全部、愛してる
『銀さん、あたしって醜女ですか?』
ジャンプを読んでいたふわふわ天パが顔をあげた
『何?醜女って』
『不細工な女ってことですよ』
『エリカはブサイクじゃないネ!この頃流行りの女の子アル!お尻のちっちゃな女の子アル!』
『キューティー〇ニーかよ。まぁエリカちゃんはどっちかっつーとかわいい系だけどな』
『うれしいです、そう言ってもらえて』
言葉と相反して項垂れるあたし
『言ってる事と行動が真逆なんだけど?』
実は、思いを寄せていた人に告白されました
『やったじゃん、幸せなことじゃねーの』
『えへへ、ほんと幸せすぎて夢みたいなの…』 言葉のわりに低いテンション、影を背負っているようにも見える今のあたしの姿
『いやいやいや!どうしたってんだよ、全然幸せそうに見えないんですけど!』
あたしの想いを寄せてる彼は、いわゆるブス専なのでした
そんな彼に好きだって言われたら… あたしってブスだったの!?ブサイクだったの!?
両思いになれて嬉しいはずなのに妙に落ち込む乙女心
『ブス専て…まさか…』 『イボ痔忍者アルか!?』
『うん、そうなの』
あれ、言ってなかったっけ
大きなお屋敷の立派な戸が蹴り破られた
『てめえ!ブス専の癖にエリカちゃんが好きとかふざけたことぬかしてんじゃねぇぞコラァッ!エリカちゃんのどこがブサイクだコラァッ!三十文字以内で簡潔に言ってみろ!』
銀さんは全蔵さんの胸ぐらを掴み捲し立てるように激怒してる
『何!?なんなのお前はッ!どんだけ家を壊したら気が済むんだよォォォッ!』
いつも懐かしのアニメの猫とネズミみたいに仲良く喧嘩する二人
『いいから答えやがれッ!エリカちゃんをどうするつもりだ!崩れかけた廃屋のような顔に整形させる気かァァァッ!』
『するかボケェェェッ!』
あ、しないんだ…
『え、いま安心した?俺そんな事させるやつに見えんの?』 心外だと言わんばかりの顔 そうはいってもその顔の半分は髪で隠れているのだけど
『たしかに俺はブス専と呼ばれる趣向を持っているかもしれねぇ。でもな、恋ってのはみてくれだけに惚れるわけじゃねぇだろ?ブスじゃねぇけど好きなもんは好きなの!エリカのすべてが好きなんだよ!』
辺りはしーんと静まり返った
『…え?なんで静かになってんの?俺、今いいこといったと思うんだけど?なに?この空気』
『サムイ…』 死んだ魚のような目がますます気力をなくした目で銀さんは全蔵さんを見据えていた
『寒くねぇだろ!むしろアツいくらいだったけど!?』
『いや、なんかクサイし寒かったよ、お前』
『うるせェェェッ!てかお前なんなんだよ!すげー腹立つんですけど!』
『全蔵さん、今のは銀さんの足くらいクサイし寒かったよ』
『おいィィィッ!アイツの足がどんだけクサイか知らねぇけど!』 今日も冴えてる全蔵さんのツッコミ 新八くんといい勝負だよ
そんな全蔵さんに 精一杯背伸びして、そっと耳打ち
でもね
あたしはすっごく嬉しかったよ
『あ…、マジで?…そう、それは俺としても嬉しいっつーか…』 ほんのり頬を赤らめて全蔵さんが呟いた
あんな恥ずかしいこと声高らかに言ってくれたくせに、こんなことで照れたりする
かわいい人だね
『キモイ、なに照れてんの?エリカちゃん、離れなさい、痔が移るから』
『移るかッ!!俺を病原体みたいに言うんじゃねぇッ!』
『大丈夫、あたし全蔵さんの痔なら移っても平気』
『いや、だから…痔ってそんな移り気な疾患じゃないんだって』
『あたしも全蔵さんの痔も含めて全部大好きだからね』
『…あ、それ、マジ?それはほんと嬉しいっつーか…』
すべてを包み込むようなおおきな愛で
あなたを愛してあげる
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