


『それ、山崎さんにあげようかとしてた…パウンドケーキで…』

『え!?俺に!?』
驚いた山崎さんの頬は心なしか赤い

『嬉しいなぁ〜、手作りのお菓子なんて初めて貰うよ〜』

そんなに喜んで貰えたら作った甲斐があるってもんだ

『あんまり綺麗に焼けなかったんですけどね』

紙袋を返してもらおうと総悟くんに目をやると…

『…俺ァもう少し甘くてもいいんですがねィ』
私の焼いたケーキを頬張っていた

『『あああああぁーッ!』』

奪い返した紙袋の中にはもうケーキは無かった

『ひどいですよ!俺の為に作ってくれたんですよーッ!ひと切れくらい残してくれたって…』

涙ぐんでいるようにも見える山崎さんは総悟くんに詰め寄っていた

『ザキが手作りお菓子なんて生意気だろーが』
まだ口をモゴモゴさせながら理不尽な事を言って退けた

初めて会ったときから薄々思ってたけど…

総悟くんって…


『エリカ』
不意に呼ばれて振り向けば

口の回りにケーキの欠片を付けながら、真剣な顔でまっすぐ私を見つめてこう言った。

『今度は誰のためでもなく俺の為に作って来なせェ』

…ちょっとドキッとしちゃったなんて言えやしないわ

部屋に戻っていく後ろ姿を見つめていたら彼が急に立ち止まった。

『あと…』
振り返った総悟くんはニッコリ笑ってこう言った。

『俺ァ、下着は黒い方が好きでさァ』

『………』


マイペースで自分勝手で…
手に負えない人

彼は気になる暴君



『山崎さん、また今度作ってきますから元気出して』

『ほんと!?』

『はい』

『ミントンも!?』

『………はい』

『じゃあ今日は帰りますね、お大事に』

手をふってエリカは真撰組の屯所を後にした


エリカを見送る山崎はいつになくご機嫌だった

お菓子も嬉しいんだけど、一緒にミントンをしてくれたことが何より嬉しかった。

『エリカちゃん、いい子だなぁ』

お菓子は隊長に全部食べられてしまったけど…きっとおいしかったんだろうなぁ

想像してニヤけた山崎の耳に聞きなれた音が聞こえた

…ジャカッ

『何、にやけてんでィ』


屯所ではまた爆音が響き
山崎はまたしばらくアフロで過ごす羽目になったそうだ。



thanks!‡decadence‡
[真撰組屯所]

エリカは今、その前に居た。

不本意だけど

私が運んでしまった爆弾で吹っ飛んだ…
真撰組の地味な人

自分のせいではないと思ってはいても心にある小さな罪悪感

今日はお休みで暇だった事もあってそればっかが頭を過る

『一応、お詫びしに行った方が…いいよね?』


と言うわけでエリカは真撰組の屯所の前に居た。

…が、

そういえば…地味な人の名前知らないんだった…

どうしよう…

頭を抱えて彷徨く様は見るからに不審者だ

真撰組の隊士の目に留まらない筈もなく…

『アンタ、さっきからなにしてやがる』
スキンヘッドの怖い顔に捕まった

『あ、怪しい者ではありません!先日爆破に捲き込まれた地味な人に用があったんですけど名前がわからなくて!』

『山崎に?』

あ、地味な人で通じた…

『…此処で待ってろ』

言われた通り待つこと数分、スキンヘッドの人と一緒に地味な人…山崎さんがやって来た


『なに?なんなの?俺、今日は非番なのに忙しいんですよコレでも〜』
ズルズルと引きずられるように連れてこられた上に乱暴に私の前に投げ出された

手には何故かミントンのラケット

『…コンニチワ、結構お元気そうですね』

結構大きな爆発だったと思うのにあちこち絆創膏を貼っているくらい

ひどい箇所と言えば…

アフロになってしまった頭


『アレ、君は…たしか…』

『先日は…その…、ご迷惑お掛けしました』

エリカは深々と頭を下げた

『いや、あれは君が悪い訳ではないから!俺なんて全然平気だし!アレくらいの爆撃なら慣れてるから…って、それより場所変えませんか?』

皆の視線が痛すぎる…

そう呟いた山崎さんの背中を睨む数人の隊士がいた


女ッ気がない真撰組
女の子がこうして屯所にやって来たのが物珍しいのと、なりゆきとはいえ目当ての男が俺っていうのが…

あの鋭い視線の訳らしい。

手入れを施された庭を一望できる縁側に案内された。

『立派なお庭ですね〜、広いし』

『そうなんだ。ミントンするにも十分な広さだし、君がくる前もミントンしてたんだ』

『……相手の方は?』
見渡しても庭に誰か居る様子はない

『………』
返事はない

『もしかして…ひとりで?』

気まずそうに頷いた山崎さん


……かわいそうな人。

『ちょっとォッ!なにその痛々しいものを見るような目は!』

『すいません、なんか酷いこと聞いちゃって』

『なんかその言葉、凹むよ…』

そんな可哀想な山崎さんに同情して一緒にミントンをしてあげることにした

生き生きとラケットを振るう山崎さんは地味なりに輝いていた
(だからね、地味は余計だよ)


