「まぁ…一人でもいいんだけど」


時間、かかるよなぁ。
ピラリと大量の書類を見る。今図書室で一人で作業中なわけだ。あの後の機嫌悪い部長に話しかけるのが嫌だった。機嫌悪いと無駄にSだから嫌だ。



「あ、名字じゃん。何してんのお前」


「…雑用ですよ。アンケートの集計」


「うっわーなんでそんなん引き受けんだよぃ?絶対終わんねーって」


「明日の放課後までなんで頑張れば終わりますよ」



私が黙々と作業を進めていると丸井先輩がやってきた。部活どうした、と思ったが時計を見たらもう7時になっていて驚いた。予想以上に時間がかかってしまった。明日までに終わるかな…。



「なぁ図書室なんであいてんの?」


「雑用やる代わりに場所提供してもらってるんです。」


「ふーん…じゃあ名字本の返却とか出来ねぇの?借りっぱで督促状来ちまってんだよぃ…」


「あー…後でやるんで置いといてください。」



本来図書委員がやるべきことなんだが仕方ないだろう。一年の時に図書委員だったのでやり方はわかっているから大丈夫だ。後で図書委員の子にでも丸井先輩が本を返しに来たと伝えればいい。



「…お前帰ってやればいいじゃん。なんで帰ってやんねーの?」


「…………、…ハウスダストが苦手なんで」


「なんだそりゃ」



丸井先輩は本を置いて帰ればいいのに私の向かい側に座ってきた。嫌なこと突っ込んでくんなこの人…。



「なー…名字。お前愛美によく突っかかるらしいじゃん。」


「はぁ」


「転入生の松苗と一緒になって愛美はめようとしてんだって?」


「はぁ」


「……真面目に聞けよぃ」



少し低くなった声。ムスッとした表情なんだろうな。聞いてなかったから内容知らないけどまぁ適当に返事しよ。

アンケート集計に集中しながら人の話を聞ける程器用じゃないし。




「……愛美ってさ、」


「はぁ」


「なんでそんな嘘つくんだろーな」


「……」



この時初めて丸井先輩と目を合わせた。彼は予想に反して、辛そうに目を細めていた。