教えてあげる
『うわ…コレは酷い』
沖田くんのポケットから落ちたクシャクシャになった紙
それを広げて見て思わず呟いた
『せんせー、そいつはプライバシーの侵害ってもんでさァ』
我が物顔でベッドを占領している沖田くんが横たわりながら言った
『ごめんね、でも…これ、やばいでしょ』
このくしゃくしゃの紙 先日行われた数学の抜き打ちテストだったようで、沖田くんの結果は見るも無惨な9点
『3Zでは平均点が低いから問題ありやせん、つーか、教師が抜き打ちなんて卑怯な真似するのがいけないんでィ。人の手本になるべき立場にいるなら正々堂々真っ向から向かってくるべきだぜ』
『予告されてたらできたの?このテスト』
『それとこれとは話が別でさァ』
いや、別じゃないよね
『だいたい、数学なんて将来使う時が来るんですかィ?』
…たしかに 足し算引き算掛け算割り算、これだけできたら十分だよね
『でもね、授業ちゃんと受けてテストで成果出すのが学生の本分てものだから』
『めんどくせー』
ごろりと寝返りうって沖田くんは背中を向けた
『だいたい授業聞いててもチンプンカンプンなんでさァ、わからない授業聞いてると眠くなんでィ』
わからなくもないんだけどね
学生の頃はあたしだって授業中は眠気との闘いだったから(特にお昼休み明けは)
『…どこがわかんないの?』
テスト用紙を持って沖田くんが寝てるベッド脇に椅子を置き腰かけた
『なんでィ?』
『あたしのわかる範囲だけでも教えてあげるから、ちょっと頑張ろ?』
あたしも数学なんて得意じゃないけど… 沖田くんの為にも一肌脱ぐから
『ほら、どこら辺がわかんないの?』
『七の段』
『…は?』
『…だから、七の段』
七の段て…、九九ッ!?
『何でさァ、文句でもあるんで?』
『ううん、文句はないけど…』
まさか、ここまで初歩的な所からだとは思わなくて驚いただけ
でもよく言うよね
バカな子ほど可愛い
『…馬鹿にしてんだろ』
ふてくされた姿も、可愛いかったりして
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