俺はいかが?



さっきまで晴れてた空がいつの間にか分厚い雲に覆われていた

それに気づいてベランダに干していた洗濯物を急いで取り込んでいたらピカッと光る灰色の空

すこし間をおいて響き渡った雷鳴

雨は直ぐにやって来た
バケツをひっくり返したように激しく降りだしていた


ピンポーン

そんな強い雨の中、インターホンが鳴った
こんな雨の中誰が来たかと思って扉を開ければ…

『よぉ、ちょっくら雨宿りさせてくんない?』
全身びしょ濡れな銀さんが立っていた

突然の来訪に驚きながらもずぶ濡れで風邪を引いては可哀想だと慌てて招き入れた

『急に降りだすんだもんなぁ〜ツいてねェよまったく』
いつものふわふわな銀髪が濡れてぺたんこになっていた銀さんはいつもと違って…なんかセクシーだ

柄にもなくときめいちゃったりして…

『はい、タオル。早く拭かなきゃ風邪ひいちゃうよ』
『サンキューな』

頭をタオルでグシャグシャに拭いている銀さんの着物からは雨が滴り落ちてきていた
『…銀さん、お風呂入っちゃったほうがよくないかな?』

タオルで拭いてどうにかなるレベルじゃないほど銀さんはびしょ濡れだった

『え、いいの?ラッキー』

そんなこんなで銀さんがあたしの家でシャワーを浴びている
その隙に銀さんの着物を洗濯していたらバスルームから雨のようなシャワーの水音に混じって銀さんの鼻唄が聞こえてきた

銀さんの鼻唄なんてちょっとレアかも
銀さん、なんかご機嫌?

あ、それより着替え貸してあげなきゃ…
ってゆうかあたしの服が着れるのかな

そうは言っても着替えが無い方が困るはず

自分の部屋着の中でも大きめのものをかき集めて脱衣所へ持っていったその時

シャワールームの扉も開かれた

『きゃあああああっ!』
あたしは全裸の銀さんに向かってつんざくような悲鳴をあげた

『ちょっ、悲鳴あげたいのこっちなんですけどォォォッ!』
『ごごごごめんなさいィィィッ!!』
謝りながらも用意していた服を慌てて股間を隠す銀さんに投げつけてあたしは脱衣所を飛び出した

あたしのバカ
あたしのバカ
あたしのバカァァァッ!

間もなく、脱衣所の戸が開く音がしたけど合わせる顔がなく背中を向けたままのあたし

『あの、その…、ホントにごめんなさいッ!』
顔を見ずに謝るなんて失礼だけど恥ずかしすぎて振り向けない
それにあたしの顔、火が付きそうなくらい真っ赤だと思う

銀さんからの返事がない
もしかして、怒ってしまったのかな

不安に思っていたらすぐ後ろに腰を下ろされた気配を感じた

『あー、いや、こちらこそ見苦しいもん見せちゃってスイマセン』
なんて逆に謝られる始末

『銀さんが謝ることじゃ…』
否定しようと振り向いたらまたもあたしは悲鳴をあげた

『きゃあああああっ!なんで裸ーッ?』
後ろに座っていた銀さんは腰にバスタオルを巻いただけの姿だった
あたしは両手で顔を覆って銀さんに背を向けた

『いや、だってよぉ〜エリカちゃんの服なんて着れないっしょ』
『う…たしかにあたしと銀さんじゃ身長さもありますけどぉ』
『あー、まああのTシャツくらいなら多少小さいにせよ着れたかもしんないけど…』『じゃあなんで〜』

あたしの後ろで銀さんは気まずそうにボリボリと頭を掻いて、呟いた

『…ちょっとヤバイじゃん。興奮するっつーか、ムラムラするっつーか』
『ムラムラ!?一体何にッ?』

振り向いて(体は見ないように)銀さんの顔を見れば顔は真っ赤に染まっていた

『…銀、さん?』

『着てみようとはしましたよ?でもよ、なんか、いい匂いするし?…好きな子が着てた服に袖通すなんてなんか興奮しちまうだろーがァァァッ!』
真っ赤な顔した銀さんがヤケクソに吐き出した思いに今度はあたしが顔を真っ赤にした

『す、す、好きな、子?』
『そーだよ、好きな子だよ、エリカちゃんだよ』

突然の告白にもう頭は真っ白で
あたしはなんて答えたらいい?
言葉がひとつも浮かばない

『エリカちゃん、彼氏居んの?』
『い、…いません』

『じゃあ好きな奴は?』
『い、…いません』

その答えを聞いた銀さんは少し満足そうな笑みを浮かべた

そして硬直したあたしの前で銀さんは裸同然の姿で正座に座り直して姿勢を正した

そして咳払いをひとつして言ってのけた


俺なんか、いかがですか?


『か、考えておきます』
『いやーん、そこは頬を赤らめて頷くとこじゃーん』

そうは言うけど、これ以上あたしの頬は赤くなりそうもありません

『ま、まず服を着てからですぅぅッ!』



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