02



少々慌ただしい昼時の江戸の町をマイペースに歩いていく一人の少年

江戸の町では見馴れた真っ黒いストイックな制服、真選組の一番隊隊長沖田総悟だ

手には小さな花束と激辛煎餅が入った袋、彼の姉の大好物
彼の向かう先は墓地

去年の冬に亡くなった姉の墓参りに向かうところだった

何かあるとき、そうでないときも彼はよく其処へ足を運んだ

『今日は武州からアイツが来るんでさァ』
花を活けながら総悟は呟いた
まるで姉がそこに居るように語りかける

『何年ぶりですかねぇ…』
染々と懐かしそうに呟いてから、彼は墓前に手を合わせた

彼岸やお盆時期でなければここでは滅多に人に会うことはなかった
しかし今日は違った

墓地の門の方からエンジン音を聞いた

めずらしい
そう思いチラリと目をやると見覚えのある白髪の天パ頭がそこに居た

『旦那じゃねーですか』
彼が旦那と呼ぶ男
万事屋銀ちゃんの主、坂田銀時
町中で彼を見かけることは日常茶飯事だが、この場で見かけたことには違和感大有りだった

『旦那とこんなとこで会うなんてどーゆう風の吹き回しで?』
『いや、風の吹き回りはしらねーけどもちょっと付き合いでね』

墓場にお付き合い?
どんなお付き合い?
興味本意で銀時の連れを拝もうと覗き込んでみると彼の背後には小柄の少女が居た

『なんですか、墓場で逢い引きたァ色気無さすぎですぜ旦那』
『いや、違うから。断じてそうゆーんじゃないから』
『なにも隠すことは…』

銀時を冷やかしていた総悟の声は言い切る前にかき消された

『…総ちゃんッ!!』
少女の声に

『総ちゃん?』
銀時は怪訝そうに彼女を見やった
彼のことをそう呼ぶ人が一人しか思い付かなかったから

『なんだよ、沖田くんの知り合いなんじゃん…てか彼女?』
再会を喜び彼に飛びつく少女はまるで飼い主にじゃれつく犬のようだ
恋人と呼ぶには少し違うようにも思えたが、冷やかし半分の問いに当の本人はまだ誰かわかっていない様子

『もしかしてあたしのこと解ってないの?エリカだよ!エリカ!』

『…エリカ?』

総悟は目を丸くして彼女を穴が空くほどと言う言葉がピッタリな程見つめた

エリカは武州に居た頃からの古い馴染みで会うのは何年ぶりかだった
彼女は夏休み明けに変貌を遂げたクラスメートのように見違えていた

『久しぶりだね!総ちゃんぜんぜん遊びに来てくれないんだもん』
『あぁ、ほんと久しぶりでさぁ…っつーか何でここにいんの?』
『なんでってミツ姉のお墓参りだよ!お葬式、来れなかったから…』
『そうか、ありがとうな…ってそうじゃねぇよ。お前、駅に土方さんが迎えにいく算段じゃなかったのか?』
『あ…』

エリカは忘れていた大事なことを思い出し、そのままフリーズした


『…なんか俺、おいてけぼりじゃん』
銀時はボリボリ頭をかきながら一歩引いたところで二人の様子を眺めていた

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