ホリデイ



『エリカー、団子食いに行きやしょーぜ』
庭先で洗濯物を干してる後ろ姿に声をかける

『沖田さん、お仕事はいいんですか?』
振り返りいぶかしげな視線を向けてくる女中のエリカ

『今日は非番でさァ、てなわけで付き合いなせェ』
『無理です、まだ仕事いっぱい残ってるんですから』

そういって残りの洗濯物を干し始める

『いつ終わるんでィ』
『わかりませんよ〜、まだ洗ってない洗濯物もあるんですから。甘いものなら万事屋さん誘ってあげた方が喜ぶんじゃないですか?』

『なんで花の休日にヤローとつるんで甘いもん食いにいかなきゃなんねーんでィ』

ただ団子食いてぇだけならザキでも走らせて買わせてくりゃいい話

『沖田さん万事屋さんと仲いいじゃないですか、あたしなんか待つより万事屋さんと一緒に行った方が早いですよ』

俺はエリカと食いたい
というかエリカと出掛けたい
いや、むしろエリカと過ごしたい

分かれよ、そこんとこ

それに…
エリカの口からヤローの名前が出てくるのは不愉快だ

『分かった、手伝ってやるから早く終わらせて行くぜ、団子屋』

俺はまだ残っているという洗濯物を片付けに脱衣場に向かった

『え、沖田さんそれは悪いですよ〜。非番なのに』
エリカの声が追いかけてきていたがそれは無視してまっしぐら

脱衣場の洗濯機のそばにはかごに入った洗濯物の山
むさ苦しいヤロー共のパンツをエリカがせっせと毎日毎日洗ってるのかと思うとそれまた無性に腹立たしい

『こんなもん自分で洗いやがれ』
パンツもシャツも洗剤も全部無造作に突っ込んでスイッチを押した

『総悟お前、なにしてんの?』
自室で書類を片していたらしい土方コノヤローが目を丸くしてこっちを見ていた

『なにって、洗濯』

『いや、洗濯はわかるけどよ…、何で?お前非番だろ?それに洗濯はさっきエリカがやってたろ』

エリカの口からヤローの名前が出るのも不愉快だが、ヤローの口からエリカの名前が出るのも不愉快だ

『死ね、土方ァ』
『何ィィッ!?』
バズーカを構えてぶちかまそうとしたとこで

『沖田さん、もしかしてホントにやってくれてたんですか?』
ヒョッコリ覗いたエリカの顔にバズーカを下ろした

『勿論でさァ』
『うわ、助かります!ありがとうございます』

『じゃあお礼に団子…』
といいかけた俺の声を遮って土方コノヤローが
『手が空いたならエリカ、茶入れてくれねぇか』

そうなりゃ働き者のエリカがNOと言うわけがない

『わかりました、すぐお持ちしますね』
『おう、わりーな』

エリカも俺なんかそっちのけ
それは非常におもしろくない
エリカが俺以外のヤローを見てるのも気に食わねぇ

『悪いと思うなら茶くらいてめえで入れやがれ土方コノヤロー』

『なんだとてめえ!』

『死ね、土方』

『総悟ォォォッ!』

『あ〜、喧嘩はやめてください!土方さん、すぐお茶運びますんでお部屋で待っててください!』

舌打ちして土方さんは回れ右
その後ろ姿に悪態ついてたら

『沖田さん』
俺の名前をよんでくるりと振り返る

『そんなにお団子食べにいきたいんですか』
『あー、食べたいね』
『それって一緒に行くのあたしじゃなきゃダメなんですか?』

ここに来て直球で攻められるとは思いもよらず
『…あー、まぁ、ダメだね』
柄にもなく動揺して言葉を詰まらせてしまった

そんな言葉に満足したのかエリカはニッコリ微笑んだ
『わかりました、行きましょう』

マジでか

『買い出しのついでに、ですけど。荷物半分持ってもらいますからね!』

『…しかたねーなァ、それくらいはやってやりまさァ』
死ぬほど嬉しかったくせにそっけない言い種
素直じゃないな、我ながら思う

『それじゃ、待っててください。土方さんにお茶持っていったら行きますから』

『あぁ?そんなもん自分でやらせりゃいいんでさァ、すぐ行きやすぜ、今すぐに』

エリカの連れてこうと掴んだその手を、逆に引っ張られた

そしてつま先立ちになったエリカの唇が俺の唇に触れた

それは
甘く痺れるかなしばり


『すぐ行きますから、ね』
ニッコリ微笑むエリカに

『………はい』
うなずくしかできなかった

振り回すのは得意だけど
振り回されるのは慣れてないからどうしていいかわからない俺

とりあえずエリカが戻って来るまでにこの激しく高鳴る心臓を落ち着けておかないと…




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