後ろ、空いてますよ



『しっかしお前ェのスクーターはよく壊れんなぁ』

大破した俺のスクーターを前にして源外のジーさんがぼやいた

『何度も俺と共に死地を切り抜けて来たからな』

偶然ヅラに出会って呼び止められたところに偶然沖田くん
バズーカの餌食だ

『まぁ、いつものようにちゃちゃーっと直してくれや』

『銀時、金はあるんだろうな』

『……………』

『そうか』
ジーさんは奥から一台のチャリを持ってきた

古びた赤いママチャリ

『何?コレ…』

『代車だ、金の無い奴の修理はあと回しだ。しばらくはそれ乗っとけ』

『はぁああっ!?』


銀さんチャリ乗るの…何年振りかなんだけど…
つーか代車がチャリってアリ!?

『貧乏人にわがまま言う資格はねェよ』
ニヤリと笑ったジーさんは俺のスクーターではなくカラクリの修理を始めた


…ちくしょう



…チリンチリン
よりによってママチャリかよ

仕方なくそれに乗って走り出した

あー、漕ぐのめんどくさ
そして遅い

不満を漏らしながらも

ゆったりと家に向かっていたら見慣れた後ろ姿を見つけた


華奢で小さな、思わず抱き締めたくなっちゃう背中発見

『エリカちゃーん』
キキーッと耳障りな音を立ててチャリを止めた

『銀さん!…ってなんでチャリなの?スクーター退化しちゃった?』

『そんなわけあるかよ、修理中の間の代車だよ』

『そっかぁ、なんか似合わないね〜銀さんがママチャリって』
楽しげに声を上げて笑うエリカ

その手にあるのは大江戸ストアの買い物袋
中身は今夜の晩御飯の材料ってとこだろうな

『今帰りってんなら送ってってやろうか?この真っ赤なポルシェで』

『ポルシェ〜?これが〜?カッコイイ〜』

銀さんのくだらない冗談に楽しげに付き合ってくれるのはエリカちゃん位だよ

ほんとカワイイ子だよアンタは


『でもホントいいの?銀さんどっか行くとこだったりするんじゃ…』

『いやいや、銀さんちょうど帰る所だから』

あわよくばお部屋に上げていただいて、お茶の一杯や二杯、重ねて美味しい甘いもの、気づけば二人も甘い雰囲気…なんて、淡い期待をしているとは言えやしねーけど


『ちょうど後ろも空いてるし?』

後ろ手にママチャリの荷台を指差してやればエリカの口元も緩む

『じゃあポルシェの荷台に乗せてもらおうかな』

二人分の重さがペダルにそのままのし掛かる

その重さすら愛しく思えるなんてどうかしてんのか、俺は

背中に感じる温もり
腰に巻き付くエリカの細い腕

好きな娘が自分から抱きついてくるこの状況…2ケツってほんとおいしいよな


『しっかり掴まってなさいよ〜、落っこちてもしりませんよ〜』

『はーい』
返事と共に力が籠るエリカの腕

『ほらもっと、ギューッて。その大きくて柔らかいおっぱいをもっと押し付けるみたいに』

『……………』

あー、銀さん失敗しました
柄にもなく浮かれてテンション上がったもんだからスケベ心が口を滑らせ飛び出しました

引いちゃった?
引いちゃったよね?

…あれ?
でも、柔らかいふたつのマシュマロは俺の背中に押し付けられたまま

『…銀さん』

『ハイィッ!!』

『…スケベ』

『グェエエッ』
力の限りに抱き締められて呻き声が漏れた

『ちょっ…エリカちゃん!銀さんを絞め殺す気?』

『良いから漕いで!』

『ハイィッ!』


フラフラ進む赤い自転車

背中には君の体温


少しでも長く感じていたいからゆっくり漕いでいたのは…

エリカちゃんには内緒だ




…キキーッ

『ハイ、到着〜ッ』

『ありがとう銀さん』

『…あの〜、エリカちゃん?銀さん一生懸命漕いできたから喉渇いちゃったなぁ〜なんて…』

カゴに入れてあった買い物袋を手渡しながら呟くように言ってみたりした

『……』

無言のエリカちゃん

あー、やっぱ引いちゃってる
さっきのおっぱい発言に相当引いちゃってる…

『…ってのは冗談で〜、…銀さん帰りま〜す』

『いいよ、麦茶くらいならあるから上がって』


マジでか

…言ってみるもんだな

『じゃ、遠慮なく…』

『待って、その前に…』
引き留められて振り返った瞬間だった

バッチーン


『え!?なに?何で?』
激しく痛みを覚えたほっぺた

スッキリした

エリカちゃんはそう言ってにっこり笑みを浮かべた

あ…、やっぱ怒ってたのね


『さぁ、どうぞ。スケベなお侍さん』



銀さん心に決めました

エリカちゃんは紳士的に攻めていきます




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