fall in love



『そう、お妙サンは天女なの』
腫れ上がった顔で近藤は目を輝かせて呟いた。

愛を叫び続け、その度にブッ飛ばされる近藤さんを今日も引き取りに行かされた。

土方はその足で馴染みの定食屋に向かう。

その間近藤は愛とは如何なる物か説き続けていた。
それがいつのまにかお妙サンがどんだけ好きかに変わっているのだが。

あんな暴力女が天女に見えるなんて恋が盲目とはよく言ったもんだ。

『愛だ恋だの抜かす前に仕事だ、近藤さん。あんたにゃ仕上げてもらわなきゃならねぇ書類が山ほどある』

くわえてたタバコを携帯灰皿に押し込んで定食屋の戸を開けた。

昼時も過ぎ閑散とした店内

空いてるお座敷の席に腰をかけた。

いつものようにカツ丼を注文する。
懐から出したマヨネーズをカツの上に搾り出す。

全て出しきればカツ丼、土方スペシャルの出来上がりだ。


ブチュッ…と、全て出しきったような空気の音が聞こえた。

おかしい、まだ俺のマヨネーズは半分は残っているのに。

ふと、顔をあげ辺りを見回すとカウンターに座る一人の女が目についた。

華やかな柄の着物に身を包んだ小さな背中

手には空のマヨネーズの容器

テーブルには…カツ丼、土方スペシャルだと!?

思わず立ち上がりテーブルに太ももを思いっきりぶつけて大きな音が店内に響き渡った。

『ちょっとトシィイッ!水こぼれちゃったじゃないのォオ!』
オマケに近藤の大きな声

皆の視線が土方たちに集まった。

カウンターに座っていた女も振り返った

そしてバッチリ視線がぶつかる左手に土方スペシャル
それを頬張った口許にはマヨネーズを付けている

長いまつげの下にある大きな瞳をしばたたかせて…
こちらを見つめている

…天女だ


『…アンタ、マヨネーズ好きなのか』
気づけば話しかけていた。

右手にマヨネーズを持ったまま。


『…はい』
頬を赤らめながら女は頷いた

『…名前は?』

『…エリカです』

エリカか、いい名前だ。

『エリカさん、一緒にマヨネーズについて語りませんか』

『…はい、喜んで』


マヨネーズ好きなやつに悪いやつはいない


土方十四郎、運命の人に出会いました。



『チョットォッ!近藤さんおいてけぼり!?』





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