犠牲

ガツン、ガツン…

辺りに堅いものを殴り付けるような音が響く

エリカと総悟の二人が鎖を壊そうとコンクリートの破片を打ち付けている音だ

自愚蔵の言うことなんて信用していなかったエリカだけれど総悟の深刻そうな面持ちに冗談なんかで片付けられない事態だと感じてしまった


この鎖は本当に壊れるのかな
さっきからずっと打ち付けているにも関わらず一向に壊れる気配はない

壊れなかったら、どうなるんだろう…
このまま、朝を迎えたら…

(タイムリミットは夜明け、屯所の爆弾は朝の6時にドカンと爆発する)
(沖田くんが彼女から離れると…ドカン)。

自愚蔵の言葉が脳裏に浮かびエリカの手は止まった

『休んでる暇はねェぜ、手を動かしな』
総悟は動きを止めず静かに言った

暗くてよく見えないけれど彼は眉ひとつ動かさない冷静さ、このような危機的状況に慣れているからなのだろうか

エリカはそうはいかない
不安は時が経つ程に募っていく

『こんなことで、壊れるかな』
繰り返される作業についこぼした

総悟は何も答えずただ、作業を続けていた

『…』
総悟くんは不安じゃ無いのかな
どうしてこんなに冷静なんだろう

夜明けまであと何時間あるんだろう
あたしたちは、助かるんだろうか
真選組のみんなは、助かるんだろうか

頭の中で繰り返される問答
そして行き着いたネガティブな発想

もし、この鎖が壊れなかったら…
そしてそのまま朝を迎えることになったら…

近藤さんや土方さん、山崎さん、それにほかのみなさんも…
みんな死んでしまうのかもしれない

そして脳裏に浮かんだ総悟の姉、ミツバの眠る姿
彼女を失って打ちひしがれる彼の姿

このまま朝を迎えることになったら、また彼に大切な人を失う悲しみを背負わせてしまうことになるんだ

…そんな想い、もうさせたくないよ

『エリカ…泣いてんのかィ?』
ここへ来て初めて総悟の手が止まった

『…総悟くん、あたしのお願い聞いてくれる?』

多分、最初で最後のお願いになるね

返事はない
エリカは構わず口を開いた


『あたしの方は自分で何とかするから、総悟くんは屯所に行って』
勇気を出して振り絞ったひとことだった

総悟が自分を置いて屯所へ行くと言うことが何を意味するか
それがわからないほどバカじゃない

死ぬのは当然、怖いんだ

だけど
総悟が大事な人を失って悲しむ姿を見るのはもっと堪えられない

それならば
あたしが犠牲になればいい

あたしの命ひとつでみんなが助かるなら

精一杯の強がりガツン、ガツン…

辺りに堅いものを殴り付けるような音が響く

エリカと総悟の二人が鎖を壊そうとコンクリートの破片を打ち付けている音だ

自愚蔵の言うことなんて信用していなかったエリカだけれど総悟の深刻そうな面持ちに冗談なんかで片付けられない事態だと感じてしまった


この鎖は本当に壊れるのかな
さっきからずっと打ち付けているにも関わらず一向に壊れる気配はない

壊れなかったら、どうなるんだろう…
このまま、朝を迎えたら…

(タイムリミットは夜明け、屯所の爆弾は朝の6時にドカンと爆発する)
(沖田くんが彼女から離れると…ドカン)。

自愚蔵の言葉が脳裏に浮かびエリカの手は止まった

『休んでる暇はねェぜ、手を動かしな』
総悟は動きを止めず静かに言った

暗くてよく見えないけれど彼は眉ひとつ動かさない冷静さ、このような危機的状況に慣れているからなのだろうか

エリカはそうはいかない
不安は時が経つ程に募っていく

『こんなことで、壊れるかな』
繰り返される作業についこぼした

総悟は何も答えずただ、作業を続けていた

『…』
総悟くんは不安じゃ無いのかな
どうしてこんなに冷静なんだろう

夜明けまであと何時間あるんだろう
あたしたちは、助かるんだろうか
真選組のみんなは、助かるんだろうか

頭の中で繰り返される問答
そして行き着いたネガティブな発想

もし、この鎖が壊れなかったら…
そしてそのまま朝を迎えることになったら…

近藤さんや土方さん、山崎さん、それにほかのみなさんも…
みんな死んでしまうのかもしれない

そして脳裏に浮かんだ総悟の姉、ミツバの眠る姿
彼女を失って打ちひしがれる彼の姿

このまま朝を迎えることになったら、また彼に大切な人を失う悲しみを背負わせてしまうことになるんだ

…そんな想い、もうさせたくないよ

『エリカ…泣いてんのかィ?』
ここへ来て初めて総悟の手が止まった

『…総悟くん、あたしのお願い聞いてくれる?』

多分、最初で最後のお願いになるね

返事はない
エリカは構わず口を開いた


『あたしの方は自分で何とかするから、総悟くんは屯所に行って』
勇気を出して振り絞ったひとことだった

総悟が自分を置いて屯所へ行くと言うことが何を意味するか
それがわからないほどバカじゃない

死ぬのは当然、怖いんだ

だけど
総悟が大事な人を失って悲しむ姿を見るのはもっと堪えられない

それならば
あたしが犠牲になればいい

あたしの命ひとつでみんなが助かるなら

精一杯の強がり


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