君の魔法で



trick or treart!

『お菓子は良いから死んでくれ土方ァ』

寝覚めの悪い目覚ましで起こされた10月31日の朝

非番だというのに朝っぱらから総悟とやり合って、最高に気分の悪い朝だ

『あ、そうだ。昨日頼まれてた備品の領収書持ってきたんだった』

俺に斬りかかるよりそっちのが重要だろうが…

仕事は二の次と言わんばかりの総悟にイラッとしたが非番の日くらい怒鳴らずに過ごしたくて、そこは抑えた。


総悟が立ち去り静かになった部屋で何枚もあった領収書に目を通していた。

たのんでいたのは稽古用の防具や竹刀の補充、バズーカの修理も

『…ん?…衣類代ってなんだよ、頼んでねぇぞ』

ドタドタドターッとけたたましい音をたてて、俺の部屋に勢いよくゴリラが飛び込んできた

『なっ…なんでゴリラがぁ!?』

『トシィーッ!!とりっくおあとりーとぉおおっ!』

ゴリラの着ぐるみをきた近藤さんだった

『あんた…なんつー格好を…』

『総悟がハロウィンだから仮装した方がいいってコレをくれたんだが…どうだ?似合ってるか?』

…似合ってるていうか、似合いすぎててゴリラその物だよ

まさか領収書の衣類ってコレじゃねェだろうな…

はしゃぐ近藤さんを然り気無く流して廊下に出てみればすれ違う隊士どもがみなふざけた仮装をしていた


『テメェは包帯巻いてるたけじゃねぇかッ!!』

『コレ一応ミイラ男ッ…ギゃアアア』

浮わついた隊士の代表として包帯ぐるぐる巻きの山崎をボッコボコにしてやった

『トシ、コレは野蛮なイメージしかない真撰組のイメージアップを図る総悟なりの作戦なんだ、多分』

『これで見廻り行く気!?アンタ動物園に連れてかれちまうよ!?』

何がハロウィンだ
どいつもこいつも浮かれやがって…

『あ、土方さん』
笛の音でも連想させるような澄んだ声で呼び止められた

声の主はこの男だらけのむさ苦しい屯所で女中を勤めているエリカ、最近、付き合い始めた彼女でもある

『ご飯でしたらお部屋までお持ちしますよ、今混んでますし…賑やかですから』

想像はついた
みんな変な格好ではしゃいでるんだろう、総悟を筆頭に


『あぁ、じゃあ頼めるか』

『はい、すぐお持ちしますね』

花のようなエリカの笑顔
それは起きてからの最悪な気分が木っ端微塵に砕け散るほどの破壊力

後ろ姿まで愛らしくて柄にもなく見とれていたら…

『土方さんには勿体ねぇ女でさァ』

背後からの気だるげな総悟の声に飛び上がるほど驚いてしまった

『後ろ姿に欲情でもしてたんですかィ、このドすけべが』

『するかボケェッ!』

本当にコイツは人の神経を逆撫でするのが上手だよ

『んなことより総悟、衣類代で切った領収書…アレ、何買ったんだ』

『何って決まってまさァ、今日はハロウィンだぜィ』

どこから出したかマヨネーズの着ぐるみを差し出した総悟

『これ、土方さんの分』

『こんなもん着るかァアアッ!!テメェは変なもん買ってきやがって…こんなもん経費で落とせるかっ!』

せっかくの非番の日も気苦労が絶えない

どいつもこいつもハロウィンごときで浮かれ騒ぎやがって
そもそもハロウィンて何だよ
なんの祭りだよ

『なァに、今日は土方さんもお楽しみになれまさァ』
腹黒い笑みを浮かべる総悟

…くだらねぇ

部屋に戻りタバコに火をつけた

たかが祭りや行事ではしゃぐのはガキだけで十分だ
いい大人が何をやっているんだか…

今日何度目かのため息を付いたとき障子の向こうからエリカの声がした

『土方さん、ごはんお持ちしましたよ』

『あぁ、入れ』

そっと襖をあけ入ってきたエリカ
その姿を見て絶句した

黒い大きなトンガリ帽子
胸元が大きく開いた黒とオレンジ色のワンピース
裾は短くギザギザなカットで網タイツを履いた細い足が殆どさらされている

丈の短さが気になるのかモジモジ裾をいじくる姿が正直…

そそるんですけどーッ!?

普段きっちりとした着物を来ていて見えない肌がこんなに露出されている訳で正直目のやり場に困る

言葉を失っていた俺をみて、エリカの目が不安げに揺らぐ

『やっぱり…、変ですよね、私には似合いませんよね、派手だし露出激しいし…』

今にも泣き出しそうな涙声でエリカは呟くように言った

目下で項垂れるエリカ

スイマセン、どうも胸元に目がいってしまうんですけどー

エリカって胸デカイ
…新発見
『いや、似合ってる…、っつーか目のやり場に困るっつーか…』

『ほんと?嬉しいな、実はちょっと気に入ってたりして…』
そう言ってエリカはクルリと回って見せた

あ、…パンチラ……。

『流石は総悟くん、土方さんの好みも把握してるなんてね』

『…オイ、お前、この服総悟から貰ったのか』

『そうですよ、コレを着れば土方さん喜ぶっていうから…』

アイツめ…

悔しいけど後で礼でも言っておくか…


正直、ハロウィンなんかクソくらえ!なんて思ってたが…

今年はなんだか楽しめそうだ

君とふたりで







『あ、ごはん忘れてた…。冷めちゃいますね』

『…いい、先にデザートから食べるから』
『デザート?今朝はそんなのありませんけど…?』

『あるぜ、目の前に美味しそうなのが…』
そうしてそっとエリカを抱き寄せた。



back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -