誕生日が待ち遠しいのは子供だけ



7月8日

今日は愛しのドS王子の誕生日

忙しくて買いに行けなかったプレゼントも今日になってようやく買いに行けた

でも総悟が家に来る時間まであと30分もない

エリカは全力で家路を駆け出した

彼氏を待たせる訳にはいかなくて(どんなお仕置きが待ってるか分からないから)

回りには目もくれず全力疾走

それが災いして角を曲がったところで誰かと正面衝突
勢い余ってエリカは尻餅をついた

『ごめんなさい、…あ、東城さん』
エリカの目と鼻の先で同じく尻餅をついていたのは柳生四天王の東城だった

『エリカさんではありませんか、お怪我はありませんか?』

『いえ、大丈夫です。それよりスイマセン、ちゃんと前見てなくて…』

『私は大丈夫です、若と毎日鍛えておりますゆえ…』
何処と無く満足そうな東城は立ち上がりエリカに手を貸し起き上がらせてくれた

そうこうしてる間にも時間は刻々と過ぎていく

『…あたし急いでるんで失礼します!ほんとスイマセン!』

総悟へのプレゼントの包みを掴み、エリカはまた走り出した
今度はしっかり前を見て


『二分遅刻、お仕置き決定』

息を切らせアパートの階段を昇りきった瞬間だった
部屋の前で待ってた彼の残酷なひとこと

『そんなぁ…、こんなにも、一生懸命、走って来たのに…』
肩で息をしながら切れ切れに抗議
二分でも遅刻したのは悪いと思うけど…

『誕生日まで待たされたくないでさァ』
『ちょっと!その言い方だとまるであたしが遅刻魔みたいじゃん〜』
『そんなことより暑いから早く鍵開けて中に入れなせェ、喉渇いてんでィ』
『鍵持ってるじゃん!入ってればよかったのに』
『忘れた、いいからはやくしろィ』

…この自由人め!

余程喉が乾いていたのか総悟はグラス一杯に注いだ麦茶を一気に飲み干した
おかわりを注いだ後で今日のメインイベント、プレゼント贈呈

『はい、お誕生日おめでと〜』
かさ張る大きな包みを手渡した

『こりゃどーも』
そっけない返事と同時に包みを開け出す総悟

中身はドS王子にふさわしいロゴ入りの某スーパーヒーローのTシャツ

…あれ、それにしては袋大きくない?

包装、こんな色だったっけ

そうこう考えていたら中身を見た総悟がひとこと

『…え、なに、コレ』

中から出てきたのはどこからどう見てもTシャツなんかじゃない

どこからどう見ても、ただのゴスロリ風の着物だった

『なんじゃこりゃああああッ!?』
『それ俺の台詞なんだけど?』

確かに自分はTシャツを購入した
それに間違いはない
財布にレシートも入ってた

だとしたら…!
頭に浮かんだ一人の男

東城さんだ!あの人とぶつかったときに刷り変わっちゃったんだ!

『ごめん!今すぐ取り替えに行ってくる!』
東城さんも困ってるはずだ、きっとこの着物は九ちゃんに着せるために買ったものだろうから

『いや、俺はこれでイイでさァ』
総悟が口にした意外なひとことに耳を疑った

そしてニヤリと、サディスティックな笑みを浮かべた

…嫌な予感


‐数分後‐

『嫌だァァッ!帰るゥゥゥッ!』
『うるせィ、黙って歩けィ』

歯医者を嫌がり駄々を捏ねる子供みたいなエリカとその数歩先をあるく総悟

往来する人々の好奇の視線を彼らが集めるのには訳があった

先ほどの間違えた贈り物のゴスロリ風の着物を着たエリカ
それだけなら何てことないただのデートに見えただろう

人々の目を引くのはエリカの頭についている猫耳と、首に巻かれた黒い首輪、それに繋がれた鎖を総悟が握っていた

『あり得ないあり得ないあり得ない〜ッ!』

『いや、ありでさァ。よく似合ってまさァ』

羞恥で泣きそうなエリカとは対照的な、この上ないほど楽しげな総悟

彼は言った

『この人生で最高の誕生日でさァ』

あたしは最悪だけど
今日は黙っておいてあげる

どんなにドSでも意地悪でも

君が生まれてきてくれたことに、感謝



『こんな人前で辱しめられたら…もうお嫁に行けない〜』

『なぁに大丈夫でさァ、俺が貰ってやるんだから』

7/8 Happy Birthday!



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