キミ限定だから



いつものように
駄菓子屋のベンチで見回りをサボっていたら

前が見えてないんじゃないかという位大きな荷物を抱えた女が視界の隅に入り込んできた

ヨロヨロと歩く様は見ていて危なっかしい

『お嬢さん、足下に犬のウ〇コ在りますぜ』

『えェェェッ!』
大慌てでじたばた足踏みする彼女

俺のくだらない嘘にも面白いくらいリアクションしてくれる可愛い奴

『そんなでかい荷物、どうしたんでィ』
歩くのもままならないほどの大きな包み
元々小さいアンタがますます小さく見えらァ

『福引きで酢こんぶ一年分あてちゃって…』

『そんなもんほとんどハズレじゃねぇかよ、どこぞの誰かさんしか喜ばねぇよ』

『アハハ、だから神楽ちゃんにあげようと思って』

行き先は万事屋だという

一日あたりの消費量がどれだけなのか皆目検討もつかない酢こんぶ一年分
そいつを彼女の腕から奪い取る

『え?ちょっと?』

『そんなフラフラ歩いてちゃ人様に迷惑かかるだろー、万事屋まで運んでやらァ』
答えを待たずに歩き出せば、追いかけてくる小さな足音と『ありがとう』
肩が並んだとき満面の笑みで

『総悟くんてドSとか言われてるけど…実はそんなことないよね』

覗き込むように見上げてくる仕草に柄にもなくドキッとしたりして

『こんなに優しいのに、なんでみんなそんなこと言うんだろーね?総悟くんのことわかってないよね』


わかってねーのはテメェでィ


らしくない俺の行動
キミ限定だから


いい加減
気付けコノヤロー


企画サイト『embrace』 提出。


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