ほしいもの



昼下がり、停泊中の船の甲板で日向ぼっこしながら昼寝していたら急に影ができた

何かと思ったら頭上に大きな傘をさした神威だった

『ずいぶん気持ち良さそうに寝てたみたいだネ』
神威は日を浴びるあたしを眩しそうに見つめる

『お帰りなさい、早かったね』

宙に伸ばした手
それを神威が掴み、あたしはその手を借りて立ち上がった

日を浴びない神威の手はひんやり冷たくて気持ちよかった

『今日はなんの日か知ってる?』

唐突な問いにあたしは首をかしげた

今日はたしか6月1日
なんかあったかな

『知らないの?』
『…うん』

うなずくと同時に引かれた腕
よろめくように神威の胸に飛び込んだ

そして耳元でそっと囁く

『誕生日だよ、俺の』

傘を持たない方の腕はあたしをやんわり抱き締めた

『…ごめん、あたし知らなかった』

『うん。俺もべつに言ってなかったしネ』

『誕生日プレゼント、何が欲しい?』

質問に答える代わりにあたしを抱く腕の力が強くなった

顔をあげてみたら、いつもの笑顔がそこにあった

『エリカをちょうだい』

『…あたし?』

『そ、エリカ。エリカのぜんぶ。これからの未来のエリカをぜんぶちょうだい』

『プロポーズ、みたい』

『そんな甘いもんじゃない、未来永劫エリカは俺のものって約束、いいでしょ』

なんて勝手な約束
でも神威らしいっていえば神威らしい

『いいよ、ぜんぶ神威にあげちゃう』

『ありがと』

お返しはいつもと違うやわらかな笑顔


お日様のしたで相合い傘

相合い傘のしたで


おめでとうのキスをした



6/1 Happy Birthday!



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