『ギャッ!また負けたぁ〜!ちょっとは手加減してくださいよ』

落ちた羽根を拾うのはもう何度目だろう

『ハハハッ、これでも手加減してるんだけどなぁ』

コレには少々カチンときた

付き合ってあげてる筈がエリカは次第に本気モード突入

全力でサーブを打ち込んだ


『薄ピンクの水玉…、何でェ色気がないねィ』

抑揚の無い声が背後から聞こえた。

振り返ればいつから居たのかアイマスクを額に装着したままの…

『沖田…サン』

パンツの柄を当てられた
短い丈の着物来てはしゃいでたのが悪かった…

『エリカ、俺とアンタの仲じゃねェか、総悟でいいんだぜィ』

『え!?隊長の彼女だったの!?』

『違います、私たちなんの関係もないよね、総悟くん?』

『まだ、ね。そのうち苛められて悦ぶメス豚に調教してやりまさァ』

『お断りよ!!』

『そんなことより…』
総悟くんはおもむろに立ち上がり大きく伸びをした。
そして私たちの間をすり抜け縁側に向かった。

そして私のバックの前で立ち止まり…

『ここからイイ匂いがする』
そう言って中身を漁り出した。

『ちょっと何してんよ!乙女のバック漁るなッ!!』
勢いよく取り返したバック

しかし彼の手にはかわいい感じの紙袋が

忘れてたけど、山崎さんへのお詫びの印に焼いたパウンドケーキが入った紙袋だ

てゆうか…
嗅覚、犬並み?
それ、そんな匂いました?


『それ、山崎さんにあげようかとしてた…パウンドケーキで…』

『え!?俺に!?』
驚いた山崎さんの頬は心なしか赤い

『嬉しいなぁ〜、手作りのお菓子なんて初めて貰うよ〜』

そんなに喜んで貰えたら作った甲斐があるってもんだ

『あんまり綺麗に焼けなかったんですけどね』

紙袋を返してもらおうと総悟くんに目をやると…

『…俺ァもう少し甘くてもいいんですがねィ』
私の焼いたケーキを頬張っていた

『『あああああぁーッ!』』

奪い返した紙袋の中にはもうケーキは無かった

『ひどいですよ!俺の為に作ってくれたんですよーッ!ひと切れくらい残してくれたって…』

涙ぐんでいるようにも見える山崎さんは総悟くんに詰め寄っていた

『ザキが手作りお菓子なんて生意気だろーが』
まだ口をモゴモゴさせながら理不尽な事を言って退けた

初めて会ったときから薄々思ってたけど…

総悟くんって…


『エリカ』
不意に呼ばれて振り向けば

口の回りにケーキの欠片を付けながら、真剣な顔でまっすぐ私を見つめてこう言った。

『今度は誰のためでもなく俺の為に作って来なせェ』

…ちょっとドキッとしちゃったなんて言えやしないわ

部屋に戻っていく後ろ姿を見つめていたら彼が急に立ち止まった。

『あと…』
振り返った総悟くんはニッコリ笑ってこう言った。

『俺ァ、下着は黒い方が好きでさァ』

『………』


マイペースで自分勝手で…
手に負えない人

彼は気になる暴君



『山崎さん、また今度作ってきますから元気出して』

『ほんと!?』

『はい』

『ミントンも!?』

『………はい』

『じゃあ今日は帰りますね、お大事に』

手をふってエリカは真撰組の屯所を後にした


エリカを見送る山崎はいつになくご機嫌だった

お菓子も嬉しいんだけど、一緒にミントンをしてくれたことが何より嬉しかった。

『エリカちゃん、いい子だなぁ』

お菓子は隊長に全部食べられてしまったけど…きっとおいしかったんだろうなぁ

想像してニヤけた山崎の耳に聞きなれた音が聞こえた

…ジャカッ

『何、にやけてんでィ』


屯所ではまた爆音が響き
山崎はまたしばらくアフロで過ごす羽目になったそうだ。






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