ずっと、ずっと

『送ってくれて、ありがとう』

エリカを乗せたパトカーはスナックお登勢の前で止まった

暖簾はもう出ている

エリカもすぐ店に出なきゃならないんだろう

でも別れるにはまだ少し名残惜しい

別れの言葉を切り出せない代わりに

『そんな顔で働く気かィ』

そんな憎まれ口しか出てこないこの口が憎たらしい

『…アハハ、あたしそんなヒドイ顔してる?』

真っ赤に腫らした目を細めてエリカは笑う

『近藤さんが姐さんにフラれて泣き晴らしたときと同じ目してまさァ』

近藤さんときたら
いつもあんなに泣いてるのかと思うとちょっと切なくなる

本当に打たれ強い人だ


『大丈夫、ちょっと冷やしたら治まるから。それに最近休んでばっかりだったから…』
これ以上迷惑掛けられないよ

『そうか、真面目だねィ。俺なんか隙さえあれば直ぐ様脱け出してサボり倒してるぜィ』

それをみんなが気付いてるくせに見逃してくれてんのがわかるからなんか悔しい

腫れ物を障るみたいな

俺に接することにおそるおそるだ

だからエリカが拍子抜けするくらいいつも通りで

気が抜けた、いい意味で

『まぁ、テキトーに頑張りなせェ。また飲みに行きまさァ』

そう言うとエリカは笑った

『テキトーに頑張るって、なにその微妙な励まし!』

仕方ねぇ
頑張れって言葉は好きじゃねぇんだから

自分に無理して頑張って苦しむなんて馬鹿げてるだろ

『たまにサボるくらいがちょうどいいんでさァ』

『総悟くんはいつもサボってるじゃない』

違いねぇ


『じゃあ…あたし、行くね』
ドアノブに手をかけたエリカを呼び止めた

『…これ、受け取りなせェ』

エリカの手にあるものを握らせた

手のひらを見てエリカは目を丸くした

『…コレッ!?見つけてくれたの?』

『それは姉上が持ってたやつでさァ』

エリカがそれを無くしたことはすぐにわかった
病院に居たとき、ぼんやりとケータイを眺めていたのは疲れているからだと思っていた

けれどそのケータイからキーホルダーが無くなっていたことに気づくのにもそう時間はかからなかった

エリカはそれ以外にストラップは付けていなかったから

『無くしたんだろ、見つけてはやれないからこれでも付けてなせェ』

『こんな…、大事なもの、あたしなんかが受け取れないよ』

『いいんでさァ、アンタが持ってた方が姉上も喜ぶはずだ』

『総悟くん…』
エリカの目にはまた、涙が浮かんでた

そしてキュッとキーホルダーを握りしめて笑顔を見せてくれた
その瞳からは涙が零れていたけど


『ただ、約束してくだせェ』

『何を?』

『エリカは、どこにも行かないと約束してくだせェ』

もう、大事な人を誰一人として失いたくない

エリカなら尚更だ

気がつくと手に感じた温もり
エリカの手が重ねられていた

『約束するよ、あたしはどこにもいかない。どっかいけって言われたってどこにも行かないんだから!』

さっきまで泣いてた奴が、今度は俺を包み込むみたいに心強い

『破ったら、メス豚に調教してやるからな』

エリカの手を強く握り返した


この手はずっと離さない

『送ってくれて、ありがとう』

エリカを乗せたパトカーはスナックお登勢の前で止まった

暖簾はもう出ている

エリカもすぐ店に出なきゃならないんだろう

でも別れるにはまだ少し名残惜しい

別れの言葉を切り出せない代わりに

『そんな顔で働く気かィ』

そんな憎まれ口しか出てこないこの口が憎たらしい

『…アハハ、あたしそんなヒドイ顔してる?』

真っ赤に腫らした目を細めてエリカは笑う

『近藤さんが姐さんにフラれて泣き晴らしたときと同じ目してまさァ』

近藤さんときたら
いつもあんなに泣いてるのかと思うとちょっと切なくなる

本当に打たれ強い人だ


『大丈夫、ちょっと冷やしたら治まるから。それに最近休んでばっかりだったから…』
これ以上迷惑掛けられないよ

『そうか、真面目だねィ。俺なんか隙さえあれば直ぐ様脱け出してサボり倒してるぜィ』

それをみんなが気付いてるくせに見逃してくれてんのがわかるからなんか悔しい

腫れ物を障るみたいな

俺に接することにおそるおそるだ

だからエリカが拍子抜けするくらいいつも通りで

気が抜けた、いい意味で

『まぁ、テキトーに頑張りなせェ。また飲みに行きまさァ』

そう言うとエリカは笑った

『テキトーに頑張るって、なにその微妙な励まし!』

仕方ねぇ
頑張れって言葉は好きじゃねぇんだから

自分に無理して頑張って苦しむなんて馬鹿げてるだろ

『たまにサボるくらいがちょうどいいんでさァ』

『総悟くんはいつもサボってるじゃない』

違いねぇ


『じゃあ…あたし、行くね』
ドアノブに手をかけたエリカを呼び止めた

『…これ、受け取りなせェ』

エリカの手にあるものを握らせた

手のひらを見てエリカは目を丸くした

『…コレッ!?見つけてくれたの?』

『それは姉上が持ってたやつでさァ』

エリカがそれを無くしたことはすぐにわかった
病院に居たとき、ぼんやりとケータイを眺めていたのは疲れているからだと思っていた

けれどそのケータイからキーホルダーが無くなっていたことに気づくのにもそう時間はかからなかった

エリカはそれ以外にストラップは付けていなかったから

『無くしたんだろ、見つけてはやれないからこれでも付けてなせェ』

『こんな…、大事なもの、あたしなんかが受け取れないよ』

『いいんでさァ、アンタが持ってた方が姉上も喜ぶはずだ』

『総悟くん…』
エリカの目にはまた、涙が浮かんでた

そしてキュッとキーホルダーを握りしめて笑顔を見せてくれた
その瞳からは涙が零れていたけど


『ただ、約束してくだせェ』

『何を?』

『エリカは、どこにも行かないと約束してくだせェ』

もう、大事な人を誰一人として失いたくない

エリカなら尚更だ

気がつくと手に感じた温もり
エリカの手が重ねられていた

『約束するよ、あたしはどこにもいかない。どっかいけって言われたってどこにも行かないんだから!』

さっきまで泣いてた奴が、今度は俺を包み込むみたいに心強い

『破ったら、メス豚に調教してやるからな』

エリカの手を強く握り返した


この手はずっと離さない




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