恋人は策士



『これ、沖田くんに返しといて』

銀サンから手渡されたそれはまさかのエッチなDVD

しかもどう見てもフツーじゃない
(この場合フツーってどんなか謎だけど)

明らかにどぎついSMプレイをしているようなパッケージ


『ちょ…、せめてなにかに包んで渡してもらえません?』
目のやり場に困るから

『あ?なに、今更。そんなの沖田くんにいっつもされてるくせに』

『されてません!こんな…こんな…こと…』
盗み見るようにチラリとパッケージに目をやる

巷じゃドSと唱われる総悟くんだけどあたしはまったくそんな風に思わない

むしろ、さりげなく優しい…紳士?

『はぁ?沖田くんが紳士?ありえません!』
断固否定な銀サン

『でも、あたしこんなプレイされたことないし…』
…ってあたしは銀サンにナニを暴露してるんだよ

銀サンは興味津々でいやらしくニヤリと笑った

『おやおや〜、ドSの沖田くんがエリカちゃんとはノーマルなプレイ?それは大分我慢させてんじゃね?か〜わいそ〜』

この天パ野郎、絶対に面白がってる…

でも、
総悟くんが我慢していると言うのを真っ向から否定できないのも事実だった



例の物を届ける為あたしは真選組の屯所へ向かった

立派な構えの門の前に着いた時

『エリカ、どうしたんでィ』

丁度見回りから戻った総悟くんに声をかけられた

『…お疲れさま』
そして無言でかわいい袋に入れてある例の物を渡した

『何でィ、コレ』
言いながら袋の中身を確認した総悟くんは…あ、と呟いた

『銀さんが、返しといてって』

『そーかィ、わざわざわりーな』

ポーカーフェイスな総悟くんだけどなんとなくわかる

この顔は気まずそうな顔

『…いつもあたしに遠慮してたの?我慢、してたの?』
エッチなDVDでムラムラを解消するくらい溜まってる訳だから

『あたし、こんなのに負けたの?』
口にしたら急に悲しくなってきた

総悟くんはなにも言わずにあたしを見つめていた

何か言ってよ
じゃなきゃあたし…

『ヤダよ、付き合ってるのに彼氏がこんなの見てムラムラしてるなんて…』

止まらないよ
何言い出すかわかんないよ

『我慢なんてしないでよ!あたしは彼女なんだから…総悟くんの為なら…』

ああ、もうちくしょー
涙まで出てきた

『…俺の為なら、なに?』

総悟くんはまっすぐあたしを見据えて問いかけた

全部言わなきゃわからんか
コノヤロー

『総悟くんが望むならどんなプレイも受け入れてやるわよ!あたし彼女だもん』

AV女優に負けてたまるか!

人の往来は少ないとはいえ、道端で恥ずかしいことを声高らかに宣言してしまった

…あたしのバカ

チラリと総悟くんの顔を盗み見たら

見たことがない、黒い笑顔

ニヤリとつり上がった口から出た驚愕の言葉

『そうかィ、エリカは雌豚になりたいのかィ』

…………は?

『エリカが望むなら仕方ない、俺が叶えてやりまさァ』

どこから出したかわからないが、彼の手にはDVDのパッケージにあったような見たことない玩具が

『え、ちょっと…、なんなの…』

『俺の部屋でいいだろ、人払いはしてやるから』
グイグイ腕を引かれてあたしは連れていかれた

『ちょっと待ってよ、なんか、なんかおかしくない?』

なんでこの流れ?
ここはわかり合えた感じでやさしくハグ、位でよくない?

『俺の彼女なんだろ、俺のすべてを受け止めてくれるんだろ?』

そんな風に言われたら…
言い返せない弱いあたし

その覚悟はできてる

だけどお願い、どうか…


お手柔らかに…



…後日の万事屋

『旦那ァ、約束のイチゴ牛乳でさァ』

『お、サンキュー。ってことは大成功?』

無言でピースサインを向けた沖田くん


『旦那になにかあったら何でも言ってくだせェ、いつでも駆けつけまさァ』

表情や声の調子はさして変わらないけど、沖田くんがご機嫌だということは一目瞭然だった

幸せオーラ、出てやがらぁ


そしてあのDVDを置いて出ていった沖田くん

何を隠そう、コレは俺の私物
あのやり取りは沖田くんの指示
(イチゴ牛乳三パックで引き受けた)


エリカちゃん、御愁傷様
銀さんも一枚噛んでたとはいえ…同情するわ

ほんとごめんね〜
末永くお幸せに〜


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