無糖でも甘い



ゴールデンウィーク最終日

『こどもの日』

なんていうかわいい日に生まれた瞳孔開きまくりの怖い顔した土方さんの為に万事屋の台所でケーキを焼いてるあたし

『あんなニコチンマヨ野郎なんかの為にそんなしてやるこたぁねーって』
つまみ食いを虎視眈々と狙いながら銀さんが横からちゃちゃを入れてくる

『いいの!あたしがしてあげたいんだから』

『味見ならあたしに任せるネ』
神楽ちゃんも侮れない

『ありがと、でも間に合ってるからね』



誕生日の前に土方さんに聞いた

『今なんか欲しいものはあります?』

『あ?なんだよ急に。』

誕生日が近づいてきた頃にこの質問、バレバレかと思いきやこの人は自分の誕生日なんて興味ないひとだ

ただ訝しそうにあたしの顔を見つめていた
と言うか睨んでるように見えるんですけど

『深い意味はありませんけど…なんか無いんですか?』

『そういやマヨネーズ切れそうだったな』

『………』
聞いたあたしがバカだったのか

物より思い出
何かのCMでもそんなこと言ってたっけ

だから土方さんの為に焼いたケーキを『あーん』てしてあげることにしたの

『キモいって、そんな大串くん見たくねぇ』
つまみ食いを狙いながらいちゃもんつけてくる銀さん

『キモくない!絶対にカッコイイ!』
土方さんは生きてるだけでかっこいいのだ

『エリカ、味見なら任せるアル』
ここにも一人つまみ食いを虎視眈々と狙う子が

『大丈夫だよ、味見なら間に合ってるから』

なんやかんやしてる台所はいい匂いで包まれて
どうやらスポンジが焼けたみたい

あとはデコレーションして出来上がり、待っててね土方さん!


ピンポーン

昼下がりの万事屋にチャイムが鳴った

『ちょっと大串くん、俺んちに何の用?』
お客さんにあからさまに嫌そうな銀さん

『てめェになんざ用はねぇ!エリカはどうした!あいつに呼ばれたんだ』
銀さんに負けないくらい嫌そうな顔の本日の主役

『土方さァんッ!!ハッピーバースデー!』
出来たばかりのケーキを掲げ土方さんに駆け寄った

『え?…エリカ、何、コレ、お前作ったのか』

『そう!土方さんの為に腕を奮ったんですよ』

普通なら喜んでくれるだろうけど土方さんの表情は微妙だ

『俺、甘いの苦手なんだけど…』

その台詞も想定の範囲内

でも土方さんの言葉を聞いた瞬間に群がるハイエナが二匹

『ッシャーッ!じゃあもったいないから銀さんが食べてやろう』
『銀ちゃーん!あたしも手伝うネ!』

『あ!駄目っ!それは…』

二人が大きな一口でケーキを頬張った瞬間


おぼろろろろろェッ

…リバース

『何じゃこりゃあアアッ!甘くねぇェェッ!』
『酸っぱい!酢こんぶより酸っぱいアルゥゥゥッ!』

悶絶する二人
それも当然

『だって、マヨネーズだもん』

何だとォォォッ!?

『エリカ、お前…』
心なしか嬉しそうな顔になった土方さん

ここまであたしの予想通り

あとは…

『だから、土方さん』
一口大にカットしたケーキをフォークで彼の口元に運ぶ

『はい、あーん』
『あ?ちょ…おまッ…』
これも想定の範囲内
照れて顔が真っ赤になってる土方さん
これが見たくてケーキを焼いたといっても過言ではない

『早く食べて!マヨネーズ垂れるゥ〜』
そう言うと彼は慌ててパクリとケーキを口にした

『どうですか?甘いでしょ?』

『…おぉ、とびきり甘ェよ』


そんな馬鹿な、なんて顔してるグロッキーな銀さんと神楽ちゃん

そんなことあるんです


あたしたちの甘さは
糖分に限った事ではなく





『遅いぞ、土方ァ。今勤務中だってわかってんのかコノヤロー』
『てめェの口からそんな言葉が聞けるたァサイコーの誕生日プレゼントだな』

パトカーに戻るなり突っ掛かってくる生意気な部下の憎まれ口も今は聞き流してしまえるほど

今年はサイコーの誕生日を迎えることが出来た
ありがとよ、エリカ


『何でィ、ケーキじゃねぇですかい』

『エリカが焼いたんだと。スゲーだろ、って勝手に食うんじゃねェェェッ!』

『…ケーキも犬の餌に昇華できるなんて、エリカもすごいなぁと思いました。』

『作文んんッ!?』


5/5 Happy Birthday!

thanks!魔女のおはなし



back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -