一寸先は

『さすが沖田さん、情報が早いですね!』

『真選組の情報網なめんじゃねぇや』

その情報源はきっと、いや、絶対に山崎さん
あたしってもしかして見張られてる?

その質問に総悟くんは『たまたまでさァ』と答えるだけだった

そうピシャリと言われては言い返すことはできずエリカは押し黙った

『それにしても、色恋沙汰で浮かれたなんだするたぁエリカもしっかり女だったんですねィ』

その物言いには多少カチンと来た
総悟くんの憎まれ口にはなれていたはずなのに、今の一言にはトゲを感じたような気がして

『失礼ね!あたしは筋金入りの女のコです!それに浮かれてなんか無いから!』

強く言い返して見たものの真っ直ぐに見つめられて何故かいたたまれなくなり、言葉に力もなくなって

『そりゃ好きだって言ってもらえたのは嬉しかったけど…』
言い訳じみた言葉も飛び出す始末

そんな弱気なあたしに憎まれ口のひとつやふたつ返ってくるかと思ったのに

『…………』
なにか考え込むようにうつむいたら総悟くん

どうしたんだろ
なんか、調子狂うんですけど

『せっかくですから沖田さんもいっしょにいかがですか?』
呆けているあたしの横で新八くんが総悟くんを誘っていた

『作ってくれるのはエリカさんですから僕が誘うのはおかしな話ですが…』
ハハハと笑う新八くん
それと向かい合う総悟くんは何を思っているのかわからない、無表情で

『作るっていっても何てこと無いカレーなんだけど…』
どうせなら、好きなあなたにも食べてもらいたい、とは言えないけど

『俺ァまだ仕事残ってるんでさァ、だから残念だけど…』

らしくない
そう思ったのはあたしだけじゃない筈だ
隣で新八くんも開いた口が塞がらないといった状態

ゆっくりと気だるそうに歩いていく後ろ姿が見えなくなるまであたしたちはその場から動けずに立ち尽くしていた



『『『ごちそうさまでした!』』』
綺麗に平らげられたお皿と同時に上がった声

『美味しかったアル!』

いつもなら言われて嬉しい言葉でも今のエリカには右から左に通り抜けていく

『…エリカ?どうかしたアルか?』
心配そうな神楽ちゃんの声にふと我に返る

神楽ちゃんどころか銀さんも新八くんも自分を見ていた

『具合でも悪いアルか?』
『ううん!全然元気だよ〜』

そういっても訝しげに見つめてくる三人にあたしは
『あー…ちょっと寝不足だったかな〜』なんて適当な嘘をついてしまった

『新八、今日はもういいからエリカちゃん送ってやれ』
『え、でもまだ片付けが…』
『これくらい俺がやっとくから。疲れてんなら無理することないんだぜ?』

銀さんにまで気を使わせてしまった
疲れてる訳ではなかったけれど頭は気になることでパンク寸前
これ以上心配かけるわけにはいかなくてあたしはお言葉に甘えて帰ることにした


『めし、ごちそーさん。気をつけて帰れよ〜』
『新八!しっかり送り届けるアルヨ!エリカ、オヤスミヨ、いい夢見るアル』

二人に見送られあたしと新八くんは家路についた

3月末
雪は溶け、春の息吹が感じられはするもののまだ夜は寒い

『新八くん、ここでいいよ。送ってくれてありがと』

『え、大丈夫ですか?』

『うん』
角を曲がればアパートが見えてくるところだ

『じゃあ新八くんも気を付けて帰ってね』
新八くんの後ろ姿を見送ってからきびすを返し家に向かう

空には綺麗な月が浮かんでいてふと足を止めてしまった

その直後
何が起こったのか頭がついていかない、それくらい突然の出来事

視界から月が消えて真っ黒な壁が移り込んだ

間もなく自分が人通りの少ない路地裏に引きずり込まれたということを理解した
羽交い締めにされ身動きが取れない

これは、もしかして
絶体絶命な状況ではないですか?

声を上げ助けを呼ぼうとするが、それより背後の何者かの行動が早かった

口許に布が当てられた

ドラマとかで観たことがある、こんなシーン
吸い込んだら気を失ってしまう薬品が仕込まれてる筈だ

頭ではわかっていても生理現象を止めることは出来ず


あたしは
気を失った


一寸先は闇
『さすが沖田さん、情報が早いですね!』

『真選組の情報網なめんじゃねぇや』

その情報源はきっと、いや、絶対に山崎さん
あたしってもしかして見張られてる?

その質問に総悟くんは『たまたまでさァ』と答えるだけだった

そうピシャリと言われては言い返すことはできずエリカは押し黙った

『それにしても、色恋沙汰で浮かれたなんだするたぁエリカもしっかり女だったんですねィ』

その物言いには多少カチンと来た
総悟くんの憎まれ口にはなれていたはずなのに、今の一言にはトゲを感じたような気がして

『失礼ね!あたしは筋金入りの女のコです!それに浮かれてなんか無いから!』

強く言い返して見たものの真っ直ぐに見つめられて何故かいたたまれなくなり、言葉に力もなくなって

『そりゃ好きだって言ってもらえたのは嬉しかったけど…』
言い訳じみた言葉も飛び出す始末

そんな弱気なあたしに憎まれ口のひとつやふたつ返ってくるかと思ったのに

『…………』
なにか考え込むようにうつむいたら総悟くん

どうしたんだろ
なんか、調子狂うんですけど

『せっかくですから沖田さんもいっしょにいかがですか?』
呆けているあたしの横で新八くんが総悟くんを誘っていた

『作ってくれるのはエリカさんですから僕が誘うのはおかしな話ですが…』
ハハハと笑う新八くん
それと向かい合う総悟くんは何を思っているのかわからない、無表情で

『作るっていっても何てこと無いカレーなんだけど…』
どうせなら、好きなあなたにも食べてもらいたい、とは言えないけど

『俺ァまだ仕事残ってるんでさァ、だから残念だけど…』

らしくない
そう思ったのはあたしだけじゃない筈だ
隣で新八くんも開いた口が塞がらないといった状態

ゆっくりと気だるそうに歩いていく後ろ姿が見えなくなるまであたしたちはその場から動けずに立ち尽くしていた



『『『ごちそうさまでした!』』』
綺麗に平らげられたお皿と同時に上がった声

『美味しかったアル!』

いつもなら言われて嬉しい言葉でも今のエリカには右から左に通り抜けていく

『…エリカ?どうかしたアルか?』
心配そうな神楽ちゃんの声にふと我に返る

神楽ちゃんどころか銀さんも新八くんも自分を見ていた

『具合でも悪いアルか?』
『ううん!全然元気だよ〜』

そういっても訝しげに見つめてくる三人にあたしは
『あー…ちょっと寝不足だったかな〜』なんて適当な嘘をついてしまった

『新八、今日はもういいからエリカちゃん送ってやれ』
『え、でもまだ片付けが…』
『これくらい俺がやっとくから。疲れてんなら無理することないんだぜ?』

銀さんにまで気を使わせてしまった
疲れてる訳ではなかったけれど頭は気になることでパンク寸前
これ以上心配かけるわけにはいかなくてあたしはお言葉に甘えて帰ることにした


『めし、ごちそーさん。気をつけて帰れよ〜』
『新八!しっかり送り届けるアルヨ!エリカ、オヤスミヨ、いい夢見るアル』

二人に見送られあたしと新八くんは家路についた

3月末
雪は溶け、春の息吹が感じられはするもののまだ夜は寒い

『新八くん、ここでいいよ。送ってくれてありがと』

『え、大丈夫ですか?』

『うん』
角を曲がればアパートが見えてくるところだ

『じゃあ新八くんも気を付けて帰ってね』
新八くんの後ろ姿を見送ってからきびすを返し家に向かう

空には綺麗な月が浮かんでいてふと足を止めてしまった

その直後
何が起こったのか頭がついていかない、それくらい突然の出来事

視界から月が消えて真っ黒な壁が移り込んだ

間もなく自分が人通りの少ない路地裏に引きずり込まれたということを理解した
羽交い締めにされ身動きが取れない

これは、もしかして
絶体絶命な状況ではないですか?

声を上げ助けを呼ぼうとするが、それより背後の何者かの行動が早かった

口許に布が当てられた

ドラマとかで観たことがある、こんなシーン
吸い込んだら気を失ってしまう薬品が仕込まれてる筈だ

頭ではわかっていても生理現象を止めることは出来ず


あたしは
気を失った


一寸先は闇



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