悩める男の子

『江戸随一の女殺しと唱われる旦那に相談が』

『なに、馬鹿にしてんの?そんな二つ名生まれてこの方呼ばれたことねェよ』

季節は3月
街はどこもかしこもホワイトデーだなんだと浮かれている

馬鹿馬鹿しいとか思いながら、自分もちょっとばかしソワソワしてたりする
エリカへのお返しだ

『何が喜ぶと思いやすか?』

『さぁね』
万事屋のソファに座る俺なんかお構い無しに旦那はジャンプのページをめくっていく

『真面目に考えてくだせェよ、お宅万事屋でしょう、依頼人を無下にしちゃあいけませんぜ』
『依頼人だぁ?万事屋は困ってるひとを無償の愛で救うヒーローとは違うの。有償なの、報酬で動くの、わかる?』
『コレなら動いてくれますか』

テーブルの上に置いた小綺麗な箱
江戸で一番人気のケーキ屋さん『浪漫亭』のケーキ詰め合わせだ

『で、用件はなんだったかな?沖田くん』
ジャンプを脇に置き姿勢を正す万事屋の旦那

旦那を動かすなんざチョロいもんだぜ


『女子なら花とか甘いもんで喜ぶんじゃねーの?』
『甘いもんて旦那じゃねェんですから』
『いやいや、世の中の女子は大抵は甘いもん好きだって』
『まぁそうかもしれませんが…それよりなによりベタでさァ、ありきたりでつまんねぇ』

『…じゃあ何?俺はどうしたらいいのさ』
『リサーチ、お願いしやす』

『…はぁ』
この上ないほどに面倒くさそうな顔をした旦那

仕方ねぇだろ
どうせなら欲しがってるモノをあげたいじゃねェですか
喜ぶ顔がみたいじゃねェですか

『沖田くんもなんやかんやフツーの男の子と変わらんねぇ』
そう呟きながら旦那はケーキを食べ始めた


その晩のこと

スナックお登勢の戸を開ければ満面の笑顔で迎えてくれたエリカちゃん

『金はあんのかい?ただ酒は御免だよ』
ババアの湿気た面とは月とスッポンだよホント

『誰がスッポンだこらァッ!』
思わず溢した心の声にババアの鉄拳を食らった…なんてことはさておき、

『エリカちゃーん』
『はーい、銀さん何飲みます?』

隣に腰掛けながら空いたグラスに直ぐに気がつく気配り屋

そんな沖田くんには勿体無い可愛い女のコが欲しがってるもんをリサーチしなきゃならねぇ

正直アイツの為に動かなきゃならないこと事態面白くないわけだけど

[浪漫亭]のうまいケーキ分の働きはさせていただきましょうかね

『エリカちゃん、今欲しいものある?』
『え…急になんですか?』
『いや別に何となく…、で、なんか無いの?』

腑に落ちない、そんな顔で俺を見つめていたエリカちゃんはやがて考え込むように僅かにうつ向いた

そして閃いたように瞳を輝かせてひとこと
『もしかしてホワイトデーのお返しで悩んでるとか?』

ギクッ…

『そうでしょ、そういやもうすぐだもんね』
『あぁ、まあなんかそんなとこ…』

この季節にこんな質問
バレて当然か

『う〜ん、そうだなぁ。やっぱり酢こんぶかなぁ』

『…は?』
…エリカちゃんがうちの大食い娘とおんなじことを言いやがった

なに?今酢こんぶ流行ってんの?

『あ、でもあの子は意外と可愛いの好きかもしれないからぬいぐるみとか…』

『…は?』
…あの子って?…ぬいぐるみ?

