朝、登校してくる時に背中を丸めた切原君が自転車を押していた。なんで乗らないんだ。
……テニス部って朝練やってんじゃないか?



「切原君、」


「うっを!なんっ、ななななんだよ!」


「いや、特に用事はないけど…おはよう。あ、辞書まだ使う?借りパクはやめてね」


「しねーよそんなこと!」


「ならいいけど。……あぁ、疑ってごめんね」



そう言いながら歩いてたら切原君が立ち止まった。追い越してしまった。
なんとなく後ろを振り返ると切原君は泣きそうな顔をしていた。



「え、ちょ…ごめん、そんなにあの飴不味……」


「なななななんでもねーよ!」



私が喋る前に彼は言葉を遮ってチャリで駆け抜けた。
…なんなんだ、一体。思春期はよくわからないな。