bliss



『オイ、エリカ。祭りの日は空けとくんだぜィ』

忙しくて逢う暇さえ無かった総悟

街で偶然出逢えただけで嬉しかったのにまさかのデートのお誘い…しかも総悟の方から


舞い上がってすぐ浴衣を買いにいった
美容室にも予約を入れた

楽しみでしょうがなくて、時計の秒針すら遅く感じた


どんだけ待ちわびたと思う?


それなのに…

何で隊服なのよ!?


『まさか、仕事中なの?』
『休憩中でさァ』


絶対うそだ


『…そんなに信用ねェですかい』
『あるわけ無いでしょ』

私はどれだけ総悟がサボってるか知っている

『大丈夫でさァ、こんだけ人がいれば見つかりゃしねーや』
不安げなエリカを他所に総悟は手を取り歩き出した

何だかんだ言っても久しぶりのデート、楽しくて総悟が仕事中なのもいつのまにか忘れてた


イカ焼きをかじりながら歩いていると総悟が急に足を止めた。

マダオさんの射的屋だ
『そこのお二人さん。ちょっと遊んでかない』『イイねェ、エリカは何れが欲しいんでィ』

そう言って銃を構えた総悟
玩具の銃とはいえかっこよかった

『じゃあ…あの一番上の犬みたいなの』
『ラジャー』

狙いを定めて撃とうとした瞬間、大きな声が響き渡った

『エリカーッ!浴衣アル、浴衣美人アル』

『神楽ちゃん、新八くんも』

よろず屋の二人と遭遇した。

『おいチャイナ、テメェのせいではずしただろうが』
『自分の無能さを人のせいにすんな、ドSが』

[犬猿の仲]を絵に描いたようなふたり
案の定喧嘩が始まった

『やんのかこらァ』
『挑むとこでィ』

『ちょっと総悟…』
『か、神楽ちゃんッ!』

いつのまにか騒ぎは大きくなっていてマダオさんの店を囲むように人だかりができていた

『ちょっと勘弁してよ〜ウチの店の前で騒ぎは〜…』

マダオさんの願い儚く、事態はどんどん大事になっていた

そうなれば当然やって来たのは見回りをしていた真撰組

『テメェら何騒いでるッ!!って総悟!?』
一番会いたくなかった土方さん、あっさり見つかってしまった総悟は引きずられるように連行された

なぜかエリカも一緒に説教をうける羽目になり、終いには反省文まで書けといわれた

小学生のガキじゃあるまいしという総悟の抗議は当然却下で…

『なんで私まで…』
『何言ってやがんでィ、俺とお前は運命共同体ってやつでさァ』

この台詞、この状況でなければ嬉しかったかも…

とは言え自然と頬は緩んでいたみたいで

『なににやけてんでィ、変な顔晒すんじゃねぇよ』

エリカはペンを右手で遊ばせながらニヤリと笑っている総悟を睨み付けた

そんな顔しても総悟が喜ぶだけで…

エリカは深いため息をついた
『せっかく楽しみにしてたのに…散々よ』

それは消え入りそうな呟きだった

『………』
『………』

なに、この沈黙…
顔を上げて真っ先に目に入る総悟の顔が思いの外真剣な表情で少し驚いた。

『…俺は楽しかったですぜ、アンタが居りゃなんだって構わねェんでさァ』

胸がキュンと締め付けられたみたい

わたし、今、絶対顔赤いでしょう


全部、君のせい

『あ、あたッ、し、だって…』

『なに喋ってンでィ、終わったんならコッチ手伝え』

『…ムッ』
(…やっぱりムカつく)

『あ、言い忘れてやしたが』

『なによ!』

『浴衣、似合ってますぜ』



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