ひとり占め



詳しいことはわからないけど、宇宙海賊春雨の中でも神威はいい身分らしいじゃない

自ら最前線に立たなくてもいい立場なのに

『戦場が俺の居場所なんだよ』

そう言ってフラりと出掛けていく

その戦場によっては長いこと戻ってこないこともある

神威がどれだけ強いかはわかっているけどやっぱり心配で…


残される身にもなってほしいわ

戦場の仲間から連絡があった
今日みんなが帰還するとのこと

それからは終始時計とにらめっこ
『早く進ンでよ、サボってんじゃないわよ』

なかなか進まない時計の針に喧嘩売ったりして


『ただいま、エリカ』
久しぶりに聞いた神威の柔らかい声

姿は多分相手の血とかでドロドロでむしろ怖かったけど…

無事に戻ってきてくれた

それだけでもう胸が一杯で
『おかえり』の声も震えてた

『…エリカ』

名前を呼ばれ
伸ばされた手がそのまま頬を撫でる

いつになく甘い雰囲気

阿伏兎さんもいるのに、ちょっと恥ずかしいんですけど…
でも嬉しかったりもして…

ここでなんか甘い台詞の一つや二つ、囁いて

『俺、お腹空いてるんだよね』

…甘い台詞

『ずっと戦いっぱなしだったから』

…甘い台詞は?

『帰ってきたらまずエリカの美味しい手料理食べたくて、それを楽しみに急いで戻ってきたんだよ』

『…………』
甘い雰囲気なんてどこを吹く風

それでも嬉しい言葉なのは確かで


食べきれない位作っちゃいました

『ん〜、おいしそう。さすがはエリカだね』
お風呂あがりの神威がテーブル一杯にならぶ料理を見て感嘆の声をあげた

『もうすぐお魚焼けるから、座って待ってて』

素直に椅子に腰かける神威

戦ってついた汚れを落としてタオルにくるまってる姿をみたらまだ幼さも垣間見るフツーの青年なんだよね


『いただきます』

それを合図に神威はご飯に箸を付けた

『やっぱりエリカの作るご飯は最高だね』

本当に美味しそうに食べてくれるから作る方としては凄く作り甲斐を感じられる

此れのために急いで帰ってきたというのも冗談じゃない、のかもね

嬉しくて、だけど照れ臭くもあって…

『いくらなんでも作りすぎちゃったよね、阿伏兎さんも呼ぼうか?』

何気なくいったひと言
神威は箸を止めた

『…なんで?』

顔を上げた神威はいつもと変わらない笑顔だけど気迫が違った
『…た、食べきれないかなぁ…って思って…』

戦いの時と同じ笑顔、だよねコレ

『エリカ、俺と二人きりの時に他の男の名前を口にするなんて…どうゆうこと?』

ニッコリ
微笑みかけられた

ちょ…、殺意をもってるって事はないよね!?

『……ご、ごめんなさい』

『わかればいいんだよ』
幾分か穏やかになった笑顔で、再びごはんを食べ始めた。


ごはんもエリカも

ぜんぶ、俺のだから。

誰にも分けてあげないよ



独占欲まで誰よりも強いひと

わたしは貴方のひと言で満たされる





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