冬に咲く向日葵

姉上は、長くは生きられない
ずいぶん前からそう言われていた

それでも今までこうして元気な姿を見せてくれていて

それだから肺の病なんて大したこと無いんじゃないかと思うようになっていた


そんな矢先の姉上の入院
病がまだ姉上を蝕んでいることを知らしめさせられた

俺はとにかく不安だった

姉上が居なくなった世界なんて想像もできなくて

ただ、この世界に独りになるのが怖かった



『ご、ごめん。お茶請けになるようなもの、お煎餅くらいしか無かった…』
姉上が好きな激辛煎餅ではなく醤油味の至ってシンプルなもの

どっちかっつーと俺もこうゆう方が好きだ

『お茶熱くない?大丈夫?』
『部屋、寒くない?』
『あ、テレビ付けよっか』

部屋に入ってから落ち着き無いエリカ

柄にもなく俺なんかに気を配りまくる姿はどこか照れ隠しのように見えていじらしい

『エリカ、いいから座んなせェ』

『…う、うん』
テーブルを挟んで向かい側に座ったエリカはほんのり顔を赤らめてうつ向いた

聞こえてくるのはテレビの音と茶をすする音だけ

こんな沈黙が居心地悪くないから不思議だ
当のエリカは多分そうではないはずだろうけど

さっきから見てわかるくらいソワソワしてやがらァ

ほんとにエリカは退屈させてくれやしねぇ

まさかヤローと二人きりで照れるようなシャイなあんちきしょうだとは思わなかった

それとも俺を意識してのことなのか

どちらにせよ
…かわいい奴だねィ


『姉上、喜んでたろ?エリカが見舞いに来てくれて』
江戸に出てきて間もない姉上にはまだ友達と呼べる間柄のやつなんて居ないだろうから

エリカを紹介したら姉上は本当に嬉しそうだった

『…うん、凄い洗礼受けたけどね。お花は喜んでもらえたと思う』

花だけじゃない
エリカが来てくれたことが嬉しかったはず

まだ数回しか会ってないのに心配して見舞いにまで来てくれたんだから

『アレは姉上なりの親切…みたいなもんでさァ、あの食べ方がうまいと真剣に思っている方だから』

『そっか、試されてるとかじゃなかったんだ!…良かった』

なにか思うことがあったのかエリカは安心したように胸を撫で下ろした

『顔色はちょっと優れない感じだったけど、でも元気そうでよかったよ。急に倒れたって言うから心配だったんだよ』

『…そう、だねィ』
今日は安定していたみたいだが、昨日は本当に危険だったんだ

あのヤローだ
土方さんが姉上の前にぬけぬけと姿を表したから

姉上が倒れたのは土方さんのせいだ


『早く、退院出来るといいよね。あたしこの前みたいにみんなで遊びに行きたい』

その願いは多分叶わない

楽しげに話をするエリカに告げるべきか否か迷っていた、姉上の容態のこと

隠しておいてもいずれ解る

一人で抱え込んで黙っているのが辛いから、言ってしまおうか

『どうしたの?…黙り込んじゃって』

さっきまではエリカの方が黙りこんで居たくせに、いつの間にか形勢逆転だ

『…また、見舞いにいってくれやすか』

『うん、行くよ。昼間は暇してるから』

ニッコリ微笑むエリカ


…言えねぇや

言えばその笑顔も消えるだろう

出来ればその笑顔を
そのまま姉上にも向けて欲しい

あたたかく照らしてほしい

お天道様みたいに


俺もどんなに救われてるだろう
この笑顔に



『エリカが居てくれてほんとに良かったでさァ』

らしくない言葉だけど
真実だから


『こちらこそ…』
真っ赤な顔のエリカが言った姉上は、長くは生きられない
ずいぶん前からそう言われていた

それでも今までこうして元気な姿を見せてくれていて

それだから肺の病なんて大したこと無いんじゃないかと思うようになっていた


そんな矢先の姉上の入院
病がまだ姉上を蝕んでいることを知らしめさせられた

俺はとにかく不安だった

姉上が居なくなった世界なんて想像もできなくて

ただ、この世界に独りになるのが怖かった



『ご、ごめん。お茶請けになるようなもの、お煎餅くらいしか無かった…』
姉上が好きな激辛煎餅ではなく醤油味の至ってシンプルなもの

どっちかっつーと俺もこうゆう方が好きだ

『お茶熱くない?大丈夫?』
『部屋、寒くない?』
『あ、テレビ付けよっか』

部屋に入ってから落ち着き無いエリカ

柄にもなく俺なんかに気を配りまくる姿はどこか照れ隠しのように見えていじらしい

『エリカ、いいから座んなせェ』

『…う、うん』
テーブルを挟んで向かい側に座ったエリカはほんのり顔を赤らめてうつ向いた

聞こえてくるのはテレビの音と茶をすする音だけ

こんな沈黙が居心地悪くないから不思議だ
当のエリカは多分そうではないはずだろうけど

さっきから見てわかるくらいソワソワしてやがらァ

ほんとにエリカは退屈させてくれやしねぇ

まさかヤローと二人きりで照れるようなシャイなあんちきしょうだとは思わなかった

それとも俺を意識してのことなのか

どちらにせよ
…かわいい奴だねィ


『姉上、喜んでたろ?エリカが見舞いに来てくれて』
江戸に出てきて間もない姉上にはまだ友達と呼べる間柄のやつなんて居ないだろうから

エリカを紹介したら姉上は本当に嬉しそうだった

『…うん、凄い洗礼受けたけどね。お花は喜んでもらえたと思う』

花だけじゃない
エリカが来てくれたことが嬉しかったはず

まだ数回しか会ってないのに心配して見舞いにまで来てくれたんだから

『アレは姉上なりの親切…みたいなもんでさァ、あの食べ方がうまいと真剣に思っている方だから』

『そっか、試されてるとかじゃなかったんだ!…良かった』

なにか思うことがあったのかエリカは安心したように胸を撫で下ろした

『顔色はちょっと優れない感じだったけど、でも元気そうでよかったよ。急に倒れたって言うから心配だったんだよ』

『…そう、だねィ』
今日は安定していたみたいだが、昨日は本当に危険だったんだ

あのヤローだ
土方さんが姉上の前にぬけぬけと姿を表したから

姉上が倒れたのは土方さんのせいだ


『早く、退院出来るといいよね。あたしこの前みたいにみんなで遊びに行きたい』

その願いは多分叶わない

楽しげに話をするエリカに告げるべきか否か迷っていた、姉上の容態のこと

隠しておいてもいずれ解る

一人で抱え込んで黙っているのが辛いから、言ってしまおうか

『どうしたの?…黙り込んじゃって』

さっきまではエリカの方が黙りこんで居たくせに、いつの間にか形勢逆転だ

『…また、見舞いにいってくれやすか』

『うん、行くよ。昼間は暇してるから』

ニッコリ微笑むエリカ


…言えねぇや

言えばその笑顔も消えるだろう

出来ればその笑顔を
そのまま姉上にも向けて欲しい

あたたかく照らしてほしい

お天道様みたいに


俺もどんなに救われてるだろう
この笑顔に



『エリカが居てくれてほんとに良かったでさァ』

らしくない言葉だけど
真実だから


『こちらこそ…』
真っ赤な顔のエリカが言った


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