バナナと涙と男と女

『玉子焼き?』

目の前の皿に乗る物体をそう呼ぶには…

あまりに黒い。

『エリカちゃんに食べてもらいたくて腕によりをかけて作ったのよ』

天使のような微笑みで恐ろしい物を差し出してくるお妙ちゃん

噂には聞いていたけど…
ダークマターとは良く言ったものだ。

『さぁ、たくさん食べてちょうだい』

志村家の食卓を前にエリカは…、というか呼ばれていた万事屋の面々も生唾をのんだ

まがまがしい其れに恐る恐る箸を伸ばすエリカに新八が

『無理に食べなくていいですよ…、僕のように目が悪くなりますよ』

え…これ、劇薬か何か?
卵焼きを作ろうとしてそんな危険物作れちゃうの?

お妙ちゃん、…凄いです


『ハッハッハ!どうしたみんな、全然箸が進んでいないじゃないか!』

豪快な笑い声に顔を上げれば向かいに新撰組の制服を着た…男の人が座っていた。

見た目は悪くない、顎の髭もワイルドで素敵かもとは思うんだけど…

なんでだろう、素直にカッコいいと言えない…

『こんのゴリラストーカーァアアッ!なに当たり前のように座ってやがるッ!』

『グふゥッ!』
お妙ちゃんの鉄拳が見事にヒットしてエリカの横に倒れこんだ

男の腫れた顔を見てたら気づいてしまった。
…そうだ。なんとなくゴリラに似てるんだ


『仕事サボってストーカーですか、ケーサツも暇なんだな』
耳を小指でほじくりながら銀さんが言った

ほんと、めんどくさそうに

『何を言うか!立派な職務だ、お妙さんの身辺警護という…』

『頼んでねェーんだよ!!』

お妙ちゃんの鉄拳が男の顔面にクリーンヒット

塀の外まで吹っ飛んで行きました

結構庭広いのに…お妙ちゃん凄いです

『近藤さんも懲りないですね、あんだけされても諦めないなんて…』
ため息まじりの新八くん

『警察がストーカーとは、世も末だな』

『…でも、無茶苦茶愛されてるってことだよね』
ポジティブに考えれば…だけど。

『なに、エリカちゃん。あなたも殴られたいのかしら?』
指をバキバキ鳴らしながら笑顔で言われた。

否定の言葉は恐怖で声にならずとにかく首を横に振りまくるしかなかった。


[スナックお登勢]の出勤時間も迫っていたのでエリカは皆よりひと足早く志村家を後にした。


大分ゆっくりしちゃったな、急いで準備しなきゃ

足早に家路に着いたエリカは間もなくすすり泣く男の声を聞いた


『くっ…、泣くな、勲。お妙さんの鉄拳は愛情の裏返しなんだ、恥ずかしがってるだけなんだ…ッ』

電柱の根本に踞りブツブツ呟くゴリラ…じゃなくて大男

腫らした顔には涙が流れていた

大の男が女に殴られ泣いちゃってる痛々しい現場を目撃してしまった…

大きな背中が小さく見えるほど縮こまってメソメソ泣いてる男

なんだかほっとけなくて気づけば声を掛けていた



勲、少し動揺してます!
お妙さんの他にも女神のような女性がいたなんて…

『えっと…近藤さん?あの…元気だしてください』

肩を叩かれ涙でぐしゃぐしゃなまま振り返れば茜色の夕焼けに負けない華やかな笑顔の一人の女性が立っていた

『あ…貴女は…』
…さっきお妙さんの家に居ましたね

『エリカっていいます、辛いのは解るけど…泣いてばかりじゃ幸せ逃げちゃいますよ』

勲を慰めてくれるんですか!?
驚いて声も出なかった

普通こんなメソメソ泣いてるケツ毛だるまがいたら素通りするだろうよ

なのにエリカさんったら…
声を掛けてくれた上に慰めてくれた

…あ、近藤さん、嬉しくて涙が…


『あの、良かったらコレどうぞ。じゃあ、わたし、急いでるんで』

彼女は何かを渡すと足早に立ち去ってしまった

優しい人がいるもんだな…

ほくほくしたぬくもりが胸を包み込む

ありがとう、エリカさん

そして受け取ってしまった其れを目にした勲の目からは一筋の涙が流れた


『エリカさん…、ここはハンカチで良くないですか』


勲の手のなかには

幸せの黄色いバナナ


『玉子焼き?』

目の前の皿に乗る物体をそう呼ぶには…

