続・オオカミ男にご用心



ハロウィンの夜
万事屋は物々しい雰囲気だった

『鍵は掛けたか』
『イェッサー!』

『よぉし、これから誰が来ても中に入れるなよ!』
『イェッサー!』

夜になり狼男と化した総悟君からあたしを守るため、銀さんと神楽ちゃんは武装し、部屋の守りを固めた

『ちょっと大袈裟じゃない?』
二人をほっといて家事をしていたけれど籠城戦でも始めるつもりかという緊迫感に思わず口を挟んだ

『来るわけ無いよ、総悟くんだってそんな暇人じゃないでしょ?』
真撰組の一番隊隊長なんだから

『アイツを甘く見ちゃダメなんだよエリカちゃん!』

『そうネ!アイツはいつでも暇人アル!サボり魔アル!』

たしかに…
よくベンチで寝てたり、家に遊びに来たり、お買い物手伝ってくれたり…わりと暇そうにしては居るかもしれないけど

『大丈夫だって、冗談だったんでしょきっと』
ハロウィンのイタズラ…ってことだったのよ

『冗談でエリカちゃんのチューを奪われて堪るかぁッ!!』
『エリカの貞操は守り抜いて見せるアル!』

そしてあたしは部屋に押し込まれ、入り口は家具やなんかで作られたバリケードで固められ、私は軽く軟禁状態?

『よし、コレで玄関を突破されてもここで食い止められるだろう』

これじゃあたしも私も出れないじゃない…


ピンポーン

一瞬にして張り詰めた万事屋の空気

『来やがったな、サド野郎!』

マジですか?
気のせいかな、胸がドキドキしてない?

戸は開けぬまま
『誰だ、名を名乗れコノヤロー』

『あ、俺です、万事屋の旦那』
『なんだ、ジミーか』
『…山崎です』

やって来たのは総悟くんではなくて監察の山崎さん

…ほら、ね
総悟くんじゃなかった

…ガッカリなんてしてないよ

『ミントンが一体何の用ネ?』
『エリカサンいます?』
そのひと言で再び凍りつく万事屋の空気

『テメェ!サド野郎の回しもンか!』
『帰れ帰れ!エリカちゃんには指一本触れさせねぇ!』

『待ってください!俺、エリカサン連れてかないと隊長に殺されるンですって!』

そんな大事になってるの?
…総悟くん、あたしを待ってるの?

どうしよう、うれしいかもって思ってる自分がいる
でも…
山崎さんには悪いけど…こんな中、抜け出せないよね
ごめんなさい

閉じ込められた部屋の中、まるで囚われたお姫様(お姫様は図々しかったかな)

…ふぅ
自然と溢れた小さなため息


『待ちくたびれたかィ、お姫さん』

聞こえるはずの無い声に驚き勢いよく振り返った

目に映ったのは窓枠に腰かける総悟くん

『えッ!?なんで…、ここに…?…待って!に、二階だよ此所』
総悟くんはあたしの反応に満足したようにニヤリと笑みを浮かべた

ドキッ…

履いてた靴を床に放り投げる彼
意外と大きな物音ビクリと肩を揺らしたあたし

『こっちへ来なせェ』
あたしのベッドの上であぐらをかいて手招きしている総悟くん
まるで自分に糸でも付いていて手繰り寄せられるみたい
ベッドの縁まで近づけばグイッと強い力で引き寄せられて思わず溢れた小さな悲鳴

視界には天井と総悟くん

『銀ちゃーん、エリカの部屋からなんか物音がしたアル』
『…あぁ?物音って…まさか…!?』

部屋の外では二人が大慌てでバリケードを撤去中そんな喧騒も耳には届かず

『ご、ゴメンね。まさかまた来るとは思ってなかったから…お菓子、用意してないよ』
それはもうバレバレな照れ隠し

『お菓子ならここにあるじゃねーか』

君は胸焼けするほど甘いお菓子

総悟くん
それはこっちの台詞です…




『何してんじゃ我ぇッ!!』
二人が突入してきたにも関わらず私の上から退いてくれない総悟くん

『ガキが、見てわかんねェのか夜這いに決まってンだろーが』
『女の敵ネ!ブッ飛ばすアルゥッ!』


此所からはいつもの調子

それでもまだまだ治まらないあたしの胸の動悸

総悟くんのせいだからね
今夜眠れなかったらどうしてくれる?

『寝かせるつもりはハナからねェよ、覚悟しておきなせェ』
『させるかァ!エリカちゃんは銀さんの子守唄で寝かしてあげるから』
『銀ちゃん!鼻の下伸びてるアル!ふしだらネ!』
終わりそうもない三つ巴の喧嘩

ふぁあ〜…
なんか眠くなってきちゃった
定春と一緒に寝ちゃおうか…
ふかふか気持ちよくてあたしはすぐに夢のなか…


玄関では
『…みんな、俺の存在忘れすぎ』
山崎さんがずっと待ってたんだって


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