放心している俺を不思議そうに覗き込むエリカちゃん
『…神楽ちゃんへのお返し、じゃないの?』

『…え?…あ、そうそうそうなんだよね〜』

まさか沖田くんに頼まれてエリカちゃんの欲しいもん聞きに来た、とは言えない

もうどうにでもなれコノヤロー

『何を選んでも銀さんがこうやって悩んで選んだものなら神楽ちゃんきっと喜んでくれますよ』

『…そうゆうもん?』

『そうですよ、相手のことを考えて選んできてくれたものなら嬉しいですよ、それだけ自分のことを考えてくれたんだな〜って』

それ、そっくりそのまま伝えさせて戴きます


『要するに収穫ゼロってことですかィ』

『いや、十分な収穫あったろーが!沖田くんがエリカちゃんのことを考えて選んだものなら喜ぶって本人が言ってたんだから』

『…なんか腑に落ちねぇんですけど』

なんやかんやいっても

ホワイトデーはもう間近
『江戸随一の女殺しと唱われる旦那に相談が』

『なに、馬鹿にしてんの?そんな二つ名生まれてこの方呼ばれたことねェよ』

季節は3月
街はどこもかしこもホワイトデーだなんだと浮かれている

馬鹿馬鹿しいとか思いながら、自分もちょっとばかしソワソワしてたりする
エリカへのお返しだ

『何が喜ぶと思いやすか?』

『さぁね』
万事屋のソファに座る俺なんかお構い無しに旦那はジャンプのページをめくっていく

『真面目に考えてくだせェよ、お宅万事屋でしょう、依頼人を無下にしちゃあいけませんぜ』
『依頼人だぁ?万事屋は困ってるひとを無償の愛で救うヒーローとは違うの。有償なの、報酬で動くの、わかる?』
『コレなら動いてくれますか』

テーブルの上に置いた小綺麗な箱
江戸で一番人気のケーキ屋さん『浪漫亭』のケーキ詰め合わせだ

『で、用件はなんだったかな?沖田くん』
ジャンプを脇に置き姿勢を正す万事屋の旦那

旦那を動かすなんざチョロいもんだぜ


『女子なら花とか甘いもんで喜ぶんじゃねーの?』
『甘いもんて旦那じゃねェんですから』
『いやいや、世の中の女子は大抵は甘いもん好きだって』
『まぁそうかもしれませんが…それよりなによりベタでさァ、ありきたりでつまんねぇ』

『…じゃあ何?俺はどうしたらいいのさ』
『リサーチ、お願いしやす』

『…はぁ』
この上ないほどに面倒くさそうな顔をした旦那

仕方ねぇだろ
どうせなら欲しがってるモノをあげたいじゃねェですか
喜ぶ顔がみたいじゃねェですか

『沖田くんもなんやかんやフツーの男の子と変わらんねぇ』
そう呟きながら旦那はケーキを食べ始めた


その晩のこと

スナックお登勢の戸を開ければ満面の笑顔で迎えてくれたエリカちゃん

『金はあんのかい?ただ酒は御免だよ』
ババアの湿気た面とは月とスッポンだよホント

『誰がスッポンだこらァッ!』
思わず溢した心の声にババアの鉄拳を食らった…なんてことはさておき、

『エリカちゃーん』
『はーい、銀さん何飲みます?』

隣に腰掛けながら空いたグラスに直ぐに気がつく気配り屋

そんな沖田くんには勿体無い可愛い女のコが欲しがってるもんをリサーチしなきゃならねぇ

正直アイツの為に動かなきゃならないこと事態面白くないわけだけど

[浪漫亭]のうまいケーキ分の働きはさせていただきましょうかね

『エリカちゃん、今欲しいものある?』
『え…急になんですか?』
『いや別に何となく…、で、なんか無いの?』

腑に落ちない、そんな顔で俺を見つめていたエリカちゃんはやがて考え込むように僅かにうつ向いた

そして閃いたように瞳を輝かせてひとこと
『もしかしてホワイトデーのお返しで悩んでるとか?』

ギクッ…

『そうでしょ、そういやもうすぐだもんね』
『あぁ、まあなんかそんなとこ…』

この季節にこんな質問
バレて当然か

『う〜ん、そうだなぁ。やっぱり酢こんぶかなぁ』

『…は?』
…エリカちゃんがうちの大食い娘とおんなじことを言いやがった

なに?今酢こんぶ流行ってんの?

『あ、でもあの子は意外と可愛いの好きかもしれないからぬいぐるみとか…』

『…は?』
…あの子って?…ぬいぐるみ?

放心している俺を不思議そうに覗き込むエリカちゃん
『…神楽ちゃんへのお返し、じゃないの?』

『…え?…あ、そうそうそうなんだよね〜』

まさか沖田くんに頼まれてエリカちゃんの欲しいもん聞きに来た、とは言えない

もうどうにでもなれコノヤロー

『何を選んでも銀さんがこうやって悩んで選んだものなら神楽ちゃんきっと喜んでくれますよ』

『…そうゆうもん?』

『そうですよ、相手のことを考えて選んできてくれたものなら嬉しいですよ、それだけ自分のことを考えてくれたんだな〜って』

それ、そっくりそのまま伝えさせて戴きます


『要するに収穫ゼロってことですかィ』

『いや、十分な収穫あったろーが!沖田くんがエリカちゃんのことを考えて選んだものなら喜ぶって本人が言ってたんだから』

『…なんか腑に落ちねぇんですけど』

なんやかんやいっても

ホワイトデーはもう間近



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