03



『うひゃあァァッ!辛いィィッ!』
口から火を吹きそうなくらいの激しい辛さを感じ布団の上でジタバタのたうち回るエリカ

それを眺める総悟はえらく楽しそうだった

『水ならここにありやすぜ』
ペットボトルのミネラルウォーターを出し、エリカの前で見せびらかすように振って見せた

『水ゥゥゥッ!』
勢いよく伸ばした手はスカッと音がしたかと思うくらい空ぶった

総悟がエリカの手の届く場所から水を取り上げたから

『総ちゃんんんッ!』
エリカはもう今にも泣き出しそうなくらい涙目なのに総悟の表情はますます楽しそうだった

『そんなに水がほしいのかィ』
意地悪な笑みを浮かべた総悟にエリカはブンブンと髪を振り乱して必死に懇願した

『だったら3回まわってワンって言いな』

その時、間違いなくエリカの目には総悟をまとうどす黒いオーラが見えていたに違いない

『ムキィーッ!ソレどころじゃ無いんだってばァッ!頂戴!!水ッ』
総悟に構わず水に飛び付くエリカ

『うわッ、いてッ、何すんだてめェッ!』
そこからはふたり、まるでこどもの取っ組み合い

見ようによっては猫じゃらしで遊ぶ飼い主と猫
総悟に飛び付いたエリカだったけれど男の力には勝てず敢えなく完敗、形成は逆転

『総ちゃああんッ!!意地悪ッ!昔と全然変わってないッ!』
ジタバタ暴れるエリカを押さえつける総悟
エリカは目からは涙が溢れた


『いてッ!暴れるんじゃねーや、水はやるから』
そう言うとエリカはピタリと動きを止めた

『えへへ…、あたしの涙に弱いところも変わってないね』

『…生意気でィ』
でも、エリカの言う通りで
つい意地悪したくなるのにエリカが泣きそうな顔をすると困り果てる

昔からそうだった

ヘラヘラッと表情を崩したエリカに総悟も苦笑いした

『総ちゃん、お水』
『…へいへい』

穏やかな空気の中

スパァァンッ!

耳をつんざくような程大きな音をあげ襖が開かれた

『エリカッ!どうした…』
廊下から血相変えて飛び込んできたのは十四郎は石のように硬直した

それもその筈、十四郎の目には最愛の妹が総悟に無理矢理押し倒されて良からぬ事をされそうになっているようになっているのだから

『…総悟』
地を這うかのような低い声
そして額に浮かぶ青筋

二人は察知した
十四郎は怒っている
二人が今まで見たこと無いくらい怒りに震えている

『…なんか用ですかィ、土方さん』
何事もないみたいに淡々とした総悟のひとことに、十四郎はキレた

『いい度胸じゃねぇか。エリカを手籠めにしようとしておきながらその態度…テメェは士道にあるまじき事をした!そこに直れ、切腹だ!』

『………は?』
『……ってか水ゥゥゥッ!』

エリカはようやく水にありつけた
総悟から奪った水をごくごくと喉を鳴らして飲んだ

その様子を見て十四郎はまた何かを盛大に誤解した

『どうしたエリカ!なんか変なもん食わされ……ッ!!くわえさせられたのか、飲まされたのか!?』

『え?でもアレは自分から口に入れたんだけどね。総ちゃんの無言の圧力に耐えかねて』

『総悟ォォォッ!お前何てことをッ!』
十四郎は腰のものに手をかけた

『なんか盛大に勘違いしてますぜ、土方さん』
身の危険を感じた総悟も鞘から愛刀を抜いた

『言い訳は地獄で閻魔様にでも聞いてもらうんだな!』
『しょうがねィ、エリカには悪いがここでアンタを消して俺が副長になるしかねぇ見たいですね』

ガキィィィン
火花を散らしそうな程激しく刀がぶつかり合う

『え、え?なんで?』
目の前で繰り広げられる闘いをエリカはただ見つめることしか出来なかった


『エリカちゃーん、宴会の準備ができたぞー…ってお前ら何してんのォォォッ!?』
ふたりの闘いは勲が呼びにくるまで続いた
 


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