問題児



新聞の一面を飾る新撰組の記事を見て副長、土方十四郎は頭を抱えた。

攘夷志士、一斉検挙!
それまでならいい。

現場一面総悟のバズーカで大破、『やり過ぎ』の記事の方が目立っているからだ。

只でさえ影でヤクザだの暴力団だの言われている真撰組のイメージをさらに悪くしてしまう。

『灸を据えねぇとダメか』



『なんでィ、俺ァ呼び出し食らう覚えはねェんですが』
アイマスクを頭に着けたまま、眠そうな総悟と…

『私も有りませんよ』
総悟が率いる一番隊に所属する女隊士のエリカ。

十四郎は二人を自室に呼びつけ正座させていた。

『お前らになくても此方は言いたいことが山ほどあんだよ』
二人の前に例の新聞記事を叩きつけた。

『…俺らの記事じゃねぇですかィ』
『あ〜、隊長写ってる!良いなぁ…』

『写真はどうでもいいんだよ!此方だ』


街を壊し続ける真撰組

この見出しを指差した。

『総悟の破壊癖は毎度のことだ、だからそれを抑える楔役としてエリカを一番隊にいれたんだぞ。冷静沈着なお前なら総悟を抑えれると踏んでだ。お前も任せてくださいって言ったよな!?それなのになんだ、お前ら!一緒になってバズーカブッ放ちまくりやがって…』

溜まりに溜まった不満を一気にぶちまけた十四郎は、ひとつ大きなため息をついた。

『呆れられちゃいましたね…』
『なぁに、一番隊なんてこんなもんでさァ』

反省の色が全く見られない二人。

完全に間違った。
エリカを総悟の下につけたのは失敗だった。

元は十四郎の部下だったエリカ
よく気が利いて、よく働く、人当たりもいい自慢の部下だった。

総悟の目に余る破天荒な振る舞い、エリカならそれを抑えると思っての配置換え

その成果はまるで無し


『たく…口うるさい人だ、結果攘夷志士全員取っ捕まえたんだ。問題は何も無いんじゃねぇですかィ』

『市民に迷惑かかってんだ!問題は大有りなんだよッ!』

『うるさい人だ、いいから黙って死んでくれよ土方』

『総悟!テメェエエッ!』
お互い抜刀し、お約束の命がけの喧嘩が始まった。

『俺がこの手でストレスから開放してやりまさァ』

『いいや、俺がテメェというストレスをこの手で消してやるッ!!』

『アンタはあの世でマヨネーズすすってりゃいいんでさァ』

いつもに増して激しい闘いだった。
黙って見ていたエリカがふと口を開いた。


『ごめんなさい、私がわるいんです。腹いせにバズーカブッ放っしたなんて…大人げなかったですよね…』


…はぁ?


ブンッ
『ってオイイイッ!斬れた、制服斬れたぞゴルァ!』
呆気に取られた十四郎に容赦なく振り下ろされた総悟の刀。

『油断するやつがいけねェんで』
そう言って総悟は部屋を後にした。

エリカはまだ座ったまま。


『エリカ、腹いせって何だ?』
エリカはうつ向いたまま黙っている。

沈黙の中、十四郎はタバコに火をつけた。
『訳を話せ、エリカ。でなきゃ切腹させるぞ』
そんな気は更々無いが脅すつもりで言ってのけた。

『…土方さんの命令だから一番隊に移りましたけど…私、土方さんの下で働いて居たかったんです』


…なんですと?

『問題起こしたら、また目の届く所に置いてもらえるかと思って…暴れちゃいました』

顔を上げたエリカははにかむように微笑んだ。


コイツは…

総悟より問題児かも知れねェ


『あ〜…そうだな、お前みたいな問題児は…俺の目の届く所に置いておく必要があるな』

『ハイッ!』
元気に返事をした笑顔のエリカ

もういろんな意味で

目が離せない




『ッたく…女ってのは恐い生き物でさァ』

『健気なだけです、可愛いもんじゃないですか』

『手段を選ばない辺りが恐いんでィ』



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