破片

穏やかな気候の昼下がり
あたしはミツバさんのお見舞いに行く前に駄菓子屋さんに立ち寄った

今日のおみやげは駄菓子屋さんの激辛スルメ、君に決めた!

いつもなら店の前のベンチで人をおちょくった様なアイマスクを付けて昼寝をしている彼が今日は居なかった

代わりに

『お、いつかの爆弾女じゃねーか』

駄菓子屋の前にはちっとも似合わない副長さんが居た

『いい加減止めてくれません?その呼び方。エリカっていう素敵な名前があるんですけど』

『自分で自分の名前を素敵とかいうか、フツー』
タバコの煙を吐き出して飽きれ半分に言われた

総悟くんを探してここに来たらしい

『ここにいないとなると…アンタん所に上がりこんでんだろ?』

『居ませんよ!なんですか、その根拠の無い決めつけは!』

『…いや、隊ん中で噂になってたからよぉ、騙されてるだのペットになっただのヒモになっただの…』

なんじゃそりゃあああ
あたしの居ないとこで話が悪い方向に成長している…

『真っ赤な誤解です、ここに居ないならミツバさんの所じゃないですか?』

気がついてしまった
あたしがミツバさんの名前を口にした時に土方さんの眉がピクリと動いたことに

『…そうか、それも、そうだな』

歯切れの悪い土方さん

一体、どうしたと言うんだろう

『じゃあ総悟が居たら早く仕事に戻れって伝えてくれるか?』
くるりと踵を返した土方さんの背中がそう言った

『土方さんも行きましょー?自分で連れ戻した方が確実ですよ?それにミツバさんも喜ぶんじゃないですか』

土方さんは振り返らないまま
『俺は総悟と違って忙しい、…じゃ、頼んだぜ』

小さくなっていく土方さんの背中

彼はタバコの匂いと共に微かな違和感を残していった


秋も深まり冬はもう間近
この季節は風邪が流行りやすい
病院の待合室は混雑していた

その片隅、大きな観葉植物の物陰に見慣れたアフロを発見

『はい、はい、こちらは異常ありません。』

声をかけようかと思ったけど電話中だったのでスルーした


ミツバさんの病室を覗くと案の定総悟くんの姿があった

何を話しているかはわからなかったけどとっても楽しそうだ

そんな二人を見ていたら自分はお邪魔な気がして入り口の前でウロウロと入るのを躊躇っていた

ロビーで時間潰してから来ようかな、なんて思いUターンしようとしたその時

勝手に戸が開いて名前を呼ばれた

『こんなとこで何してんでィ、入りなせェ』

挙動不審なところをあっさり見つかって

『まぁエリカさん、今日も来てくれたのね、嬉しい』
にっこり微笑むミツバさんにあたしもつられて笑顔になった

『あ、これ、是非食べてください』

おみやげに買ってきた激辛スルメを渡すと嬉しそうに受け取ってくれたミツバさん

『気を遣う事無いのよ、会いに来てくれるだけで嬉しいのに』

『ほんの気持ちです、それに駄菓子屋さんで大人買いするの楽しいですから』

そしてみんなで激辛スルメを噛み締めた

…駄菓子と言えど侮れない辛さ
ふたりは全然平気であたしだけヒーヒー言ってた

そういえば

『駄菓子屋さんで土方さんに会ったよ、総悟くんをさがしてる…みたい、だったけど…』

不自然なくらいの沈黙

『えーっと…誘ってみたんだけど、忙しいって…』

あたし、変なこと言った?
この場の空気を凍らせるようなおかしなこと…、言ってないよね?


『…そう、十四郎さんが…。彼は…』
何かを言いかけたミツバさんを遮って総悟くんが口を開いた

『ヤローには会わせませんぜ、姉上』
そう言った総悟くんの目は見たことの無い冷たい目だった

『薄情なヤローじゃねぇですか、一度も見舞いに来もしねェ』

『…総ちゃん』

総悟くんからは怒り
ミツバさんからは哀しみ
それの間であたしは板挟み

あたしは
触れてはいけない所に触れてしまったみたいだ

重たい沈黙の中、総悟くんはおもむろに立ち上がった

『…俺は仕事に戻りやす、エリカはゆっくりしていってくだせェ』
振り返らないまま、彼は病室を出ていった

あたしはそんな総悟くんにかける言葉を見つけられなくて


後ろ姿を見送くることしか出来なかった


『なになに〜、なァんか辛気臭ェなァ、この部屋。誰か屁でもこきましたか〜』

ちょうど見舞いに来たらしい、すっとぼけた銀さんののんきな声にちょっと救われた穏やかな気候の昼下がり
あたしはミツバさんのお見舞いに行く前に駄菓子屋さんに立ち寄った

今日のおみやげは駄菓子屋さんの激辛スルメ、君に決めた!

