Black or White



それはもう
暑いくらいの晴天の日

屯所の庭の日当たりのいい場所にある物干し竿に溜まりに溜まってた洗濯物を干していた

『今日みたいな日を洗濯日和っていうんだわ』
風のたなびく洗濯物を見ていたら気分も清々しくなってくる

『違うねィ、今日みたいな日を昼寝日和って言うんだぜ』
突然背後から聞こえた声に驚き振り返れば人を小バカにしたようなアイマスクを額に装着した沖田さんが縁側に横たわっていた

『あれ?沖田さん今日は非番じゃ無いですよね?』

小一時間前に見回りに出掛けていく彼を見送ったはずだ

『こんな天気のいい日に見回りなんてしてられねーや』

…雨の日だってサボってるくせに

『いや、お茶とかお菓子とか別にいいから』

…持ってこいってか

『干さなきゃならない洗濯物が山のようにあるので後にしてください』

我が物顔のドS王子に背を向けて仕事を続ける

バサッバサッっと
風を切る洗濯物の音だけが響く

次の洗濯物へと伸ばした手は空を切った

横を見たら沖田さんがかごを抱え、しわくちゃなままの洗濯物を乱雑に物干し竿にかけていた

『ちょっ…なにしてんですか!』
『何って手伝ってやってんだろーが』
『シワをのばしてから干さなきゃダメなんです!乾いてからじゃシワは取れないんですから!』
強引に洗濯物を奪い取るといつもポーカーフェイスな彼の表情が一瞬曇ったように見えた

それも束の間

沖田さんは踵を返しこの場を立ち去ってしまった

…怒らせちゃったかな
沖田さんなりの親切心でしてくれたことを無下にしてしまったのだから

そんなことを考えてる間に沖田さんは戻ってきた

両手に立派な水鉄砲をぶら下げて

『人の親切を無下にするやつは…』

なんか、嫌な予感…

『真選組1番隊隊長沖田総悟がこの手で粛正してやらァ』

水鉄砲を構える沖田さん
オモチャなのに決まってますよ


『きゃあああッ!冷たい冷たいッ!』
死に物狂いで庭を逃げ回るあたし

そんな嫌がるあたしを追い回す沖田さんは心底楽しそうで

やられッぱなしは悔しいから、パトカーを洗車していた原田さんからホースを奪い取り反撃開始!

『うわッ、何しやがんでィ!』
『それはこっちの台詞ですッ!』

晴れ渡る空の下、屯所の庭には雨が降る


二人ともびしょ濡れになりながら庭を走り回っていた
子供の頃に戻ったみたいに

『てめぇらッ!何してやがんだコラァッ!』
それは土方さんの怒鳴り声が響き渡るまで続いた


次の日
あたしはに熱を出し、朝からずっと布団の中

38度を越える高熱で意識は朦朧としていた

そこへスパァァンと勢いよくふすまを開け、奴はやって来た

『開ける前にノックするとか声をかけるとか…してくださいよ、沖田さん』
一応レディの部屋なんですよ

『エリカー、なに風邪なんかひいてんでィ』
沖田さんはあたしと相反して元気でピンピンしている
彼は不思議そうに寝込んでいるあたしを見下ろしていた

『あたしはどうして沖田さんが風邪ひいてないのか知りたいです』
庭でびしょ濡れになりながらの追いかけっこが土方さんに見つかって、そのまま長々とお説教

暑い日だったとはいえ濡れたままで長いこと居たせいで体温は下がり風邪をひいたと言うわけだ

沖田さんだって同じ状況だったのに何でピンピンしているんだろう

『何とかは風邪ひかないってホントなんですね』

『…風邪ひいても生意気な口はへらねーなァ』
ムッとした沖田さんがドSな笑顔で見下ろしてくる

『だって事実じゃなッ…ゴホゴホッ!』
言葉は最後まで言い切る前に咳に阻まれた

苦しくなるくらい咳き込んで目には涙も滲んできていた
気がつけば沖田さんの姿は無かった

『居なくなるなら襖閉めてってくださいよ…』

そのまま目を閉じたあたしはいつの間にか眠っていた

どれぐらい眠っていたんだろう

熱で火照った顔がひんやりとしたものを感じてふと目を開けた

寝返って真っ先に目に映る光景にひとこと

『…ありえない』

胡座をかいたままよだれを垂らして眠る沖田さんがいた

その横には氷水の張った桶と風邪薬、フルーツゼリーもある

もしかして
ずっと看ててくれたのかな

あたしの為のゼリーが何個か食べられてる辺りがなんとも沖田さんらしくて吹き出してしまった

いつも憎たらしい彼の
意外な一面

それが見れたから
風邪ひいて良かったかもしれない


ドSな悪魔が
天使にみえた日




沖田さんが風邪ひいたときはあたしが手厚く看病してあげよう

あ、でも馬鹿は風邪をひかないんだっけ

『誰が馬鹿でィ』

『あ、起きてたんですか…』


リクエストthanks!
for 陽菜さん



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