止まない雨

『エリカ』

びしょ濡れのままうつ向き歩いていたら呼び止められた

また少し頬が赤くなっていた総悟くんに

…あ、もう病院に着いてたんだ

総悟くんと銀さんは病院を出るところだった

『どうした?びしょ濡れじゃん』
あたしの様子に銀さんはものすごーく驚いていた

『あはは、傘持たないまま飛び出しちゃって…』

あたし、ちゃんと笑えてる?

そんなことより二人はなんでここにいるの?
銀さんはヘルメットを被っているし

総悟くんの目がミツバさんを見つめていた時とは違う、真剣な目だった

…覚悟を、決めた
そんな雰囲気を感じた


『…何処かに、行くの?』

『仕事でさァ』

『こんな、時に…?』
あたしの言葉に総悟くんは黙って頷くだけ

『ミツバさんを一人にしちゃ…』

あたしの言葉はスクーターのエンジン音に阻まれた

『準備はいいよ、総一郎くん』
『総悟でさァ』

彼は銀さんの後ろに跨がった

『…行かなきゃならないんでィ、片を付けなきゃならねぇ』

総悟くんは覚悟をしている
何の覚悟かはわからないけど、それに対してあたしが何をとやかく言える?

無理だよ

自分の無力さに唇を噛み締めた

『だからエリカに頼みがある』

総悟くんが頼み事するなんて、初めてだった

『…うん、なぁに?』

『姉上の側に居てやってくだせェ、俺が戻るまで…』

『うん、分かった。側に居る。だから…』

雨足が少し強くなった

ザァザァという音で掻き消されないように大きな声で

『無事に帰って来てね!絶対だよ』

何となくだけど、危険な仕事なんだろうなと感じてた

だからこそ、約束してほしい
ミツバさんの為にも

あたしの個人的なお願いでもあるけど

必死なあたしを見て、総悟くんはフッと笑った

『善処してやらァ』

そう言い残して二人は雨の中、走り去った

その背中が見えなくなるまで見送るとあたしも病院へ入った

ミツバさんの元へ向かう途中、慌ただしい看護師さん数人とすれ違った

嫌な予感がした

足は自然と早くなっていた

嫌な予感は大抵当たる
息苦しい位、胸が締め付けられるような不安

どうか、杞憂であってほしい

『ご家族の方ですか』

深刻そうな看護師さん


悲しい知らせなら

聞きたくない聞きたくない


こんなときに頭に浮かぶのは
ミツバさんと楽しく過ごした日の事

楽しかったそれが
遠い昔のようで

もう懐かしいような気さえする

無情にも
看護師さんが告げた事実は

楽しかった日々がもう戻らないことを知らしめた


もう、二度と


あたしはどうやって立っているかもわからないくらい
何も考えられなかった

濡れた体が
どんどん冷たくなるような感覚だけは残っていた『エリカ』

びしょ濡れのままうつ向き歩いていたら呼び止められた

また少し頬が赤くなっていた総悟くんに

…あ、もう病院に着いてたんだ

総悟くんと銀さんは病院を出るところだった

『どうした?びしょ濡れじゃん』
あたしの様子に銀さんはものすごーく驚いていた

『あはは、傘持たないまま飛び出しちゃって…』

あたし、ちゃんと笑えてる?

そんなことより二人はなんでここにいるの?
銀さんはヘルメットを被っているし

総悟くんの目がミツバさんを見つめていた時とは違う、真剣な目だった

…覚悟を、決めた
そんな雰囲気を感じた


『…何処かに、行くの?』

『仕事でさァ』

『こんな、時に…?』
あたしの言葉に総悟くんは黙って頷くだけ

『ミツバさんを一人にしちゃ…』

あたしの言葉はスクーターのエンジン音に阻まれた

『準備はいいよ、総一郎くん』
『総悟でさァ』

彼は銀さんの後ろに跨がった

『…行かなきゃならないんでィ、片を付けなきゃならねぇ』

総悟くんは覚悟をしている
何の覚悟かはわからないけど、それに対してあたしが何をとやかく言える?

無理だよ

自分の無力さに唇を噛み締めた

『だからエリカに頼みがある』

総悟くんが頼み事するなんて、初めてだった

『…うん、なぁに?』

『姉上の側に居てやってくだせェ、俺が戻るまで…』

『うん、分かった。側に居る。だから…』

雨足が少し強くなった

ザァザァという音で掻き消されないように大きな声で

『無事に帰って来てね!絶対だよ』

何となくだけど、危険な仕事なんだろうなと感じてた

だからこそ、約束してほしい
ミツバさんの為にも

あたしの個人的なお願いでもあるけど

必死なあたしを見て、総悟くんはフッと笑った

『善処してやらァ』

そう言い残して二人は雨の中、走り去った

その背中が見えなくなるまで見送るとあたしも病院へ入った

ミツバさんの元へ向かう途中、慌ただしい看護師さん数人とすれ違った

嫌な予感がした

足は自然と早くなっていた

嫌な予感は大抵当たる
息苦しい位、胸が締め付けられるような不安

どうか、杞憂であってほしい

『ご家族の方ですか』

深刻そうな看護師さん


悲しい知らせなら

聞きたくない聞きたくない


こんなときに頭に浮かぶのは
ミツバさんと楽しく過ごした日の事

楽しかったそれが
遠い昔のようで

もう懐かしいような気さえする

無情にも
看護師さんが告げた事実は

楽しかった日々がもう戻らないことを知らしめた


もう、二度と


あたしはどうやって立っているかもわからないくらい
何も考えられなかった

濡れた体が
どんどん冷たくなるような感覚だけは残っていた


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