いつもなら店の前のベンチで人をおちょくった様なアイマスクを付けて昼寝をしている彼が今日は居なかった

代わりに

『お、いつかの爆弾女じゃねーか』

駄菓子屋の前にはちっとも似合わない副長さんが居た

『いい加減止めてくれません?その呼び方。エリカっていう素敵な名前があるんですけど』

『自分で自分の名前を素敵とかいうか、フツー』
タバコの煙を吐き出して飽きれ半分に言われた

総悟くんを探してここに来たらしい

『ここにいないとなると…アンタん所に上がりこんでんだろ?』

『居ませんよ!なんですか、その根拠の無い決めつけは!』

『…いや、隊ん中で噂になってたからよぉ、騙されてるだのペットになっただのヒモになっただの…』

なんじゃそりゃあああ
あたしの居ないとこで話が悪い方向に成長している…

『真っ赤な誤解です、ここに居ないならミツバさんの所じゃないですか?』

気がついてしまった
あたしがミツバさんの名前を口にした時に土方さんの眉がピクリと動いたことに

『…そうか、それも、そうだな』

歯切れの悪い土方さん

一体、どうしたと言うんだろう

『じゃあ総悟が居たら早く仕事に戻れって伝えてくれるか?』
くるりと踵を返した土方さんの背中がそう言った

『土方さんも行きましょー?自分で連れ戻した方が確実ですよ?それにミツバさんも喜ぶんじゃないですか』

土方さんは振り返らないまま
『俺は総悟と違って忙しい、…じゃ、頼んだぜ』

小さくなっていく土方さんの背中

彼はタバコの匂いと共に微かな違和感を残していった


秋も深まり冬はもう間近
この季節は風邪が流行りやすい
病院の待合室は混雑していた

その片隅、大きな観葉植物の物陰に見慣れたアフロを発見

『はい、はい、こちらは異常ありません。』

声をかけようかと思ったけど電話中だったのでスルーした


ミツバさんの病室を覗くと案の定総悟くんの姿があった

何を話しているかはわからなかったけどとっても楽しそうだ

そんな二人を見ていたら自分はお邪魔な気がして入り口の前でウロウロと入るのを躊躇っていた

ロビーで時間潰してから来ようかな、なんて思いUターンしようとしたその時

勝手に戸が開いて名前を呼ばれた

『こんなとこで何してんでィ、入りなせェ』

挙動不審なところをあっさり見つかって

『まぁエリカさん、今日も来てくれたのね、嬉しい』
にっこり微笑むミツバさんにあたしもつられて笑顔になった

『あ、これ、是非食べてください』

おみやげに買ってきた激辛スルメを渡すと嬉しそうに受け取ってくれたミツバさん

『気を遣う事無いのよ、会いに来てくれるだけで嬉しいのに』

『ほんの気持ちです、それに駄菓子屋さんで大人買いするの楽しいですから』

そしてみんなで激辛スルメを噛み締めた

…駄菓子と言えど侮れない辛さ
ふたりは全然平気であたしだけヒーヒー言ってた

そういえば

『駄菓子屋さんで土方さんに会ったよ、総悟くんをさがしてる…みたい、だったけど…』

不自然なくらいの沈黙

『えーっと…誘ってみたんだけど、忙しいって…』

あたし、変なこと言った?
この場の空気を凍らせるようなおかしなこと…、言ってないよね?


『…そう、十四郎さんが…。彼は…』
何かを言いかけたミツバさんを遮って総悟くんが口を開いた

『ヤローには会わせませんぜ、姉上』
そう言った総悟くんの目は見たことの無い冷たい目だった

『薄情なヤローじゃねぇですか、一度も見舞いに来もしねェ』

『…総ちゃん』

総悟くんからは怒り
ミツバさんからは哀しみ
それの間であたしは板挟み

あたしは
触れてはいけない所に触れてしまったみたいだ

重たい沈黙の中、総悟くんはおもむろに立ち上がった

『…俺は仕事に戻りやす、エリカはゆっくりしていってくだせェ』
振り返らないまま、彼は病室を出ていった

あたしはそんな総悟くんにかける言葉を見つけられなくて


後ろ姿を見送くることしか出来なかった


『なになに〜、なァんか辛気臭ェなァ、この部屋。誰か屁でもこきましたか〜』

ちょうど見舞いに来たらしい、すっとぼけた銀さんののんきな声にちょっと救われた


back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -