猩紅

夕焼け色に染まる町

真選組の屯所も鮮やかな橙色

その光があまり当たらない屯所の一角、道場でひとり竹刀を振るう影があった

気に食わねぇヤローの後ろ姿

『土方さん』
声をかけるとピタリと竹刀が止まった

『一手、ご教授願えますか』

振り返る男は近藤さんが一番信頼する男

そして

姉上が想いを寄せていた相手

もしかしたら…
今もまだ…


気に食わねぇ

気に食わねぇんだ
今も、昔も、あいつのことだけは…





頭の中が真っ白だった

会話の途中で急に苦しそうに咳き込みだしたミツバさんが真っ白なシーツを赤く染めた
『オイッ!大丈夫かッ!?』

隣に居るのにどこか遠くから聞こえてくる
フィルター越しに聞いてるみたいな銀さんの声

慌ただしく駆けつける看護士さんとお医者さん

あたしはただそこに立ち尽くすだけで何もできなかった

金縛りみたいに動けなかった


『…あたしって、無力だ』

ただ立ち尽くし、集中治療室のミツバさんを無気力な瞳で見つめていたあたしに銀さんは言った

『フツーの人間ならあれだけの血を見たらあわてふためいて取り乱すか、呆然と立ち尽くすかのどっちかだよ』アレは銀さんなりの慰めだったのかもしれない
いつもなら銀さんの言葉で心は軽くなる

けれど今は

あたしの心はずっしりと重たいまんま

シーツを染めた
赤い色が消えてくれない



thanks!‡decadence‡
夕焼け色に染まる町

真選組の屯所も鮮やかな橙色

その光があまり当たらない屯所の一角、道場でひとり竹刀を振るう影があった

気に食わねぇヤローの後ろ姿

『土方さん』
声をかけるとピタリと竹刀が止まった

『一手、ご教授願えますか』

振り返る男は近藤さんが一番信頼する男

そして

姉上が想いを寄せていた相手

もしかしたら…
今もまだ…


気に食わねぇ

気に食わねぇんだ
今も、昔も、あいつのことだけは…





頭の中が真っ白だった

会話の途中で急に苦しそうに咳き込みだしたミツバさんが真っ白なシーツを赤く染めた
『オイッ!大丈夫かッ!?』

隣に居るのにどこか遠くから聞こえてくる
フィルター越しに聞いてるみたいな銀さんの声

慌ただしく駆けつける看護士さんとお医者さん

あたしはただそこに立ち尽くすだけで何もできなかった

金縛りみたいに動けなかった


『…あたしって、無力だ』

ただ立ち尽くし、集中治療室のミツバさんを無気力な瞳で見つめていたあたしに銀さんは言った

『フツーの人間ならあれだけの血を見たらあわてふためいて取り乱すか、呆然と立ち尽くすかのどっちかだよ』アレは銀さんなりの慰めだったのかもしれない
いつもなら銀さんの言葉で心は軽くなる

けれど今は

あたしの心はずっしりと重たいまんま

シーツを染めた
赤い色が消えてくれない






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