クリスマスなんて燃えて灰になれ



町はイルミネーションやツリーでクリスマス一色
聞こえてくる音楽はどこへ言ってもクリスマスソング
行き交う人たちは幸せそうなカップルや家族ばかり

自分はといえば…
真っ黒い隊服に身を包んで市民の平和を守っている(つもり)

『はああああ…』
エリカはパトカーの中で大きなため息を付いた
隣で飄々とした顔で運転し続けるポーカーフェイスの男に聞こえるように

『どうしたんでィ、今日のエリカはご機嫌ナナメだねィ』
運転しながらチラリと隣を一瞥する
その顔はなんだか楽しそうで

『ご機嫌ナナメにもなるよ!クリスマスになんで見廻り?最悪だよ』
不満を溢すエリカを見て総悟は意地の悪い笑顔を浮かべて言った
『どうせお前、彼氏も予定もないだろーが』

もっともな言葉にエリカは言葉を無くした
『…今の隊長のひとことでヤル気無くしました』
『何でィ、図星突かれてへこんでんのかィ』

…はい、その通りです
この男はどうしてこう、人の痛いとこを的確に突いてくるんだろう

『もう嫌だァァァッ我慢できないッ!チェンジ!相方チェンジで!』
エリカは駄々っ子みたいにわめきたてた

この日に隊長と見廻りなんてツイてないにも程があるそんなのエリカの様子を見て総悟の表情は益々危機とする
『やっぱエリカはおもしれぇや、見てて飽きないねぇ』
肩を揺らしたまま前を向いて運転を続ける

正面を向いたままの総悟の口角が緩くつり上がる

エリカに相反して総悟の方はずいぶんとご機嫌だった
いつもならパトロールの途中でどこかへ消えてしまう隊長が今日は真面目…かどうかはわからないがルートをしっかり辿っている

『…隊長はなんで今日に限ってサボらないんですかァ?しかもなんか機嫌いいし…』
『さぁ…何でかねィ』
『隊長がサボってくれたらあたしもサボったのに…』
エリカが膨れっ面で不真面目なことを言う
普段は模範的な真面目な隊士なのに

そんなエリカが愉快で堪らない
『エリカも普段からそれくらいの気構えが必要でさァ』
『サボりに気構えとか必要なんですか!?』

パトカーは赤信号に捕まった
ふと静まる車内

『…隊長はクリスマスいっしょに過ごしたい人とか、居なかったんですか?クリスマスですよ!聖なる日ですよ!局長も張り切ってたんですよ!』

『………居たよ』
『え!?いるんですか?誰です?どこぞのどなたですか?』
聞いてみたものの意外な答えにエリカは目を丸くする

『あああたしに構わず行ってもいいんですよ!』
そう言ったのも自分がサボりたかったから、それだけじゃなくて
色ボケた隊長が珍しすぎて、そんな姿も見てみたかったりしたのだ

『…居たから、今日は真面目にパトロールしてるじゃねぇか』
言葉と同時に、青信号に変わり車は発進する

『え…、それって』
エリカの胸が早鐘を打つように高鳴る

そんなエリカの横で総悟は呟くように言った

『今日は、まぁ…。お前と一緒にいるのも、いいかなって思ったんでさァ』


今日から始まるふたりに
MerryChristmas!



back
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -