最悪で最高の誕生日



眠たくなるよな心地よい昼下がりに大きなあくび一つ

『…つまんねー』
万事屋のデスクでぼやく男

坂田銀時

ジャンプを読むのにも飽きたところ

仕事がない今日は神楽は定春と志村家に遊びに行ったし、新八はお通親衛隊の集まりだとか行ってたっけ

万事屋には俺一人

…今日は
俺の誕生日なんですけどー?
なんで誰も覚えてないのー!?

もう誕生日なんて楽しみな歳じゃねぇけど…
『おめでとう』の一言くらいあってもいいんじゃないの?

銀さんグレちゃうよ?
いいんですかー!?

いい歳した大人がふて腐れて読んでたジャンプはソファに放り投げ外に出た


『誕生日だってのに暇そうじゃないかい』
開店前のスナックお登勢に顔を出せばクソババァの嫌味に出迎えられた

『うるせークソババァ』

いつもならここでフォローに入る愛しい女のコが出てこない

居るのはふてぶてしい態度の猫耳年増女と掃除しているからくりメイドの二人だけ

『エリカなら今日は休みとってるよ、残念だったね』
ニヤリと笑みを浮かべ煙草の煙を吐き出したババァが妙に腹立たしい

…エリカちゃん
なにも今日休まなくても…
銀さんはエリカちゃんからおめでとうって言われるのわりと楽しみにしてたんですけど?
そのひとことだけで銀さんは満たされるってのに…

『珍しくエリカから休みたいって言ってきてねぇ、ま、いつも頑張ってくれてるから今日1日くらい構いやしないって話さ』

今日ピンポイントで休みたいって…どうゆうわけ

『ドウセダメナ男ニデモヒッカカッテルンデスヨ、アアユウ女ハ男ヲ見ル目ガ無インデスヨ』
『そうゆう話は聞いたこと無いけど…あの子なら男いてもおかしくはないねぇ』

マジか…
猫耳年増女の理論はどうでもいいけど…
かわいいエリカちゃんの事だ、彼氏の一人や二人、フツーに居るよねー…いい歳ごろのかわいい女のコだもんねー…

銀さん、柄にもなくショックだわ

『彼氏かどうかはわかりませんが…好きなひとがいると先日、エリカさまは仰っておりました』
止めのひとことにはもってこいだった
たまにとってはフォローのつもりだったのかもしれないが…

『残念だったね、誕生日に失恋なんて』
言葉の割りに顔は笑ってんじゃねェかよクソババァ

『ま、誕生日なんだ。今日はあたしの奢りで飲んできな』
グラスに並々と注がれた日本酒
『…ありがとよ』
受け取った酒を俺は一気に飲み干した


ただ酒だと調子にのって何杯も飲んでいたら『飲みすぎだコラァ!』と閉め出された。

気がつけば外はとっぷり陽が暮れて月がぽっかり浮かんでいる

いい月夜だった

空を眺めながら我が家を続く短い階段を昇りきれば…

…かぐや姫?

青白い月明かりを浴びて
膝を抱えて眠る女のコ

『…え?…エリカちゃんッ!?』

一体いつからいたのか、揺り起こそうと触れた方がひんやり冷たかった

『ん…。むにゃむにゃ』

ちょ…ッ
この寝顔は…ヤバイ
可愛すぎだって!

しかもむにゃむにゃだって?
どんだけぇえっ!?

襲っちゃってもいいですか?
(いや、フツーに駄目だけども)

でも一体何でエリカちゃんがここに?

ふと視線を落とした先にあったすこし大きめな箱
ピンクのリボンがかけられ綺麗に包装された正方形の箱

まさか、ね
そんなうまい話…

視線をエリカちゃんに戻せば、バチッと至近距離で目があった
エリカちゃんてまつげ長いし瞳も綺麗…って、え!?この子起きちゃったよ!この状況大丈夫か!?寝込み襲われてるって誤解しませんか!?
違うから!ちがうんだかね!?

『…あ、おかえりなさい銀さん』
ぱちくり瞳をしばたたかせて銀さんの目を見つめ返すエリカちゃん

…か、可愛いんですけど!
銀さん柄にもなく脈拍上がってるんですけど!

月明かりでもわかる、グロスをぬったぷるんとした唇がすぐそこにある
このままチューしていいかな?
誕生日ってことで無礼講…

頭の中は八割のスケベ心と残りの良心でバトルロワイアル

そんな俺を見つめたまま、エリカちゃんはニコッと笑みを浮かべてた


『銀さん、お誕生日おめでとう』


今度は俺が目をしばたたかせる番

『もしかして…、そん為に待っててくれてた…とか?』
『はい、お休みもらってケーキも焼いちゃいました』
にっこり笑ったすぐあとにエリカはひとつくしゃみをした

俺の為に…
こんなに体が冷えるまで待っててくれてたなんて

『ありがとう、銀さんすっげーうれしいわ』
どさくさ紛れに抱き寄せれば小さなエリカちゃんはすっぽり腕の中
肩に顔を埋めればひんやりして気持ちいいくらい、俺の顔は赤くなっていた

そっと背中に回された腕
『銀さん、あったかいですね』
胸が張り裂けそうなくらい嬉しくて抱きしめる腕に少しだけ力を込めた

なんやかんやで
史上最高の誕生日
だっかたもしんない




『銀ちゃん何してるアル!こんな人目につくかもしれない玄関先で襲いかかるなんて…淫よ!淫モラルよ!エリカ!大丈夫アルか?』

神楽さーん
空気読めよコノヤロー

『おかえりー、神楽ちゃん。ケーキ焼いてきたから皆で食べよう、定春も一緒にね』
浮かれる胃拡張娘と巨大犬

…それ、俺の誕生日のケーキだからね、そこ忘れないでね?


10/10 HappyBirthday!


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