あまりに黒い。

『エリカちゃんに食べてもらいたくて腕によりをかけて作ったのよ』

天使のような微笑みで恐ろしい物を差し出してくるお妙ちゃん

噂には聞いていたけど…
ダークマターとは良く言ったものだ。

『さぁ、たくさん食べてちょうだい』

志村家の食卓を前にエリカは…、というか呼ばれていた万事屋の面々も生唾をのんだ

まがまがしい其れに恐る恐る箸を伸ばすエリカに新八が

『無理に食べなくていいですよ…、僕のように目が悪くなりますよ』

え…これ、劇薬か何か?
卵焼きを作ろうとしてそんな危険物作れちゃうの?

お妙ちゃん、…凄いです


『ハッハッハ!どうしたみんな、全然箸が進んでいないじゃないか!』

豪快な笑い声に顔を上げれば向かいに新撰組の制服を着た…男の人が座っていた。

見た目は悪くない、顎の髭もワイルドで素敵かもとは思うんだけど…

なんでだろう、素直にカッコいいと言えない…

『こんのゴリラストーカーァアアッ!なに当たり前のように座ってやがるッ!』

『グふゥッ!』
お妙ちゃんの鉄拳が見事にヒットしてエリカの横に倒れこんだ

男の腫れた顔を見てたら気づいてしまった。
…そうだ。なんとなくゴリラに似てるんだ


『仕事サボってストーカーですか、ケーサツも暇なんだな』
耳を小指でほじくりながら銀さんが言った

ほんと、めんどくさそうに

『何を言うか!立派な職務だ、お妙さんの身辺警護という…』

『頼んでねェーんだよ!!』

お妙ちゃんの鉄拳が男の顔面にクリーンヒット

塀の外まで吹っ飛んで行きました

結構庭広いのに…お妙ちゃん凄いです

『近藤さんも懲りないですね、あんだけされても諦めないなんて…』
ため息まじりの新八くん

『警察がストーカーとは、世も末だな』

『…でも、無茶苦茶愛されてるってことだよね』
ポジティブに考えれば…だけど。

『なに、エリカちゃん。あなたも殴られたいのかしら?』
指をバキバキ鳴らしながら笑顔で言われた。

否定の言葉は恐怖で声にならずとにかく首を横に振りまくるしかなかった。


[スナックお登勢]の出勤時間も迫っていたのでエリカは皆よりひと足早く志村家を後にした。


大分ゆっくりしちゃったな、急いで準備しなきゃ

足早に家路に着いたエリカは間もなくすすり泣く男の声を聞いた


『くっ…、泣くな、勲。お妙さんの鉄拳は愛情の裏返しなんだ、恥ずかしがってるだけなんだ…ッ』

電柱の根本に踞りブツブツ呟くゴリラ…じゃなくて大男

腫らした顔には涙が流れていた

大の男が女に殴られ泣いちゃってる痛々しい現場を目撃してしまった…

大きな背中が小さく見えるほど縮こまってメソメソ泣いてる男

なんだかほっとけなくて気づけば声を掛けていた



勲、少し動揺してます!
お妙さんの他にも女神のような女性がいたなんて…

『えっと…近藤さん?あの…元気だしてください』

肩を叩かれ涙でぐしゃぐしゃなまま振り返れば茜色の夕焼けに負けない華やかな笑顔の一人の女性が立っていた

『あ…貴女は…』
…さっきお妙さんの家に居ましたね

『エリカっていいます、辛いのは解るけど…泣いてばかりじゃ幸せ逃げちゃいますよ』

勲を慰めてくれるんですか!?
驚いて声も出なかった

普通こんなメソメソ泣いてるケツ毛だるまがいたら素通りするだろうよ

なのにエリカさんったら…
声を掛けてくれた上に慰めてくれた

…あ、近藤さん、嬉しくて涙が…


『あの、良かったらコレどうぞ。じゃあ、わたし、急いでるんで』

彼女は何かを渡すと足早に立ち去ってしまった

優しい人がいるもんだな…

ほくほくしたぬくもりが胸を包み込む

ありがとう、エリカさん

そして受け取ってしまった其れを目にした勲の目からは一筋の涙が流れた


『エリカさん…、ここはハンカチで良くないですか』


勲の手のなかには

幸せの黄色いバナナ





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