kiss me



息を弾ませ

走る、走る

君のもとまで


待ち合わせ時間は
遠の昔に過ぎ去っている

こんな時にケータイの充電は無くなるし

電車は事故で動かなくなるし

タクシー乗れば道は渋滞

最悪だ

絶対怒ってる

きっと酷いお仕置きが待ってる

それよか待ちくたびれて帰っちゃってるかも

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!

頭ん中で何回謝っただろう

久しぶりのデートだったのに
なんてついてないんだろ

神様、あたしなにかしましたか?

全力疾走でようやく着いた待ち合わせ場所の公園

乱れた息が整う間もなく

日当たりのいいベンチで
ふざけたアイマスクを装着して眠りこけてる愛しい人、発見

真っ先に駆け寄って第一声
『ごっ、ごめんッ!!』

ぜえぜえ言うくらい呼吸は乱れてそれ以上言葉は出てこなかった

ムクリと起き上がりアイマスクを外す総悟くん

『…遅ェ』

待ち合わせ時間からもう二時間以上経っていた
それなのにここでずっと待っててくれたんだね

それが嬉しくて涙が込み上げてくる

『なんで大遅刻して来た奴が泣き出すんでさァ』

…そうだよね
泣きたいくらいなのは二時間も待たされた総悟くんだよね

怪訝そうな顔をしながらも自分の袖で涙を拭ってくれる総悟くん

ちょっと乱暴で痛かったけど…

『ご、ごめん。あたし…絶対怒って帰っちゃったと思ってたから…ちょっと、安心して…』

『怒ってるぜィ、あ、今にも血管切れそうだわ』
淡々とした口調ではあるものの怒っているのは確か

あたしだって二時間も待たされたらそう簡単に許せるわけ無いし…

でもどうしたら許してもらえる?

『…ごめんなさい』
今はただ謝ることしかできない自分が憎い

『許してほしいかィ?』

あたしが深く頷けばニヤリとドSっぽい笑みを浮かべる総悟くん

嫌な予感

でもそんな表情もドキドキするくらいかっこいい

どうしよう

『エリカ、覚悟は出来てるかィ』

『…う、うん』
頷いたものの、どんな仕打ちが待っているのか想像するだけで冷や汗がでる

あ、コレは走ってきた時の汗だ


『ちゅーしなせェ、エリカから』

『えッ!?』
耳を疑う彼の発言

『い、今ここで?』

『そうでさァ』

『やだよ〜、人居るし、恥ずかしいもん』
昼下がりの公園は人で溢れてる
あたし達みたいに待ち合わせするカップルもいれば犬の散歩をする人、仕事の休憩中らしい人やら様々だ

『へぇ、できやせんか。あぁそうですかィ、じゃ俺ァ帰るぜィ』

『ああッ!待って!!』
ベンチから立ち上がりこの場から去ろうとする総悟くんの袖を引き力の限り引き留めた

『ちゅーできねぇなら帰るぜィ、さぁどうすんでィ』
挑発するような意地悪な視線
こうなるともう、あたしに選択の余地はない

『できるッ!するから目瞑って!恥ずかしいから!!』

『…しかたねぇな』
ゆっくり目を閉じた総悟くん

そんな彼に精一杯背伸びして、あたしからキスをした


『…って口じゃねーのかよ』

『だだだだって恥ずかしかったもん!』

ほっぺにちゅーでもあたしにとっては一大事

顔も上げれないくらい恥ずかしい…りんごみたいに真っ赤だよ、多分

『しゃーねぃ、許してやりまさァ』

『ほんと?』

『羞恥プレイに耐えたエリカの心意気に免じて』

…これ、そうゆうプレイだったんですか

『腹減ってんでィ、飯いこうぜ』

何もなかったかのような素っ気ない態度

それでもそっとあたしの手を取る手はあったかくて優しくて

黙って歩き出す背中にあたしは小さく呟く


ごめんね

そして

だいすきよ


To 陽菜サン
リクエストThanks!



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