総悟が意地悪なのはいつものこと

最後に食べようと残してた卵焼きを食べられたり、イライラしてたら『アノ日ですかィ』なんて言われたり…、それから口喧嘩へのパターン

そんなの日常茶飯事ってやつで。


でも今日はいつもと違うことが一つ


『大嫌い』

勢いで思ってもいないことを言ってしまった。


エリカは駆け込んだよろず屋でお茶をすすりながら後悔に苛まれていた。

『エリカは男を見る目が無いアル!何であんなドSと付き合ってるアルか?』

『何でって…』

…何でだろう?
白熱している神楽ちゃんの問いに答えられずしどろもどろしてしまう。

『ガキは黙ってろ、大人には言葉にできないような複雑な事情ってもんがあるんだよ』
ジャンプからは目を離さないままの銀さん

興味無さそうに見えて意外と心配してくれてるんだよね

『なんだかんだ言って、いつものように迎えに来るんじゃないんですかね』
お茶菓子を用意しながら新八君が言っていた。

彼が言う通り、喧嘩して飛び出して万事屋に逃げ込んで、しばらくしたら総悟が迎えにくるっていうお決まりのパターン

それなのに今日はいつまでたっても来る気配が無い。

気がつけば窓から差し込む日差しが茜色に変わっていた。

『…お邪魔、しました』
陽がくれて薄暗くなり、エリカはようやく重い腰を上げた。


『意外と打たれ弱いんだよ、ドSなやつは。総一郎くんはああ見えてまだガキだからね…大嫌いが案外堪えてんじゃね?』
見送りがてら銀さんと少し並んで歩いた。

『今回はエリカちゃんから折れてやんな、そんで大嫌いなんて嘘だっていってやりゃいいんだよ。それでうまいことまぁるく収まるから』

『…うん、ありがとう…銀さん』

ちゃんと謝ろう
嘘でも酷いこといったのはわたしの方なんだから


『総悟くーん、いますかー』
屯所に戻ってすぐ、総悟の部屋に向かった。

『いませんぜー』

『…居るじゃないのよ』
戸を開ければ人を小バカにしたようなアイマスクを付けてゴロリと寝転がる総悟が居た。

『ここにはエリカの大嫌いなヤローしか居ませんぜ』
そう言うと寝返りをうってエリカに背を向けた。

銀さんが言った通り、総悟は拗ねている。

そんな姿もかわいい…

なんて、言ってしまえばまた機嫌を損ねてしまう。


『総悟…、ごめんね』
側に腰かけて総悟の背中に告げた。

反応は無い。

『あたし勢いで酷いこと言ったよね。嫌いだなんて嘘だから』

反応は無い。

『ほんとに、ごめんね…』


『…俺ァかなり傷ついたんでさァ』
総悟の背中が寂しげに呟いた。

『ごめんね、ほんとごめんね』

ようやく総悟は体を起こしアイマスクをはずした。
『許してやらねぇこともねェですが…』

ニヤリと腹黒そうな笑みを浮かべた。

あ…、この顔…、なんか無茶なお願いとかドSな罰ゲーム言い渡す気だな…

やな予感て大抵当たるの
でも…

『わかりましたー!なんでも言うこと聞いてあげますよー!でも一個だけだからね』

エリカは覚悟を決めた
だって軽はずみな一言でどんだけ彼を傷つけてしまっただろうか

だから何でも言ってよ!
ドンと来い、よ!



………

『え?マジで?そんなことでいいの?』『俺には重要なことなんでィ』

総悟が言い出したことは想像とは遥かに違い、意外すぎるくらいだった。


…やっぱり総悟が可愛く見える。

『何、にやけてんでィ。さっさと言う通りにしやがれ』

『はいはーい』


ポーカーフェイスな彼が今日はいろんな顔を見せてくれる。
みんなに解るような大きな変化ではないけれど

言うこと聞いたらまた違う顔、見せてくれる?



総悟、

だいすき





『満足した?』

『まだまだ。全然足りやせん』
そう言う割りに総悟はちょっと嬉しそうな顔をしていた




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