ONE
※第二百六十八訓のその後的な
『何してるんですか、近藤さん』 エリカは目の前の男に率直な疑問をぶつけた だって考えても意味がわからない姿をしていたから
『あ、エリカちゃん!無事だったんだね、近藤さん安心したよォォォッ!』 駆け寄ってくる近藤からエリカは距離を置いた
『ちょ、えっ?なんで離れんの!?え、なんか臭う?まさか加齢臭!?』 そんなエリカの態度に近藤は涙目だ
『そんなんじゃなくてそれ以前の問題です』 エリカは近藤の着ているものを指差した
鎖帷子に鎖鎌、呪いのベルト、破滅の盾…それにケミカルウォッシュジーンズ? 『バラモス倒す旅にでも向かうとこだったの?』 『あ。これはさっきまで聖なる戦いが繰り広げられてて…』 勲はこれまでの経緯を説明した
『あぁ、だからさっきまで頭上によくわかんない順位が付いてたんですね…それにしてもくだらないことしてたんですね』 エリカは呆れながら溜め息混じりに言った
『だってぇぇぇ、俺なんて15位よ!?トシや総悟は上位なのに!俺、ザキにも負けてたんだよッ!これ以上下がりたくないじゃんッ!』 そしてエリカの足元でいい歳した男はさめざめと泣き出した
『近藤さん、泣かないの(いいオッサンが)』 『え?なんか聞こえてないけどなんか頭に直接語りかけてきたんだけど…ものすごく傷つく言葉が…』 『近藤さん』 そんな反論も気に止めずエリカはまるでペットにそうするように頭を撫でた そんなことをされては近藤は黙る他無くされるがままエリカの言葉を待った
『あたしには近藤さんが15位でも30位でも100位でも関係ないんです』 『え…』
エリカはニッコリ笑って優しく語りかけるように言った 『あたしにとってのオンリーワンだから、それでいいじゃないですか』
『う…、エリカちゃあああん!近藤さんもう死んでもいいッ!そんな嬉しいこと言われたら思い残すことないッ!』 『よしよし』 エリカがふと顔を上げて泣きじゃくる近藤の背後に不穏な影を見つけ、そっと離れた 『え。エリカちゃん?あれ、みんな…』 近藤も背後の存在に気づいた さっきまで共に闘い裏切りあっていたみんなだ
『あっそう、…思い残すことないんだ』 『じゃあもう死ぬといいアル』 『え、ちょ…今のみてたのォォォッ!』 近藤は柄にもなく照れて顔を真っ赤にした
『アンタのふざけた茶番うんざりだよ近藤さん』 『土に還してやりまさァ』
『なんでッ!?ってちょ…!』この日かぶき町にもうひとつ悲鳴がこだました
ボロ雑巾のようになった近藤にエリカは言った 『こんな姿でもあたしの一番だからね』
そのひとことで救われるほど、近藤は単純そのものだった
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